職種その他2020.03.18

自分が好きなこと、やりたいことに全力で向かうと、チャンスの扉は開かれます

仙台
Vol.37 校正・校閲、ライター
Harumi Saito
齊藤 はるみ

新聞や書籍、雑誌などの文章が、校正・校閲の専門家によってチェックされていることは、一般的に意識されることは少ないかもしれません。印刷物などの文章で明らかに間違っている誤字脱字を指摘するのが校正、文章を読み込み、内容の矛盾や表現の誤り、事実関係の確認(ファクトチェック)をするのが校閲の仕事です。今回は、その校正・校閲でフリーランスとして活躍し、さらにキャリアの幅を広げられた齊藤はるみさんにお話を伺いました。

好きな仕事や理想の働き方は、諦めなければ必ず実現できる

これまでのキャリアについてお話しください

地元で学生のころからアルバイトをしていた輸入雑貨店に就職し、ヨーロッパを中心とした生活雑貨(リネンやカトラリー、食器など)に囲まれ、楽しく働いていましたが、出版関係の仕事への憧れから、東京に出ることを決意。日本エディタースクール(編集関連の学校)に入り、半年間、編集・校正コースで学びました。その後、校正・校閲プロダクションに就職して実践で学び、1年後に独立し、フリーになりました。以後、数多くの取引先様からお仕事をいただくようになりました。

スクールでは何を学ばれましたか?

印刷や編集の基礎のほか、校正記号の入れ方や漢字の使い分け、原稿とゲラの突き合わせのしかたなど、校正の初歩的なことを学びました。

卒業されてから独立するまでのご経験についてお聞かせください

卒業後、入社した校正・校閲プロダクションでは、校閲者として素晴らしいスキルを持つ社長の下で、雑誌や書籍、実用書などあらゆるジャンルの校正・校閲の技術を学ばせていただきました。やはり、学校での勉強と実践とは全然違い、誌面に赤字を入れるという緊張感もたくさん味わいました。そして、少し早いとは思ったのですが、1年後に独立し、会社で担当していた仕事数本をフリーになっても引き継がせてもらいながら、新規の仕事を得るために名刺を作り、営業を始めました。大手出版社にはだいたい校閲部がありますが、外注として仕事を出すということは、出版社の校閲部員と同等の校正・校閲のクオリティが求められるわけで、校正テストを受けて合格ラインであれば、外注スタッフとして登録され、仕事を受けることができる仕組みのところが多かったです。

校正・校閲という道を選ばれたのは?

子供の頃から本が好きだったということと、好きな作家のエッセイを読んで、自分の能力を生かした自由な働き方、ライフスタイルに惹かれていました。また、学生の頃は『Olive(オリーブ)』(マガジンハウス)などの女性誌の世界観が好きで、出版業界自体に対しても憧れがありました。出版業界でも校正・校閲の仕事なら、技術や実力があれば時間に拘束されずに自分のペースで働けるのでは、と思ったのです。文章を書くのも読むのも好きでしたし、手に職をつける感覚があったので選びました。

動きながら考える。目の前の仕事を丁寧に

仕事の受注先をどのように広げられたのですか?

今思うと怖いもの知らずで…。携わりたい書籍や雑誌を発行している出版社に連絡して、先ほどもお話したように校正テストを受けさせていただいたり、面接をしていただいたりしながら、コツコツ広げていき、お仕事をさせていただきました。校正をした誌面を見れば正確な誤植の拾い方や的を射たギモン出しの仕方など、校正のクオリティがわかるので、結果、丁寧な仕事で次のお仕事につながったり、違う媒体のご依頼をいただいたり…。(あの頃はインターネットもほぼなく)現在と比べて圧倒的に情報量は少なかったので、自分で動くしかありませんでした。直接会って知ってもらおうという意識と、初めての経験なので集中する勢いというものがあったと思います。直接会うことで、「この仕事が好きだ」というエネルギーや情熱が伝わったのかもしれません。とてもご縁に恵まれて、タイミングよく次々とお仕事をご紹介いただけていました。

校正・校閲者として心掛けてこられたことは?

当たり前ですが、基本は誤植のない誌面にすること。そのうえで、幅広いジャンルの媒体を経験することが大切だと思っていました。一つ一つの文章に丁寧に向き合い、その文章の世界観を感じ取りながらも客観的に全体の流れを見て、必要な指摘やギモン出しをするようにしています。数多くこなしていると、自分の得意分野がわかってくるので、知識や経験においても即戦力になれるよう、クオリティを高め、取引先に喜んでいただくことなどでしょうか。また、日々勉強、情報の刷新ですね。

また、目の前の仕事に120%のエネルギーを注ぐということを意識しています。例えばお店の紹介記事で、本文以外の店名表記、住所、電話番号、地図などが正しいかというチェックを公式サイトで確認したり。本来はそこまで求められてないことに対して、取引先から感謝されるようなプラスα、付加価値をつけて納品することは自分の信頼を高めることにもつながり、次の仕事に結び付いていったのだと思います。「齊藤さんにお願いしたい」という言葉を頂くようになったときは、プロとしてもフリーとしても嬉しかったです。

大切にしてきた「正確さ」「心配り」「120%で応える」

仕事で一番大切にされてきたことは何ですか?

校正・校閲の仕事は、間違いを見つけ、正しい表記や内容の変更を示唆することですが、基本の校正(誤植をすべて拾う)が第一で、媒体ごとに校閲に対するクオリティや求められるカラーが違うことや、書き手の思いや一文字に込めたニュアンス、編集者の考えも汲(く)み取りつつ、読みやすいきれいな字を書き、何を聞かれても説明ができるような根拠のある、一貫した指摘とギモン出しをすることを大切にしてきました。

校正・校閲のやりがいについてお伺いできますか?

例えば、小説などの校正・校閲では1冊約300ページ分の誤字脱字、表記統一や差別用語、などを校正する作業と、内容や時系列などを精査する校閲作業を含め、確認のため2回は精読し著者の文章をできるだけいじらないように気を使うので、非常に集中力が必要な仕事です。雑誌や実用書だと、誌面上での内容に不一致がないか、写真とキャプションの確認など、情報量の多いテーマを全体的に整えるという、また違った集中力が必要になります。しかし、著者、編集者も気付かなかった点をフィードバックできたとき、クオリティの高い文面に持っていけたときには、感謝され納得していただけます。さらに、信頼されて媒体ごとの表記の統一を決めることを任されたときは、本全体の校閲監修ができているようで、とても嬉しかったです。最後に、出来上がった本を頂いたときは、やはり形として残る喜びと達成感がありますね。また、奥付のクレジットに校正者として名前が記載されたときには責任とやりがいを感じます。

これまでで一番思い入れが深かった仕事は?

最も得意な分野である女性向けの実用書と月刊誌の仕事でしょうか。集英社で発行していた別冊シリーズの実用書やファッション誌『MORE』です。料理シリーズ(たんとの本、基本大百科、センスアップシリーズ)やメイク、旅行、インテリア、器、ハーブなど多岐にわたる内容で、月刊誌とは違い、何冊か同時進行する期間も重なり、常に忙しかったですが、編集者とやりとりしながら、じっくりと長期スパンで本を作るという経験はとても楽しく勉強になり、充実していました。やはり、自分が読みたいと思う本を作れるのは幸せですよね。月刊誌は毎月の締め切りが決まっているのである程度スピードを求められますが、その中でクオリティを高めていき、よりよい誌面にすることに充実感がありました。さらに自分の携わった書籍が実際に書店に並び、人が手に取って見てくれるということを実感できたこともうれしく、達成感を感じましたし、実用書なので親や友人にも喜んでもらえました。

「次のステージへ行きなさい」というサインを得る

Uターンされたきっかけについてお聞きできますか?

毎日充実していたのですが、依頼があるとすべての仕事を受けてしまい、完全なオーバーワークになり、身体が悲鳴をあげました。体調不良(むち打ちのような症状)で原稿が見れなくなった時、手に職があっても、仕事ができなくなることもあるのだと不安になりましたが、仙台に戻って、体を治すためにゆっくりしようと思いました。健康を取り戻したらもう一度東京に戻る選択肢もありましたが、どこかで「やり切った」という実感があったことと、ゆったりとしたリズムで、人間らしく自然と調和した生活をしたいという思いが強くなりました。

現在の仕事についてお聞かせください。

仙台に戻ってから、地元の出版社へ今までの経歴と実際に携わった媒体とともに営業をし、なんとか雑誌や書籍の校正・校閲のご依頼をいただくことができました。それがきっかけで他の仕事を紹介していただけたり、行動することによって次につながったりしています。最近はインターネットによるリモートワークで、好きな時間、場所で仕事ができますので、Web媒体の校閲やライティング、以前の人脈から東京の仕事も行っています。FacebookなどのSNSも利用して発信したり情報を収集し、常にアンテナを立てておけば、仙台・東京という枠にとらわれることもなく、全国から校正・校閲やライティングの仕事を受けられると思っています。
また今後の展望として、次世代の人にこれまで培った校正・校閲の技術を伝えたいという思いもあります。

新たに加わった仕事についてお伺いできますか?

仙台に戻り自らの心身に向きあったことで、ヒーリング(エネルギーワーク)に関心を持ちました。ハーブやアロマセラピー関連の実用書に関わった際、内容が楽しかった経験もあり、知識だけではなく本格的に学び実践することにしました。自然と調和して波動を整え、ムリせず自分らしく生きていくことが、ますます大切になるのではないかと思っています。現在はヒーリングサロンを開業し、施術とカウンセリングを通して、ご縁のある方々が元気に、その人らしくイキイキ働くためのサポートをしています。

クリエイターとしてこれから挑戦する人へメッセージをお願いします。

これから何かに挑戦しようと思っている人は、やりたいことをがむしゃらにこなす時期を過ごし、実践を積み重ねてから、失敗を恐れず動いてみることをオススメします。そのためにも「やりたいこと」や「理想の自分」のゴールを常にイメージしておくことが大切だと思います。それが情報を引き寄せるアンテナにもなるからです。私も初めから集英社などで仕事ができたわけではなく、「あの雑誌の仕事がやりたいな」という「好き」な気持ちを忘れずに、目の前の仕事に全力で向かって、いろいろな経験を楽しんでいたらチャンスが巡ってきた、という感じなのです。一番大切なのは「できるかできないか」で自分に制限をかけてしまうことではなく、「やりたいかやりたくないか」で自分の心に正直に選択し続けて、目の前のことに120%のエネルギーを注ぐこと。そうすると、次のステージが見えてくる…その繰り返しだと思いますので、なんでも楽しんでチャレンジしてみてください!

取材日:2020年1月30日 ライター:桐生 由規

プロフィール
Vol.37 校正・校閲、ライター
齊藤 はるみ
仙台市出身。地元の専門学校で学び、いったん地元の輸入・オリジナル雑貨店に就職。しかし、「何をするにも第一線で活躍するには、東京に出てみないと」と出版業界への憧れから上京し、日本エディタースクールへ入学し直す。卒業後、校正・校閲プロダクションにて、書籍・ノンフィクション実用書・雑誌・企業会報誌など幅広い出版物の校正・校閲を経験後、フリーランスとして独立。以後、東京にて約8年間、フリーランスの校正・校閲者として、大手出版社数社の女性向け実用書やファッション誌、書籍を中心に活躍。仙台に戻ってからは、地元出版社の仕事に加え、セラピストとしてヒーリングサロンLa Jolie Vie(ラ・ジョリ・ヴィ)を主宰。2019年末、クローバー出版主催「新人著者発掘オーディション(スピリチュアル・自己啓発部門)」で、準グランプリを受賞。 フランスが好きで、毎年滞在する自由なライフスタイルを確立している。

▼ヒーリングサロンLa Jolie Vie (https://ameblo.jp/lajolievie/

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