職種その他2020.07.12

唯一無二の映画監督、ペドロ・アルモドバルの新作が公開中!

東京都
編集ライター
映画とラテンと音楽と
JUNTO

 コロナ禍により、世界中でテレビドラマや映画の撮影が中断や休止に追い込まれていることもあり、昔の名作の再放送や動画配信が増えています。
せっかくの機会ですので、私も古き良き作品の発掘にいそしんでいます。
巨匠と呼ばれる監督の過去の作品を見ると、唯一無二のオリジナリティや熱い思いを感じることが多く、改めて巨匠たちの才能に敬服させられます。

 私が尊敬する巨匠の一人に、スペインのペドロ・アルモドバル監督がいます。
彼の映画にはいつも、恐ろしく不器用な人や、問題を抱えた人々が登場します。
現実に遭遇したらやっかいな存在ともいえる登場人物にスポットをあて、愛情を込めて描くので、はじめは気味が悪く感じていても、いつのまにか彼らの一途さや純粋さに感情移入してしまいます。
アルモドバルは、異端の世界に観客を引き込むパワーとハートを持った稀有な監督といえます。
彼の作品のもう一つの魅力が、色鮮やかな映像美です。
色に関して、アルモドバル監督は独自の拘りを持っているようで、撮影本番直前に「壁の色が気に入らない」と塗り直しを命じたこともあるとか。

 そんなアルモドバル監督の新作『ペイン・アンド・グローリー』が6月19日から日本で公開されています(写真 ©El Deseo)。
頸椎の痛みを抱えてスランプに陥った映画監督が、かつて仲違いした俳優と再会したことをきっかけに、苦しみながらも自分の過去と向き合う物語。
監督の半自伝的映画と言われていて、アルモドバルによって見いだされ、スターになったアントニオ・バンデラスがアルモドバルを投影させた映画監督サルバドールを演じ、
アルモドバルのミューズ、ペネロペ・クルスが子供時代の母親役を演じるなど、監督の集大成ともいえる作品です。
主人公が暮らす家の絵画や家具、すべてにセンスがあり、まるで美術館のよう(この部屋の家具や絵画は、ほとんどアルモドバル監督の私物ということ)。
また、要所要所で使われる目が覚めるような「赤色」も強烈な印象を残します。 主人公が痛みに耐え、ドラッグ中毒で苦しむシーンもあり、内容はシリアスではあるのですが、アルモドバル映画独特のカラフルな色調のおかげで暗さは感じません。
過去のわだかまりを清算して、新しい一歩を踏み出す、希望を感じられる作品です。

ペネロペ・クルス ©El Deseo.

ほかにも、アルモドバル監督の作品には数多くの傑作がありますが、オススメしたいのは『トーク・トゥ・ハー』です。
バレリーナに恋をした介護士と、女性闘牛士を愛する男、二組の究極の愛と孤独の物語です。
献身的に憧れのバレリーナを介護する男の姿と、ときおり挿入される現代舞踊(ドイツの舞踊家ピナ・バウシュの『カフェ・ミュラー』)。
一見、別物のように見えるのですが、介護士の孤独な心情を芸術が後押しして、見事に調和しています。ストーリー、映像、音楽、どれをとっても見ごたえのある作品です。

プロフィール
編集ライター
JUNTO
普段は固めの記事広告ライター。ときどき映画やラテン絡みでもお仕事してます。 10年前に2年ほどブラジルに滞在して以来、ラテンカルチャーを日本で広めようと奮闘中。 写真は建築家オスカー・ニーマイヤーが設計したリオのニテロイ現代美術館。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP