くるみ割り人形をリ・クリエイト 極彩色ミュージカル・エンタテインメント!

Vol.108
映画監督・アートディレクター・アーティスト 増田セバスチャン(Sebastian Masuda)氏
今をときめくきゃりーぱみゅぱみゅのPVやライブの美術演出を手がけるなど、原宿の「カワイイ」カルチャーを引っ張ってきた増田セバスチャンさんが、ついに映画監督に!35年前に制作された「くるみ割り人形」がリ・クリエイトされ、新たなファンタジー作品として生まれ変わりました。公開を直前に控えた増田セバスチャン監督に、映画への想いや制作の裏話などをお聞きしました!

寺山修司が関わった「くるみ割り人形」 オファーが来たのは、まさに「運命」!

(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN 

(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

映画監督という新たなチャレンジをすることになった経緯を教えてください。

実はオファーをいただいた当初は、引き受けるかどうか、かなり迷いました。僕は千葉県松戸市の出身なのですが、子どもの頃に「松戸サンリオ劇場」があって、よく映画を見に行ってました。見た映画のひとつに「くるみ割り人形」があって、全ての内容は覚えていないのですが、自分の心に妙に引っかかるものがあったことは覚えていたんですね。そんな名作の「くるみ割り人形」をリ・クリエイトする話が来たときは、自分がやっていいのか?と迷いましたね。ですが、この話が来たのは運命だ、とも思いました。

「運命」というのは?

旧作の脚本は、寺山修司氏が関わり、サンリオの社長である辻信太郎氏が子ども向けに脚色したものでした。寺山氏は、僕が今まで生きてきた中で、もっとも影響を受けた人物。寺山氏が関わった映画のリ・クリエイトならば、他の人ではなく、自分でやりたい!と思い、監督を引き受けることを決めました。

もともと映画は好きだったのでしょうか?

映画は大好きですし、漠然と映画監督に対する憧れはありました。CMやPVなどを作って来たので、映像の作り方もわかります。しかし、映画監督と言えば、助監督などを経験して、現場や業界のことをしっかり理解してからやるもの、というイメージがあったので、このような名作の監督をするなんて、早すぎるのではないかと不安やプレッシャーがあったのも事実です。

監督として揺るぎないゴールを見せるため ストーリー解析の資料を作成

映画の現場や業界のことがよくわからない中で、どのように多くのスタッフを監督として引っ張っていったのでしょう?

業界のルールに従うよりも、自分流のやり方で行こう!と割り切りました。具体的には、舞台に関わってきたので、舞台の作り方と同じようなやり方でした。幸いなことに、スタッフの方々が優秀で、僕のやり方に合わせてくれたんです。監督は揺るぎないゴールを見せて突き進んでいけば、プロフェッショナルの集まりであるスタッフが作り上げてくれるんですね。

「揺るぎないゴール」とは、どのようにスタッフに提示したのですか?

「くるみ割り人形」は、現実と夢を行き来するストーリーです。どんなシーンをたどり、どんな道筋をたどってラストに行き着くのか、ストーリー解析の資料を作りました。この資料を共有して話を進めたので、増田セバスチャンが何をやりたいのか、どんなメッセージを伝えたいのか、というゴールを明確に理解してもらえたと思います。

今回のリ・クリエイトにあたり、再撮影や新たなアニメーションを挿入したりしているそうですね。

旧作は、バレエのシーンが入っていたり、現代ではテンポが遅く感じるシーンがあったりしたので、スピード感やテンポの良さを出すために全体の30%はカットして、新たな映像を入れています。

世界的人気のポップカルチャーの礎を届けたい 「過去から未来への接続」がテーマ

増田さんと言えば、独特の世界観や色彩の映像が印象的ですが、この作品も色の使い方がとても鮮やかで心に残ります。

僕は子どもの頃に見て感じた色を再現しているだけなんです。大人になると見えなくなってしまうけど、子どもの頃はみんな、もっと世界が鮮やかだった。電車の窓の外を見ているだけで変化が楽しかったし、お祭りのネオンにはワクワクしましたよね?その色を再現することが、僕のこだわりなんです。

新作「くるみ割り人形」で、伝えたいことは?

テーマは「過去から未来への接続」です。今、日本のポップカルチャーは世界的に大人気ですけど、旧作の「くるみ割り人形」が制作された35年前にそのクリエーションの礎は作られているんです。その「礎」を、新作「くるみ割り人形」を通してみんなに感じてもらいたいし、届けたいと思っています。

映像を通して若い女の子たちを翻訳 30代以上の男性も若い女の子がわかる!

どんな世代の人に見てもらいたいですか?

「くるみ割り人形」といえば、ファミリー向けや子ども向け、という印象がありますが、今回の映画を製作するにあたって、そこは意識していません。僕は原宿で20年以上活動しているので、主人公のクララと同じく少女と大人の狭間にいる女の子の考えていることは手に取るようにわかります。初の監督作品ですし、女の子たちにグサッと刺さる映画ができればそれでいい、と考えていました。ですが、意外に30代から40代の男性の反応が良いんですよ。

男性は、この作品のどんなところに惹かれているのでしょう?

その年代の男性は「若い女の子のことなんてわからない」と思っています。ところが、この映画を見ると「若い女の子がどんなものが好きなのか、何を考えているのかわかった」と言ってくれます。映像を通して、翻訳できたようで、自分でも意外な反応でしたね。

ターゲットの女の子たちの反応は?

彼女たちは先入観や固定観念がないので、ストレートに「自分のためのストーリーだ」と感じてくれますよ。

ワンカットワンカットにたくさんの仕掛けを挿入 現実と夢を行き来する時間を体感してほしい

試写を観ましたが、すぐに「もう一度観たい!」と思いました。見終わった後に「この映画をもっと知りたい」と感じたんです。観た後にそんな余韻が残りました。

「もう一度見たい」という感想がとても多くて、うれしいです。僕は表現者として、観る人がどう受け止めるか“余白”をあえて作っています。ラストシーンもそうなのですが、解釈は受け手である観る人に委ねられる“余白”を残しています。そのために、ワンカットワンカットにたくさんの仕掛けを入れているんですよ。でも、あっという間に時間が過ぎてしまいましたよね?

その通りです。映画に没頭して世界観を感じていたら、あっという間にラストシーンでした!

それは、僕にとっては「してやったり」です(笑)。主人公のクララにとって、あの現実と夢をさまよう時間は一瞬だったはず。観ている人も、クララになった気分で、現実と夢を行き来するあっという間の時間を体感してほしいですね。

自分の色を出して作品を成立させる参考に オリジナリティを出すために引き出しを作ろう

初の映画監督作品が完成しましたが、今後は?

実際に映画を作ってわかったのですが、映画の発信力はすさまじく、メッセージを伝えるツールとしては、これほど大きなものはないと思っています。作っている段階では、持っているものの100%を出しましたが、終わってみるとまだまだやりたいことが出てきますね。映画を観ることは今まで楽しみだったのですが、今はカット割りとか気になってしまって(笑)。映画は表現の幅も広いですし、ぜひ機会があれば、第2作、3作と作っていきたいです。

CMやPVにとどまらず、ついに映画の世界に進出し、ますます独創的なクリエイティビティを発揮している増田さんは、若いクリエイターにとって憧れの存在です。若いクリエイターたちにメッセージをお願いします。

35年前の旧作のメッセージをリ・クリエイトする今回の仕事は、クライアントワークにも通じるものがあると思います。いかに自分の色を出しながら、作品として成立させていくか、参考にしてもらえればうれしいです。 そして最終的には、自分のオリジナルを確立することを目指してほしいです。そのためには、たくさんの引き出しが必要。いざという時に引き出しを開けられるように、いろいろなクリエイティブに触れたり、本を読んだり、一日一日を大切にしてほしいと思っています。

取材日:2014年10月11日 ライター:植松

『くるみ割り人形』 11月29日(土)全国ロードショー <3D/2D同時公開>

みにくい人形、けれど彼女にとっては命だった。 ある雪の夜。少女クララは、大切な“くるみ割り人形”をネズミの大群にさらわれてしまう。ネズミを追って彼女が迷い込んだのは、世にも鮮やかな【人形の国】。そこには【ふたつ頭の白ネズミの女王】に呪いをかけられ、眠ったままのお姫様がいた。邪悪な魔法を解くための【人形とネズミの戦い】に巻き込まれたクララは、“くるみ割り人形”に隠された悲しい秘密を知る。その時、まだ感じたことのない気持ちが彼女に芽生える。やがて“いのち”と引き換えにしても<守りたい>と思ったものとは―――?

(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN 

(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

公式サイト:
kurumiwari-movie.com
監督:
増田セバスチャン 3D監督:三田邦彦
キャスト:
有村 架純/松坂 桃李 藤井 隆/大野 拓朗 安蘭 けい 吉田 鋼太郎/板野 友美(友情出演)/ 由紀 さおり(特別出演) 広末 涼子/市村 正親
テーマ曲:
きゃりーぱみゅぱみゅ 「おやすみ -extended mix-」 作詞・作曲・編曲・中田ヤスタカ(CAPSULE)ワーナーミュージック・ジャパン
制作プロダクション:
キュー・テック
企画・制作・配給:
アスミック・エース/製作:サンリオ

Profile of 増田セバスチャン

映画監督/アートディレクター/アーティスト 6%DOKIDOKIプロデューサー

1970年生まれ。 演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年に”Sensational Kawaii”がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。 2009年より原宿文化を世界に発信するワールドツアー「Harajuku”Kawaii”Experience」を開催。 2011年きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」PV美術で世界的に注目され、2013年には原宿のビル「CUTE CUBE」の屋上モニュメント『Colorful Rebellion -OCTOPUS-』製作、六本木ヒルズ「天空のクリスマス2013」でのクリスマスツリー『Melty go round TREE』製作を手がける。 2014年に初の個展「Colorful Rebellion -Seventh Nightmare-」をニューヨークで開催。 公式HP:http://m-sebas.com/

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