私のもとで製作されるウルトラマンは それぞれが個性的であってほしい

Vol.18
株式会社円谷プロダクション代表取締役会長 円谷一夫(Kazuo Tsuburaya)氏

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2006年は、ウルトラマンシリーズ誕生40周年の年である。そんな年だから、ぜひ円谷プロダクションのトップにお話が伺いたい。恐る恐る申し出てみると、「喜んで」と快諾してくださったのが会長の円谷一夫さん。お会いできたことに感動した以上に、お会いした実物(失礼!)の実態に感動した。「なるほど、人に夢を与える人って、こうあるべきだよなあ」と深く深く感じ入りました。好きな怪獣は?と問えば、「タッコングとツインテール」と即答。要は、ご自身が超ド級のウルトラマンファンなのである。ファンの存在に心から感謝し、脚本のアイデア出しにまで自ら参加。たぶん、この方、仕事とは思ってない。作ることと、ファンを楽しませることが心から楽しんでいる。そう感じたインタビューでした。

 

ある意味、私は純粋なファンの一人でもあるので、 ウルトラマンシリーズに携わることに誇りを感じています。

『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』は、いよいよ9月16日公開ですね。どんな内容になっていますか?

オールドファンのみなさんからは、以前からウルトラ兄弟を出してほしいという強い要望をいただいていました。しかしもちろん、今のファンは劇場でメビウスを見たい。今回はそういう2つのカテゴリーの共演であり、競演です。歴代の主役に出ていただいて、幅広い年代に楽しんでもらえる内容になったと思います。

ハヤタやダンが出るんですね!それは楽しみだな。今までそういう映画がなかったのが不思議なくらいです。

アイデアは以前からあったのですが、役者さんのスケジュール調整が難しくて実現しませんでした。今回は40周年記念ということで、それを踏まえて早くから調整に入りました。

円谷さんは「脚本に口を出す社長だ」という記事を読んだことがあります。会長になった現在も、口を出しているんですか?

もちろんです(笑)。映画はもちろん、テレビシリーズにも全部かんでいます。テレビシリーズでは、ほぼ週に1度の頻度で脚本の打ち合わせがありますが、そこには必ず顔を出しています。プロットから意見を出すことだってあります。

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脚本にかかわろうという姿勢は、会長の職責から?それともウルトラマンへの愛から?

両方です。ある意味、私は純粋なファンの一人でもあるので、ウルトラマンシリーズに携わることには誇りを感じています。だから脚本作りへのかかわりは、ずっと続けていきたい。また私は、円谷プロのファンでもあるので、円谷プロが手がける案件に関しては、どんなことにもできるだけかかわっていたいという気持ちもあります。脚本作りのみならず、キャスティング、メカデザインにも興味があるので積極的にかかわっています。

今後、ウルトラマンはどうなっていくのでしょう?もちろん、いつまでも続いてほしいのですが……。

大丈夫ですよ(笑)。当面続けていきたいと思っています。ちなみに、誕生40周年のプロジェクトは、来年も続行です。いろいろ企画が出るはずです。長いスパンの計画としては、今、ウルトラマンを新しい作り方でできないのかと可能性を探っているところです。

新しい作り方とは?

例えば、伝統的に必ず出てくるチーム。ウルトラマンの科学特捜隊、メビウスで言えばクールガイズですね。あれは、あるべきなのか?一般の人たちが集まって怪獣に立ち向かうという構図はありえないのかとか、ウルトラマンをサポートするサブキャラクターはありえないのかとかいう可能性を検討しています。実を言うとそれは、スタッフの間では随分昔から、ことあるごとに討論されてきています。

ウルトラマンも、常に新しいあり様を探っているのですね。

私のもとで製作されるウルトラマンは、それぞれが個性的であってほしいと考えています。例えば平成以降、ティガ、ダイナ、ガイアは笈田プロデューサーが、コスモス、ネクサス、メビウスは渋谷プロデューサーが、それぞれの世界観で作り上げています。マックスは八木プロデューサー兼監督の世界観です。次は、新しいプロデューサーに、新しい世界観で作ってもらいたいと考えています。

プロデューサーや監督に、作品の世界観作りを任せる。ある意味勇気の必要ですね。

人が違えば感性も違う。私は、そこから生まれる驚きに期待しています。ティガをやったときに、M78星雲出身のウルトラマンという設定をやめ、赤と銀という定番カラーを変えた。コスモスでは、怪獣を倒さない、保護をするウルトラマンが人々を驚かせました。マックスでは、ひとつひとつ独立したお話で、スピード感を作りました。 やるたびに、ウルトラマンに新しい味付けをしていくことに意義を感じています。もちろん、円谷の伝統に期待されいている部分は残しつつですが、常に新しいことにチャレンジし続けたいと思っています。

今の時代が殺伐としてるのは、1980年代初頭から16年の間 ウルトラマンがいなかったせいではないかとさえ思います。

円谷プロダクションの今後の方針は?

もちろんウルトラマンがもっとも大切なコンテンツであることに変わりはありませんが、それ以外の作品も掘り下げていければいいなと思っています。

ミラーマンやブースカのリバイバルということですか?

例えば、そういうことですね。ウルトラマン以外の巨大ヒーローものにはミラーマンやファイアーマンがあります。その他にも恐竜ものやロボットもの、ブースカなどのコメディものもある。そういうカテゴリーの中から何かひとつ、もう一度作り直してみたい。ファンの声に耳を傾けると、恐竜探検隊ボーンフリーなどの恐竜ものへの要望が意外に多いこともわかってきました。

ファンからの要望は、どんな風にすくいあげているのですか?

円谷プロダクションのファンクラブがあります。メールも届きますし、ファンクラブの集いなどでは、私が直接ファンの方から要望をお聞きしたりする場合もあります。

ファンの持つウルトラマン像は、世代によって違うのでしょうね。

そうですね。そこが大変なんですよ。今回の映画も、旧怪獣やウルトラマン兄弟が出ていて、我々の世代には懐かしいんですが、今の世代からはメビウスをもっと見たいという意見が多い。出すなら一緒に闘ってほしいとか、具体的な要望も多い。出せばいいというものではないんです。どちらもが楽しめる内容にするために、かなり苦労しました。

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ファン層はどれくらいに分かれている?

4層くらいになっていますね。残念ながら16年間のブランクがありますから、そこはスポッと抜けている。

今にして思うと信じられないのですが、ウルトラマンを見られない時代が16年も続いたんですね。損失と言ってもいい出来事だと思います。

そうですね。円谷プロにとっても損失ですが、社会にとってもそうなのかもしれない。小さな頃に見るアニメや特撮ものは、人が感情を育てていく上で大切な何かを教えてくれると思います。今の時代が殺伐としてるのは、1980年代初頭から16年の間ウルトラマンがいなかったせいではないかとさえ思います。

復活させるには、いろいろな苦労がおありだったんでしょうね。

特撮ものがすたれ、アニメが隆盛を迎えて、テレビの枠がそれで占められてしまった。特撮ものはお金がかかりますし、子供番組の枠そのものが減っていきました。そんな中で、ウルトラマンに関するいろいろな企画を持ち込みましたが「なんで今ウルトラマンなの?」「時代遅れじゃない?」という冷淡な反応ばかりでした。1996年に『ウルトラマンティガ』の企画が通り、復活が決まったときはそれは嬉しかったですよ。ただ、私の力だけで復活させたなどとは思っていません。親父(第3代社長/円谷皐氏)が生前に地道に続けた復活への努力があってこその成果です。

今の時代に円谷英二が生きていたら、たぶんCGに興味を持って、 最先端の新しい表現にチャレンジしていたと思う(笑)。

円谷プロダクションは、特撮界の伝説ともいえる円谷英二さんが作った会社。今後も特撮を得意にしてくのですか?

今の時代に円谷英二が生きていたら、何をしていただろう?と考えることがあります。彼は無類の「新しいもの好き」でした。だから、たぶんCGに興味を持って、最先端の新しい表現にチャレンジしていたと思う(笑)。ただ、特撮は円谷英二が私たちに残してくれた大きな遺産であることは事実。守り続けたいと思います。 その気持ち、わかります。私もファンのひとりとして共有している感覚です。どれだけCGが隆盛を誇っても、ミニチュアでしかできない表現は絶対にあると思う。しかし、いかんせん、現実として撮影スケジュールというものがある。関係者はみな、時間的な余裕と制作費的な余裕があれば、腰を据えて特撮をやりたいと思っています。あとは、やり繰りの勝負ですね。

特撮とCGをうまく使い分けるということですね。

そうですね。以前、頭から尻尾まで5mある怪獣を着ぐるみで動かしたことがある。あの大きさになると人が入って動かすのは、ほぼ無理に近いことがよくわかりました(笑)。ああいうものは、CGでもいいと思う。

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ところで、円谷劇場という劇団活動も行っていますね?

ショーや催事を担当する事業部というセクションには、いずれは役者にという夢を持った人も多いんです。そんな彼らの夢を形にしたのが円谷劇団です。2年前に発足しました。10月5日から、銀座博品館で第2回公演『じゅわっと』が始まります。

ゴモラが上陸した大阪を舞台にした人情劇。円谷プロダクションならではの舞台ですね。面白そうだ。

ぜひ、劇場に足をお運びください。

今後の経営方針は?

規模的拡大は考えていません。今頭にあるのは、いかに安定した経営を続けるかということですね。

安定した経営とは?

例えばテレビ番組作りへの依存度を下げて、メディアビジネスに進出する。映画を作るにも制作費の集め方にもっと工夫ができるはずだと考えていて、いろいろな可能性を探っています。

安定経営を実現して、ずっとウルトラマンを続けてほしいです。

ありがとうございます。頑張りますよ。

最後に、ファンと若いクリエイターたちに向かってメッセージをお願いします。

円谷プロがあるのは、ひとえにファンのみなさんが応援してくれているからです。我々もその期待にこたえるべく頑張っています。ご要望がありましたら、どんな形でもけっこうですのでぜひお寄せください。 そして、若いクリエイターたちには、夢を持って仕事をしてほしいと思います。夢を持っていない人は、人に何も与えられないものです。ぜひ、夢を実現するまで頑張ってください。

Profile of 円谷一夫

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昭和36年生まれ。 玉川大学文学部英米文学科卒業。昭和58年、円谷プロダクション入社。平成7年、同社代表取締役社長に就任。平成16年、代表取締役会長に就任。

 
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