職種その他2019.11.14

ベルリン vs ウィーン

東京
編集ライター
海外暮らしと帰国してから
Joshy

今回は、同じドイツ語圏ながら似て非なる都市、ベルリンとウィーンついて書いてみたいと思います。

 

オーストリアの首都ウィーンは、ハプスブルク家という過去の遺産(観光)によって生きている街であり、伝統的な美しい景観は、世界中の人々を魅了してやみません。

分断の歴史を持つ、デモクラシーの原則を重んじる「オープンで自由」な街ベルリンに長く住んだ自分には、仕事でウィーンの社会に足を踏み入れると、びっくりすることが多かったです。

 

雑誌でウィーンの「スイーツ特集」を組んだことがありました。

ベルリンでアポ取りをする場合は、HPなどに記載されたアドレスから各ケーキ店に直接連絡を取ります。取材の承諾をもらい、スケジュールが合えば、有名なパティスリーでもアポを取ることは難しくありません。

 

ところがウィーンではまず、パティスリー協会の理事など、いわゆる街のスイーツ界の“ボス”たる人物に当たります。

現地の人に紹介してもらったり、その人物にたどり着くまでに過程を踏むこともありますが、ボスさえ賛同してくれれば、その場でお店に連絡をしてくれ、全てがOKになってしまいます。

 

言ってしまえば、コネの世界なのです。

ボスの名前を呼ぶ時も「パティスリー協会理事○○さん」と、役職名を入れて呼びます。

たまに「パティスリー協会理事兼オーストリア・ワイン協会創立者○○さん」のように延々と敬称が続くことがあって、バロック時代のカツラをイメージして思わず笑いだしそうになります。

 

こういった様式にこだわる姿勢は、ストレートなモノいいをするベルリンでは考えられない事なのですが、それがいわゆるウィーン式であり、スムーズに物事が運ぶコツでもあると思います。

 

取材の時はどうかというと、ベルリンだと担当者に挨拶と雑誌の紹介などをして、直ぐに撮影やインタビューに入れますが、ウィーンではまずカフェが出てきます。

そして、「今日は暖かいけど、昨日は雪が降ってね〜」といった風に天気や時勢の話題など、カフェを挟んで小1時間ほど“どうでもいい会話”が続きます。

こういった会話をウィーン子は、「プラウデルン(オーストリアだけで使われるドイツ語)」と呼んでいて、実はこれがないと始まらないのです。

全てにおいてこの調子なので、ウィーンの取材ではベルリンの倍ぐらい時間に余裕を持ってスケジューリングをしなければなりません。 (実はもっとうわ手がいて、南スペインだとシエスタを2時間ほど取るので、まさにのんび〜りした感じなんです)

 

ベルリンが「今」を生きている都市だとしたら、ウィーンは伝統を守り続ける街、とでも言えましょうか。みなさんは、どちらによりインスピレーションを受けますか?

プロフィール
編集ライター
Joshy
ヨーロッパに20年間滞在し、ライターとして働いた後に帰国。海外生活で経験したこと、日々の暮らしで感じたことを綴っていきます。

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