
NORIさんは、Flashの世界では名の知れたオーサリングエンジニアであり、写真家であり、制作会社/トゴル・カンパニーの代表取締役でもある。そして、第8回登場のイラストレーター/YOUCHANさんの旦那さんでもあります。トゴル・カンパニーはNORIさんとYOUCHANさん、つまりエンジニア兼写真家とイラストレーターのコラボレーションでWEBなどの様々なコンテンツを作る会社です。ビジュアルの創造者とテクノロジーの使い手が組んだら、デジタルコンテンツ分野では天下無敵かもしれない。そんな想像を膨らませながら、無敵の実情を聞き出してやろうと、少々意気込んでインタビューしたのでした。

伊藤紀之さん写真作品

トゴル・カンパニーはどんな会社ですか?
当初、わたしとYOUCHANによる制作ユニットとしてスタートしました。やってみると、ユニットへの仕事の依頼がけっこうあるので、2000年に有限会社トゴル・カンパニーを設立しました。トゴルの制作ポリシーは「Simply Enjoyable Creations」。「シンプルだけど、楽しいモノ」「ちょっと楽しいモノ」を作りたいという意味です。「Simply Enjoyable Creations」なら、WEBでも、絵本でも、映像でも、ぬいぐるみでも制作します。メディアや技術を自在に使いこなし、ただ、ひたすらに楽しいコンテンツを目指します。それを理解してくださるクライアントさんと、コラボレーションする感覚を大切にしています。
なんでもかんでも引き受ける会社ではないですね。
たとえば、キャンペーンサイトは引き受けるけど会社のWEBサイトはやらないと思います。内容的にも私たちの守備範囲ではないし、規模的にもそれは無理だと思う。うちはふたりの会社なので、人海戦術のとれる大きな会社のようにはできませんし、やるつもりもありません。人は増やさないし、人を使うことさえない。自分たちの守備範囲でできることをする。自分たちの守備範囲を広げながら続ける。そして、コンテンツのクオリティを高める。そこに集中していきたいです。
結果的にクライアントを選ぶことになる?
結果的に、いただく依頼の7割くらいはお断りする結果となってしまっています。愛情を持って仕事を成し遂げたいと思っているので、そうなるのは仕方ないと思います。
NORIさんは、どんなキャリアを持った方なんですか?
最初はSEとして就職しました。オラクルのインストールとか、正規化というテクニックを扱ってました。ダウンサイジングという言葉がはやった頃で、UNIX駆使して仕事してましたね。でも、もともと大のMacファンで、「Macの使える職場にいきたい」と公言してたほどです。で、チャンスがあって、制作会社のCD-ROM制作部門に転職しました。そこでは最初、Premiereを使って映像作品を作ってましたが、次第にDirectorやFutreSplashAnimaterなどを使うようになった。FutreSplashAnimaterって、聞いたことのある人もいると思いますが、Flashの前身のソフトです。これがマクロメディアに買収されて、FlashになってそのあとスグにVer.2が出ました。だからFlashはVer.2から使っているんですよ。
そこでオーサリングエンジニアとしての腕を磨いた?
CD-ROMが花形だった頃ですね。その頃に、肩書きとしてのオーサリングエンジニアという言葉も生まれたと記憶してます。わたしの理解としては、プログラマーでもエンジニアでもない、その中間。個人的に性に合っていたのは、たとえば内実としてPhotoshopなどもバリバリに使わなければならないこと。そういう風にもの作りに携わるのが面白くて、オーサリングに傾倒していったんです。
ディレクターやプログラマーではなく、オーサリングだった。
チームをまとめたりしている暇があったら、自分でやりたい。自分で全部やるのが好きだった。しかもプログラミングに興味があるわけではない。そんなわたしにはぴったりの仕事だったんですね。フリーになってからは技術書の執筆などもさせてもらってますが、わたしの書くのは大好きなFlashの技術書。Flashのテクニックに特化したテクニカルノートです。
今、FlashはWEB制作の花形ですよね。そして同時に使いこなすのが、極めて難しいとも言われている。
バージョンアップとともに、機能が多くなりすぎましたね。だから入門の段階で覚えることが膨大になり、ハードルが高くなっているのだと思います。わたしは、最初の頃の機能の少ないところから使って、一緒にバージョンアップしてきた。そこが幸運だったと思う。わたしは6年やってますが、これから始める人はわたしの1年を1日で覚えることになるんですから大変です。実は、Flashを楽しく使いこなすコツはあります。それは、自分に必要な機能だけに絞ること。Flashの機能を全部使っている人なんていないんです。「楽しい」と言えている人ほど、単機能だけを使いこなしているはずです。そういうえば先日、アクションスクリプトしか教えない本を書いたばかりです。
そんなNORIさんが写真家としても活動し始めたのは、もっと表現したくなったから?
オーサリングエンジニアは、縁の下の力持ち。仕上がった作品をみて、自分たちの技量に思いをはせる人は100人中1人か2人です。いつしか「自分の個性が読み取れる作品」を手がけたいと思うようになりました。それが写真を撮り始めたきっかけです。トゴル・カンパニーとしても、「写真もできます」となれば仕事の幅が広がりますしね。オーサリングエンジニアは仕事としてやり始めたので割り切りが必要で、達成感はあるけど、好きだとか、趣味だとかではないですよね。写真は、純粋に好きで始めたこと。わたしにとってはそこが大きい。

伊藤紀之さん写真作品
写真家としては、どんなふうに活動していくつもりなんですか?
最初は、身近にあるものをとにかく撮りたいと思って撮りまくってました。そして、次第に見てくれる人のことを意識するようになった。2005年11月に開いた個展を契機に、今後はもっとテーマを絞り込んでいくべきだと思うようになりました。写真は撮り続けたいけど、それだけで一本立ちして「写真家です」とやっていく意識は薄いです。浅井慎平さんなどの高名な方たちとは違う路線だと思う。写真集は出したいけど、部数1000部くらいのものをコツコツ出していきたい。爆発的なヒットで名前が売れるというのは、目指していないです。
NORIさんにとって、YOUCHANさんの存在は大きい?
そうですね。ユニットを組むきっかけも、彼女の作品を見て「このイラストを動かしてみたい」と思ったことですから(笑)。
トゴル・カンパニーとしての今後の方針は?
コンテンツ創造をメインに活動します。ビジュアル表現はイラストと写真が2本柱。それをあわせてデジタルコンテンツをはじめとした、様々なコンテンツ作りに取り組んでいきます。
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