撮っていて楽しいと感じるものは 必ずお客さんもつられて 楽しくなってくれる

Vol.64
映画監督 雨宮慶太(Keita Amemiya)氏
 
古いファンは、「映画監督である前に、キャラクターデザイナーである」なんてウンチクをたれるかもしれません。筆者は、『ゼイラム』でその存在を知り、『鉄甲機ミカヅキ』に喝采しました。低予算映画でも、最新の合成技術を駆使した作品でも、独特の感覚でかっこいい映像をつくってみせてくれる大好きな監督です。 そんな雨宮さんが最新作『牙狼<GARO> ~RED REQUIEM~』を完成させました。2005年に放映されて以来、静かに、根強いファンを獲得した「大人向け特撮ヒーロー番組」の劇場映画版です。

『牙狼<GARO>~RED REQUIEM~』完成、 ファン待望の劇場映画版です。

『牙狼<GARO> ~RED REQUIEM~』(以下、『牙狼』)が完成しましたね。人気TVシリーズを劇場映画化するには、いろいろ難しいことがありそうです。

TVシリーズが1話完結のスタイルだったので、劇場版映画もそのうちの1つをつくるという感覚で取り組めました。そういう意味では、難しいことはなかったですよ。

なるほど。

ただ、このシリーズには固定ファンがいて、キャラクターごとのファンもいてくれる。だから、ファン全員に満足してもらおうとすると、難易度は一気に高まります。そこで、思い切って、主人公をしっかり描くことに集中すると決め、冴島鋼牙と魔導輪ザルバ以外TVシリーズに登場したキャラクターは使わないこととしました。

3Dに関しては、いかがですか? 演出から何から、かなり高いハードルが出てくると思うのですが。

正直、「3Dだから」より「『牙狼』だから」に使う神経の方が、大きかったです。 ただやはり、3D起因する映像づくり上の制約はやはりありました。ただそれも、今回の場合はむしろいい方に働いたように思います。制約がなかったら、あれもこれもと詰め込み過ぎて収集がつかなくなったかもしれない。僕は、そういうタイプなもので(笑)。制約があることで、逆に撮りたいショットが鮮明に見えてきたように思います。

仕上がる映像のイメージがわからないので大変でしたが、 一方にはその分楽しみが大きかった側面もありました。

最後の決戦が、とてもよかった。素晴らしいイメージとアイデアが詰め込まれた、闘いでした。

採用したアイデアより、捨てたアイデアの方が多いシーンでした。これは作品を仕上げた後にいつも感じることなのですが、「もっとよくできた」という思いは募ります。そんな中でも今回のあの場面は、使っている技術に起因することとして、「仕上がる映像のイメージがわからない」ということがありました。それはもちろん大変なことではあるのですが、一方にはその分楽しみが大きかった側面もある。 総じると、「やっていて楽しかった」ということになると思います。

プロダクションノートによれば、あのシーンの合成は「生身の人間の映像が先にあり、そこにCGを合成する点がとても難しい」とのことでしたね。

実写とCGの合成は、画面に占める実写の割合が下がるに連れて難易度が上がります。もっとも易しいのは、実写の背景の中にCGを入れて行く合成。それにくらべてご指摘のシーンは、実写は全裸の役者(原紗央莉)だけで、画面中の残りの部分、背景やその他のパーツがすべてCGです。そうなると実写の素材(人間)が撮影レンズの長さによる立体感やライティングや空気感をひきずってきているため、全カットでそれに合わせたCGの調整が必要になります。 この手法を採用する作品が少ない理由が、あの経験を通してよくわかりました(笑)。

たとえば、フルCGならば、そういう苦労はなかったわけですね。

技術的には、そうですね。ただ、この作品は生身の俳優がけっこう危ないアクションに挑む点も特徴のひとつです。ラストシーンだけフルCGで処理するという手法は、まったく頭にありませんでした。

自分が面白いと感じるじから採用したエピソードや 登場させた武器で、思い切り楽しみながらつくりました。

先ほど、「やっていて楽しかった」というコメントがありましたが、雨宮さんは、以前お話しをうかがった時にもそれに触れていましたね。「つくっている側の『楽しい』という波動が、観る側に伝わると嬉しい」と。

それは、今も変わりませんね。撮っていて楽しくないということは、撮りたくないものをつくっていることに他ならないと思っています。撮っていて楽しいと感じるものは、必ず、お客さんもつられて楽しくなってくれる。僕は、そう信じています。

そのインタビューでは、「観る側の対象年齢はどう想定する?」という質問に、「自分を想定している」という素晴らしいコメントもいただきました。

それも、まったく変わっていません。幸いにして僕は、いつも大人としては精神年齢は低くあったので、それで調度よい感じですよ(笑)。企画書的にはこの作品、「大人向け特撮ヒーロー番組」となっていますが、実際のところ、それを意識したことはありません。自分が面白いと感じるから採用したエピソードや登場させた武器で、思い切り楽しみながらつくりました。

またしても、以前のインタビューコメントですが、「最終的な目標は、キャラクターが愛されること」とおっしゃっています。

もちろん、それも変わっていません。GAROも、約3年かけて温めて完成させたキャラクターで、とても強い思い入れがあります。「魔物を退治する奴が魔物のような顔をしている」というアイデアが、我ながら高いレベルで像を結んだと思っています。

では最後に、読者に向けてエールをお願いします。

ぜひ皆さん、行動してください。好きな人に会いに行く、観たい作品を観る、欲しい作品を所有する、どれもとても大切なことです。最近の若者は、その行動力が薄いように感じます。ちなみに今回の作品の脚本を担当した小林君(江良至)は、ある日突然『ゼイラム』の脚本が書きたいとメールをくれたのが縁で知り合った方です。自分で僕のメアドを調べたそうです。私自身もそういう経験を持っていますが、自分から会いに行き、作品に近づく行動力は、クリエイターにとってとても重要なことと思います。

取材日:2010年8月20日

Profile of 雨宮慶太

雨宮慶太氏

1959年生まれ、千葉県出身。阿佐ヶ谷美術専門学校を卒業後、1981年にデン・フィルム・エフェクトに入社。1983年、有限会社クラウドを設立。1988年の『未来忍者 慶雲機外伝』映画監督でデビュー。代表作は『ゼイラム』(1991)や『タオの月』(1997)など。また映画以外にもTV作品の監督を務めることも多く、『鳥人戦隊ジェットマン』(1991~1992/テレビ朝日)では、TV作品初演出にして、パイロット版監督に抜擢されている。近年はみずから原作まで手がけることも多く、これまでに『鉄甲機ミカヅキ』(2000~2001/CX)やアニメ『魔法少女隊アルス』(2004~2005/NHK教育)、『牙狼<GARO>』(2005~2006/テレビ東京など、分野を問わず多彩な活動を見せている。

【監督作品】 『未来忍者 慶雲機外伝』(1988) 『ゼイラム』(1991) 『仮面ライダーZO』(1993) 『仮面ライダーJ』(1994) 『ゼイラム2』(1994) 『人造人間ハカイダー』(1995) 『タオの月』(1997) 『怪談新耳袋劇場版「約束」』(2004) 『コワイ女「カタカタ」』(2006)

GARO

『牙狼<GARO> ~RED REQUIEM~』 10月30日(土) 新宿バルト9ほかにて全国3Dロードショー

 
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