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活動拠点を関西へ。版画制作を軸に、グラフィック制作とプログラミングに励む日々

関西
版画家・グラフィックデザイナー 鈴木悠子さん
1981年、高知県生まれ。版画家を志すべく筑波大学で版画を学び、制作活動を開始する。2004年、就職を機に東京へ。デザイナーとして実績を積み、2008年、フリーランスに。版画制作に取り組みながら、DTPデザインなどを手がける。2012年以降、CG制作会社に勤務し、3DCG・アニメーション制作に従事。2015年、関西に拠点を移し、版画制作をしながらプログラムの勉強を開始。
現在、関西に拠点を置いて活動する鈴木悠子(すずき ゆうこ)さんは、「BlockingWood」という名前で制作活動をする版画家であり、多様な経歴を持つグラフィックデザイナーでもある。制作のかたわら通信制の大学で情報系のシステムデザインについて学び、プログラムの勉強にも励んでいる。新しいことを知りたいと思ったら止まらないという学びへの情熱的な姿勢は、真面目で物静かな印象からは想像できない。アーティストとして、クリエイターとしての様々な顔に迫った。

版画制作は大学時代から。就職後は東京でデザイナーとして仕事をスタート

現在は関西に活動拠点を置かれているということですが、これまでについてお聞かせください。

私は元々高知県出身なのですが、美術系大学に進学するため茨城へ行きました。実は、研究者になるため京都の大学を目指すか版画家になるため美術系大学を目指すか迷ったこともあり、この時は最終的に美術系大学を選びました。 元々版画をやりたかったのですが、入学した美術系大学には、版画の専攻がなく、洋画コース(油絵)に所属し、3回生の時に版画を選択、版画制作に取り組みました。 東京は、在学中から頻繁に訪れるほど住みたいと思っていて、卒業後の就職をきっかけに東京へ行きました。

最初の仕事は、児童書や実用書のデザインや組版をすることになりましたが、それまでデザインの経験がなく、ソフトも全く使えないのではよくないと思ったので、事前に職業訓練校のようなところで勉強したりもしました。

そこで、デザインのお仕事をスタートされたんですね。

はい。最初はいわゆる紙媒体でしたが、その後、ウェブに転向し、ウェブ制作会社や広告制作会社に勤務しながらここでもいろいろ自ら勉強しました。ウェブのデザイン、コーディング、Flash等、常に新しいことに挑戦していました。この頃は、Flashが全盛の時代で、Flashの「ActionScript2.0」というプログラム言語を、仕事で覚えながら、そればかりやっていました。いわゆるフラッシャーですね。この経験が、現在のプログラム志向に結びついていると思います。 その後にデザイン系のフリーランスに転向しました。

デザインの領域は2Dから3Dへ。独学で勉強しながらステップアップ

フリーランスに転向されたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

版画を真剣にやりたいと思ったのがきっかけです。フリーランスとしてウェブと紙の両方の仕事を受けながら、版画制作に取り組みました。 さらに、モバイルもやってみたいと思い、フリーランスとして活動しながら、会社に所属しました。期間は約4ヶ月と短かったですが、週5日働いて、土日に自分の仕事をしていました。今から7年ほど前のことですので、スマートフォン案件は少なく、従来型携帯(ガラケー)用のデザインをしていました。 その後またフリーランスとして、4年間、DTPデザインやウェブデザイン、映像制作にも携わりました。

ウェブだけでなく、映像制作も手がけられたんですね。

そうですね。映像制作では編集をしていました。「After Effects」というソフトを使っていましたね。動画の編集やエフェクト作成ができるソフトです。当時は今のように、動画サイトで視聴しながら勉強するという環境はあまり一般的ではなく、ayatowebやDVDの教材を買って勉強していました。

紙からウェブ、そして映像という流れですね。

そうですね。その後はさらに3DCGを本格的にやりたいと思って、CG映像制作会社に入り、モデリング※1等を担当しました。「3ds Max※2」と「After Effects」を使ってアニメーションを動かしていました。これまでの3DCGは点と点をつなげて面を貼り形を作るのが一般的でしたが、「Mudbox※3」というスカルプトのソフトがあって、これは3D上で粘土をこねるようなイメージで形を作ることができます。これも勤務する前に独学で勉強しましたが、基本的には、まず自分でやってみて出来るかどうかを試します。

※1 3Dグラフィックス等で、立体物の形を計算して形成すること ※2 3Dモデリング、アニメーション等を合成する総合的なソフト ※3 3Dスカルプティング、ペインティングツールのソフト

活動拠点を関西へ。デザインにも活用可能なプログラムを猛烈に勉強する

その後、関西に活動拠点を移されたのですね。

2015年の7月頃に拠点を関西に移しました。京都でじっくり制作できる町家風のアトリエを借りたくて探していたところ、たまたま見つけたのが今入居している高槻の福寿舎(ふくじゅや)です。酢の醸造所だった古民家を改装してアトリエにしようというプロジェクトで2015年の夏に完成し、私のようにアトリエにしているクリエイターや、お店にしている人など、さまざまな人が入居しています。

アトリエは関西でお探しだったのですか?

アトリエを探すにあたっては、6畳くらいの部屋があればいいと思っていたのですが、高知県出身なので寒い所は無理で、それなら実家にも近い関西方面がベストかなと考えたのです。福寿舎がちょうど出来た時で、最初に入るのってオープニングメンバーみたいで嬉しいじゃないですか。高校時代からの親友が京都に住んでいたので、遊びに行ったりしていて、関西には馴染みもありましたし、そのタイミングに合わせて引っ越してきました。入居からしばらくは京都でデザインの仕事をしながら、ここで制作をしていました。

京都でのお仕事は、どのような内容でしたか?

主には金融機関の販促物やサイトの制作ですね。働きながら、制作活動にも取り組んでいましたが、昨年の11月末で退社して、フリーランスに戻りました。 実は、そのきっかけが、Processingです。Processingは、JAVAというプログラミング言語をベースにして生まれたプログラミング開発環境で、視覚的な表現(イメージの生成、アニメーション、インタラクション)に特化しています。物理や数学の分野以外でも、デザインやアートの分野でさまざまな実験や制作が行われています。プログラミングに不慣れな人でも簡単にプログラミングできる、と言われているのですが、私は初心者でしたから、とても難しく感じました。実際、突き詰めていくとかなり難易度は高いのです。自然現象への興味や、哲学的な思考をお持ちの方には面白く感じられるのではないかと思います。processingは用途がアートやデザインに寄っているので、制作の方にも活用できないかと考えています。

この開発環境でアート作品を作られたことはあるのですか?

ありますが、まだきちんと発表はしていません。目下勉強中です。今やっている事は研究者にすごく近いと思います。研究者になるか、版画家になるか、迷っていた時期もあったので、漠然とではありますが、その融合とも言えます。このタイミングというのは、やはり時代というのが大きいですよね。

すごい向学心ですね。

どうやって作られているのかという制作過程に好奇心が沸くんです。楽しいですよ。勉強せずにはいられないという感じです(笑)。ただ単にその時にやっていることから別の興味が出てきて、枝分かれしていくイメージです。その先に行かないと見えないんですよ。

版画は一生続けると決意。制作とプログラムの勉強に励む多忙な日々

現在はどのようなことをされているのでしょうか。

今は福寿舎の看板制作と、4月に東京で開催するグループ展、5月からミュンヘンで始まる展覧会に向けての版画制作に取り組んでいます。普段、福寿舎でやっているのは木版画制作がメインです。自分でデザインして作っています。あとはプログラムの勉強もしています。こちらに移るタイミングで始めて、そっちの方が面白くなってきたんですね。

版画とプログラムの勉強の比重はどれくらいですか?

日によって全く違います。今は看板制作が8割くらいを占めているのですが、それがなければ勉強が8割くらいでしょうか。その時の仕事によって比重は変わりますね。展示や自主制作以外の版画の依頼は2~3ヶ月に1回くらいで、制作期間は大体1ヶ月ほどですが、依頼があれば集中してやります。その方が絶対に効率がいいので。

版画については今後も続けられますか?

はい。それはもう決めています。あと、Processingはデザインの要素も入っていますし、デザインをプログラムで作りたいと思っています。通信大学もあと1年あるし、知人からの依頼で3DCG制作を手伝う仕事もありますので、一度離れた3DCG制作を再度勉強し直したいです。今はとにかく、版画と仕事と勉強と、できるところまでやろうと思っています。

今後、UターンやIターンを考えているクリエイターにアドバイスをお願いします。

拠点を移そうとすると、勇気が必要だと思う方がいらっしゃると思います。アドバイスというのは難しいですが、私の場合は、新しいことを知りたい、何かをやりたいと思ったら止まらなくてそう思っていると、自然とその場所へ導かれることも多くありました。思いがあれば、とくに勇気も要らないのかなと思ってます。

取材日: 2017年3月17日 ライター: 垣貫由衣

鈴木 悠子(すずき ゆうこ)

1981年、高知県生まれ。版画家を志すべく筑波大学で版画を学び、制作活動を開始する。2004年、就職を機に東京へ。出版社でDTPオペレーションや、ウェブ制作会社でウェブデザイン、コーディングなど、デザイナーとして実績を積み、2008年、デザイン系のフリーランスに。版画制作に取り組みながら、DTPデザインなどを手がける。2012年以降、CG制作会社に勤務し、3DCG・アニメーション制作に従事。2015年、関西に拠点を移し、版画制作をしながらプログラムの勉強を開始。現在「BlockingWood」という名前で制作活動中。海外の個人のお客様からの版画制作依頼が多く入ってきている。 BlockingWood http://www.blockingwood.com/

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