職種その他2020.11.14

ベルリンの壁を崩壊させたのはある男の勘違い?!

東京
編集ライター
海外生活と帰国してから
Joshy

 ベルリンの壁が開いたのは、ある男の勘違いが原因だというニュースや記事をご存知でしょうか?
 
 ベルリンの壁の崩壊は、東ヨーロッパ諸国の社会主義体制が終焉する流れにおけるひとつの現象なので、その男の発言が突破口になったというのが正確な表現なのではないかと自分は思います。

 ある男とは、当時の東ドイツ社会主義統一党のスポークスマンだったギュンター・シャボウスキーです。シャボウスキーは、1989年11月9日の記者会見で、それまで禁止されていた国外旅行について「すべての東ドイツ国民に出国ビザが交付される」と発言しました。

 それに対してある記者から「いつから出国が認められるのか」と質問があると、シャボウスキーは「私の認識では、ただちに」と事実を正式に把握しないままに返答しました。このニュースを見た東ドイツの民衆はこぞって検問所になだれ込み、ベルリンの壁は開かざるを得ない状況になりました。

 自分もシャボウスキーの報道を後日、何度もテレビで見ており、このことは間違ってはいません。問題はこの史実についてのメディアの取り上げ方です。

「ベルリンの壁を崩壊させたのはある男の勘違い」

というコピーはとてもキャッチで、見た人の興味をそそります。
当時、多くのマスコミがこの切り口でドキュメント番組を作成しました。

 日本の民放局も例外ではなく、シャボウスキーの誤報を強調する報道番組を作る際の通訳として、当時学生だった自分は駆り出されました。
 撮影の現場で、日本側のスタッフはシャボウスキーにエンディングの決め台詞として「ベルリンの壁が崩壊したのは私のせいです」というセリフを言わせ、謝礼を渡していました。報道番組が脚本に沿って制作されるというメディアの裏側をはじめて見た自分は、この報道の姿勢にとてもショックを受けました。

 フェークニュースという言葉を最近よく耳にしますが、テレビで報道されるドキュメント番組や報道番組を、ほとんどの人は事実としてそのまま受け取っているのではないでしょうか。それほどテレビというメディアは影響力があります。

 後に自分が本格的にマスコミで働くようになった時に、事実を自分の言葉で伝えられるライターという仕事を選んだのは、その時の衝撃があまりに大きかったからなのです。

プロフィール
編集ライター
Joshy
ヨーロッパに20年間滞在し、日本のメディアに情報を発信してきました。海外生活で経験したこと、帰国して感じたことを綴っています。

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