
宇田川誉仁(うだがわ・やすひと)さん――造形作家
おお、これはトカゲかとわかるものものあれば、架空の生物だろうなと思うものもある。共通するのは、無数の部品がむき出しになったメカニカルなテイスト。宇田川さんの一連の作品は、昨日見た悪夢のようでもあり、天からつかわされた現代の天使のようでもある。つまりは、見たこともないファンタジックな造形を有しているということ。実は、ひょんなことから某コレクターの所蔵品を見せてもらう機会があり、度肝を抜かれたのがつい最近のことでした。その方から「この人の作品はかなり評価が高くて、NIKE JAPANのオフィスのエントランスにも採用されている」と聞き、そんな高名な作家を知らないとはまだまだ勉強が足りんなと思った次第でした。
そんなこともあり、「いつかは」と胸に秘めていたら、思いが通じ、お会いできることに。仕事場に直接乗り込み、いろいろ聞いてきました。
[キカイナサイセイ(Lizard)]W600mm x L1200mm x H140mm 1998
個展[ボクハキカイナミュータント]:相鉄ギャラリー・横浜 photo by Johnny Murakoshi
「立体をつくってます」と自己紹介することが多いです。造形作家と呼ばれるのも、オブジェクリエイターも、ピンとこないですね。だったら、「オブジェを制作してます」のほうがいい。肩書きに縛られるのはいやだから、ほとんど自称することはありません。仕事としては、立体はもちろん、平面イラストを描くこともあるわけで。
基本的に、事前に絵を起こしたりはしません。僕は、イラストレーターが立体オブジェを手がけたというケースではないですから。子供の頃から好きでやっていた創作が、そのままつづいているだけ。だから、素材も紙粘土のまま(笑)。
つくりたいもののイメージは、つくりたいと思った瞬間に頭の中に完成イメージができあがります。あとは、それに近づけてつくっていくだけです。
もとはサラリーマンで、仕事の合間に趣味としてつくっていたんですが、会社が倒産して、こちらが仕事になった。倒産の2年くらい前からグループ展に出品すると売れたり、特注作品の注文がきたりするようになっていたので、自然にそうなった感じです。
いや(笑)、昼間会社へ行って、夜作品をつくって――という感じで、寝る時間はなくなっていましたね。
雑誌の仕事でも「こういう作品をつくってくれ」という依頼は、まずないんです。「何かつくってください」と言われてから、じゃあどうしようかと。企業からの依頼の場合は、「今回は、このアイテムを入れるのだけは必須」みたいな提示はありますが、あとは自由。そういうやり方だから、やっぱり楽しいです。
ほとんど同じですね(笑)。ただ、フィギュアは複製のための原型をつくりますが、僕の場合は一点だけつくる。そこが違いますね。
[ダルマシアン]W140mm x D140mm x H85mm 2003
個展[RE-BIRTH]:Living Design Galerry OZONE・新宿
photo by Johnny Murakoshi
2001年から約7年、計11〜12個くらいつくっています。あの会社はとても「乗せ上手」。こちらが1言うと10返ってくるので、また20返そうと思える。やっていてとても楽しい。NIKEとの仕事を通して、世界が広がった感じもします。
NIKE JAPAN本社のエントランスピース
それ以前からNIKEの関係者との接触はあったのですが、ある日突然、NIKEの本社から真っ白なシューズが送られてきた(笑)。
NIKEによる「WHITE PRESTO PROJECT」への参加要請でした。白いシューズをキャンバスがわりに絵を描くというものでしたが、私は絵ではなく立体をつくりました。そして、それがきっかけとなり、次の「WHITE DUNK PROJECT」へとつづくわけです。
テーマは「真っ白なDUNK SHOESを手にとって感じたものを表現して欲しい。ルールはなし。制限もなし」。さすがに面白ことするなあと感心させられ、もちろん参加しました。その他、「ZOOM : E-CUE Project 」「R9 PROJECT」「Kobe project」「Lance Armstrong project」とプロジェクトの依頼があり、NIKE JAPANのエントランスにディスプレイすることにもなった。
NIKE社は、世界中のアーティストの動向をかなりリサーチしているみたいですね。日本の刊行物などが定期的に送られていて、そんな中で僕の作品も目にとまったとのことでした。
そこはちょっと難しくて――特に日本人の友人の場合、「NIKEから仕事が来ている」と言うと、とても驚いてくれるのだけど、「NIKEか、それは凄い」で終わってしまう。「どんなものをつくっているの?」という興味を示してくれる人が、少ないんです(笑)。外国の友人と話すと、必ず「で、どんなものをつくってるんだ?」と聞かれるので、それを話すのが楽しいんです。そこは、ちょっと不満です。
ただ、広告の仕事ではないですから。そんなに露出度が高くないので、一般の人の目に触れることもあまりないし、あれを見たということで仕事の依頼が来ることも少ないです。仕事につながるのはむしろ、雑誌の表紙ですね。








