
二階堂隆さん――プロダクトデザイナー/エルグデザイン代表
わかりやすいところから行きましょう。あの、G-SHOCKの初代モデルのデザインをした方です。1987年までカシオ計算機株式会社のデザイン部に勤務し、同年独立、エルグデザインを設立しました。
3年後に同僚でもあった奥様/二階堂美子さんも会社を辞め、エルグデザインに合流。以来、二人三脚でプロダクトデザイン(インダストリアルデザイン)のプロフェッショナルとして活動。以後、デジタル計測機器・携帯端末・日用品・医療機器・工作機械・腕時計・福祉機器・ステーショナリーグッズ・玩具・販売戦略・パッケージデザインなどなど、さまざまな分野に実績を残している。現在は、東京都立産業技術研究センターの工業デザイン支援エンジニアリングアドバイザーも務めています。
■エルグデザイン
http://www.ergdesign.jp/

国内では、3年ほど鳴かず飛ばずでしたね。腕時計としては破格に大きかったせいで、営業が「こんなもの、売れるはずない」と力を入れなかったのも大きかった。
社内的には文字通りの酷評で、「粗大ゴミ」なんて表現されたこともありました(笑)。
「落としても壊れない時計をつくろう」という考えに共鳴した3人のメンバーが集まって始まったプロジェクトが「Project Team Tough」です。
3人で話し合う中で、チームリーダーが「10mからの落下に耐える、10気圧防水、10年保証のトリプル10」というキーワードを発案しました。それにより進むべき目標がはっきりしました。
少なくとも僕は、大ヒットするようなものではないと思ってましたよ(笑)。ただ、こういう丈夫な時計は一定のニーズはある。静かに、長く売れる時計になるだろうという確信はありました。
最初に火が付いたのは、アメリカでした。誇大広告を検証、告発するニュース番組内で、現地の販売店がオンエアさせていたG-SHOCKのCMがとりあげられた。内容は、アイスホッケーで、パックの代わりにG-SHOCKをハードヒットしても壊れていないというものでした。
「そんなはずない」というアプローチでCMと同じ実験をしたら、本当に壊れなかった。その番組以降、全米でG-SHOCKが売れ始めました。
日本での人気は、アメリカでの評判が逆輸入される形で高まりました。
エンジニアとのキャッチボールは、欠かせませんね。
エルグデザイン オフィス風景
工業製品の商品企画は、たとえば、技術動向のリサーチから、数年後にこんな電子部品がデバイスとして実用化しそうだとの動きを先取りしてスタートします。
そんなケースでは、エンジニアがデバイスの扱い方を考え、デザイナーが設定されたターゲットをにらみながら造形の構想を練ります。つまり、設計とデザインが同時進行します。デザイナーのあげたデザインにエンジニアが「そんな形には、できないよ」と言ったり、技術的なハードルに対して「この部品をこちらに移動して小さくできないか」とデザイナーが要求したり。
そんなやりとりが、延々とつづきます。
その通りですね。ポジションニングだけでなく、技術知識も重要です。エンジニアに要求する際には、図面を前にしてまさに膝詰め談判ですから(笑)。かなりの知識と技術理解が求められます。
熟練のエンジニアと対等に渡り合えるくらいの知識があるのが、理想ですね。
そうです。特に日本には、そうなってしまっているメーカーがまだまだありますね。
プロダクトデザインと言ったとき、一般には感性や造形の妙味で商品価値を生み出すデザインというイメージがあります。
自分がデザイナーとして心がけている事は、感性だけでなく、クライアントの企業規模や技術レベルを最大限に生かす事。製造側(技術者)とエンドユーザー側(販売店)の双方の立場からコンセプトを明確にしてデザインし、魅力のある商品にする仕事だと思っています。




