まずカメラありきの監督だった自分が 俳優ありきのアプローチで撮りあげた

Vol.71
映画監督 青山真治(Shinji Aoyama)氏
 
青山真治監督の4年ぶりの劇場公開映画は、小路幸也の同名小説を原作とした『東京公園』です。『Helpless』で衝撃のデビューを果たして、もう15年になるんですね。その後精力的に作品をリリースしていったのが印象的なのですが、次はいつになるのだろうとぼやっとしているうちに、今回は4年が経っていました。 劇場公開映画ですから、4年くらいのサイクルであっても別段おかしくはないと思いますが、いずれにしろ待ちに待った、久々の青山映画です。どうやら新境地のようなこともあるようなので、とにかく会いにいき、お話をうかがってきた次第です。
東京公園


『東京公園』6月18日(土)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー

大切な人への思いがあふれ出す優しい物語『東京公園』、 いよいよ公開。

『東京公園』の封切りを間近に控えて、今のお気持ちは?

できるかぎり「わけがわかるように」つくった作品なので、観客の反応が良いといいな。そんなこと考えています(笑)。

試写を拝見しましたが、わけはわかりましたよ(笑)。それどころか、物語が進むうちに「ああ、あのシーンにはこんな意味もあったのか」と気づかされる仕掛けもいくつかあって、とても楽しめました。

そんな感想を持ってもらえるなら、嬉しいです。僕の場合、「わけがわからない」としばしば批判されるので、今回は本気で、恐る恐る「わけがわかる」ようにつくったんですよ。

ずいぶん、弱気だなあ。でも、演出者というのは、そういう心理をかかえて仕事しているものなんですね。

その点については、常に弱気です(笑)。「ここを面白がってもらえると嬉しいけど、気づいてもらえないと淋しいな」とかね。

少なくとも僕は、太鼓判押しますよ。面白かった。

それは、嬉しいことです。

ところで、今回は原作のある作品。こういうケースでは脚本づくりなどにおいて、気をつけている点はありますか?

できる限り、原作の持っている空気感をはずさないように。それは大切にしました。

なるほど。

過去にもいくつか原作ものを手がけていますが、原作が短篇小説などの場合は膨らませて行く作業なので比較的やりやすい。そういう意味では本質的に、長編小説を映画の中に押し込もうという考え自体がかなり無理のあることなんですね。必然的にストーリーのあちこちに映画にするための変更や削除を施す必要が出てくるので、空気感だけは変えてしまわないように気づかう必要がある。僕はそう思っています。

役者さんたちの演技を、ぜひ、観てください。

東京の秋口にいろんな公園でロケをした映像が、とてもきれいです。

たまたまスケジュールがそうなったのが幸いしましたね。今回のロケは何がいいって、葉が落ちるアクションが、自然に、勝手にフレームの中に入ってくる。風景が、「じっとしていない」。撮っていて、とても楽しかったです。

資料によると、撮影は「ほぼ順撮り」で進んだとか。

それも、たまたまです。僕自身は順撮りであろうがなかろうが、仕事に何の影響もないタイプです。でも、今回は順撮りに近かった分、役者さんたちはやりやすかったみたいですね。ならば、それはそれで良いことだったと思います。

編集で苦労したことなどは、ありますか?

苦労はしていませんが、過去最大級のシーンの入れ替えはしました。

シナリオで組み上げたシークエンスの順番を変えた?

はい。編集中、プロデューサーや編集者と相談しながら「こっちの方がいいな」とひらめいて、思い切ってやりました。そこがどこかは秘密ですけど(笑)。 ただ、直してみて、こっちの方がはるかにナチュラルになったと自信を持って言えます。

さて、では、公開に際して、観客に「ここはぜひ観てほしい」というポイントなどはありますか?

役者さんたちの、演技。ぜひ、観てください。皆さんとても微妙な、しかし見事な演技をくり広げていますので、お見逃しなきよう!

役者さんというものが、 カメラ以上に精密な機械なのだと理解するようになりました。

なるほど、プレス向け資料の中でも「演出することの奥深さにあらためて気づいた」、「俳優さんとの仕事が面白くなっていった」ことが「自分のなかのある種の転機になった」と語っていますね。

僕はこれまで「まずカメラありき」の監督だったと思います。カメラを通してものを考えている監督だった。まず俳優ありき、俳優と何かをする、というところからものを考えるアプローチもあるのだと気づいたのが、『サッド ヴァケイション』の撮影中でした。今回は、100%そのアプローチで撮りあげた、最初の作品ということになります。

かなり大きな転換のように聞こえます。

どれくらい大きな転換かは、自分でもわからないですね。ある日突然ではなく、仕事を重ねていくうちにそこに入り込んでいった感じなので。先ほどの形容で説明するなら、役者さんというものがカメラ以上に精密な機械なのだと理解するようになり、その精密な機械はどう扱ったら動かせるのだろうという興味が深まっていったのです。

大転換か否かは置いておいても、冒険ではあったようですね。

これまでにない、大冒険でしたね。本質的な部分に、大きな変化を求めましたから。 ただ、作品ごとに毎回冒険しているのも確かなんです。『東京公園』を観た友人から「お前、変わらねえな」と言われたのにも、そういう意味で妙に納得しましたよ(笑)。

これからも作品ごとに冒険を繰り返してくれるのが、ファンにとっての一番の楽しみだと思います。がんばってください。 では、当コーナー恒例の、読者へのエールをお願いします。

では、映画にたずさわる皆さんに向けて。 僕たちは作品を通して人に笑ってもらったり、泣いてもらったり、楽しんでもらったりするのが商売。そのことを絶対忘れずにやっていこうぜ! と言いたいですね。 大きな震災もあり、それがなくてももともと経済状況がはかばかしくなく、映画がつくりづらくなっていく要因はいくつもありますが、めげずに、本当に小さなことからコツコツとやっていきましょう。「いい映画が観たい」というお客さんは必ずいるんだから、お客さんのためにやれることをやりつづければ、必ず道がひらけると思うのです。

取材日:2011年4月7日

Profile of 青山真治

青山真治氏

1964年福岡県北九州市出身。1996年、地元・福岡県の門司を舞台にした『Helpless』で長編映画デビュー。2000年、『EUREKA ユリイカ』で、第53回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に招待され、国際批評家連盟賞とエキュメニック賞をW受賞するという快挙を成し遂げる。4年ぶりとなる長編最新作『東京公園』(出演:三浦春馬、原作:小路幸也『東京公園』(新潮社))は6/18(土)より全国公開。

劇場公開映画 1996年 『Helpless』 1996年 『チンピラ』 1997年 『Wild Life』 1997年 『冷たい血』 1999年 『シェイディー・グローブ』 1999年 『EM/エンバーミング』 2001年 『EUREKA ユリイカ』 2001年 『路地へ 中上健次の残したフィルム』 2002年 『私立探偵濱マイク・名前のない森』 2003年 『刑事まつり Noと言える刑事』 『月の砂漠』 2004年 『レイクサイド マーダーケース』 2005年 『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』 2006年 『こおろぎ』 2007年 『サッド ヴァケイション』

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