WEB・モバイル2006.07.20

資本関係にしばられない 自由な立場と自由な発想を 特色にしていきたい

東京
株式会社トレンドライフ 代表取締役 高橋範夫氏
 
株式会社トレンドライフは経営誌『企業家倶楽部』の副編集長を務めた高橋範夫氏が、2005年9月に設立したベンチャー企業。翌2006年3月には、インターネット上のデジタル書籍販売を目的としたポータルサイトpocket.jpをカットオーバーし、本格的な活動を開始した。ネットで気に入った書籍を見つけ、購入すること。温めていた作品をネットで公開し、販売すること。つまり、読みたい人と、発表したい人をネットで結ぶというビジネスモデル。今まで、ありそうでなかった着想を形にした高橋さんに、今後のビジョンなどをうかがった。

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紙の出版には、無駄が多い。必要なときに必要な分だけ読むことのできる電子出版に可能性を感じるようになりました。

会社設立の動機は?

電子出版をやろうと思いました。長いこと雑誌編集に携わり、紙の出版だけには限界を感じるようになったのです。取次ぎを経なければ作ったものを書店に置くことも難しい世界ですから、閉塞感もあった。自然環境を考えても、紙の大量消費に疑問がありました。大量に印刷したものの7割が戻ってきて廃棄処分するしかないというような経験もしました。とにかく無駄が多いと感じ、必要なときに必要な分だけ読むことのできる電子出版に可能性を感じるようになったのです。

電子出版が潜在的に持つ可能性は、かなり大きいように感じます。

そうですね。単にネット上で書籍を購入するだけでなく、本の中身も電子化すればインターネット上で、いつでも情報がとれるようになります。今はまだ、それはできない状況。インターネットは本来、「人類の叡智を誰もが、いつでも、どこからでも利用できる」ツールとして民間に公開されたものですから、その主旨に近づく動きだと思います。Googleがやろうとしているのも、そういうことですよね。

電子出版という考え方は、かなり以前からあったように思いますが。

電子化の動きは、10年くらい前には生まれていますが、全然大きくならずにここまできた。しかしここ数年、徐々に動き始め、少しずつですが伸びています。今後伸びるマーケットだという予測はありますが、いつまでにどれくらい伸びるという正確な予測はない状況です。

世に出せば受け入れられる価値ある作品だとはわかっていても、リスクが大きすぎてチャレンジできなかった。

pocket.jpは、アマチュアに投稿を呼びかけていることが特徴ですね。

出版の垣根を下げようと思いました。紙の出版には経費がかかりますから、売れる、儲かるという確信がないとリリースは困難でした。これまではプロではない無名の人が、世に出せば受け入れられる、価値ある作品、価値ある考えを持っているはずだとはわかっていても、リスクが大きすぎてチャレンジできなかった。印刷会社や出版社の論理から離れたところで出版活動ができる電子出版には、そのハードル、垣根を下げられるという点で意義が大きいと思います。経費がかかっていないので、そんなに売れる必要はない。出版するというより、情報の発信元になると考えればいいのだと思います。

課金はどんなシステムで?

掲載作品は10ページは無料で読めますが、全部読みたい場合、クレジットカードで購入してもらうことになります。値段は作家自身に設定してもらいます。現在は200~600円がボリュームゾーンになっていますね。作家の取り分は60%。たとえば200円のものが売れたら、作家が60%の120円を手にするという仕組みです。

取材風景

ジャンルは、小説のみですか?

いえ、ジャンルに制限はありません。どんなスタイルのものでも、OK。もちろん小説や詩集が多いのですが、ビジネス書でも、画家やイラストレーターの作品集でもいい。現在は特に、デザイナーの作品集に力を入れています。

投稿の方法は?

HPのトップからメンバー登録、作家登録をしていただき、作品をPDF形式に変換して、アップロードしてもらうだけで投稿手続きは完了します。

審査等は?

今はありません。投稿されたものは、すべて作品として公開されます。

PDF化が必須ですか?

基本そうなのですが、なかにはそういうことが苦手な方がいらっしゃるのも事実。その場合、PDF化はこちらで行います。

書評が充実していますが、すべて高橋さんがなさっている?

基本私が受け持っていますが、今は、作家自身に書いてもらうケースが多いですね。ですから、書評というより作品紹介。やはり、書いた本人が書くものは的を射ていますからね。

トップに上がっている『時は高く、蒼空の地に沈みけり』と『そら』という作品は、アマチュアによる作品?

そうです。どちらも若い女性です。ちなみに、どちらもご本人には会っていません。

なるほど、会う必要もないわけですね。

そうですね。作品さえよければいいんです。

現在、作品数は?

文豪の古典作品も含めて200作品ほど上がっています。年内には1000作品にまで増やしたいと思っています。

ユーザー数は?

徐々に増えてきていて、現在は1日に500人ほど訪れて楽しんでくれています。ただ、クレジットカード決済に躊躇があるようで、売り上げは伸び悩みぎみ。決済方法を検討すべきかなと思い始めています。

どこにもあるものは置くつもりはないし、 どこにもないものがあるサイトとして認知されたいと思います。

感覚としては、出版社を立ち上げた気持ちですか?

半分出版社で、半分書店ですね。pocket.jpが無名の作家やイラストレーターの登竜門になったらいいと思う。新しい才能を発掘したいですね。将来的には、pocket.jpによるネット文学賞のようなものもやりたいと思っています。

会社の特徴はどんなところに?

他にも電子出版を行っているサイトはありますが、大手出版社との資本関係のない純粋なベンチャーはほとんどないと思います。資本関係にしばられない、自由な立場と自由な発想を特色にしていきたいですね。

アマチュアの登竜門的な位置付けも、特色になりますね。

そうですね。どこにもあるものは置くつもりはないし、どこにもないものがあるサイトとして認知されたいと思います。どこにもないものを読みたい、どこにもないものを発表したい、そういう人たちの希望に応えることで、他にはない価値を生み出していきたいと考えています。

当面の課題は?

作品を増やす。作家を発掘する。集客を増やす。

将来、pocket.jpからベストセラーが生まれるかもしれない。

そうですね。pocket.jpで実績をあげた作品を書籍出版につなげる事業も、立ち上げたいと思っています。その準備としてまずは自費出版をお手伝いしていくつもりです。

取材日:2006年7月26日

株式会社トレンドライフ

  • 代表取締役:高橋範夫
  • 業務内容:
    • インターネット上のデジタル書籍販売
    • インターネット上の広告事業
    • オンデマンド事業
    • 書籍編集・出版
  • 設立:2005年9月27日
  • 本社所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座2-11-8第22 中央ビル4F
  • TEL:03-3524-1853
  • FAX:03-3524-1654
  • E-mail:info@pocket.jp
  • URL:http://pocket.jp/
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