WEB・モバイル2011.07.27

人やキャラクターを見せて対話を生み 潜在層をも巻き込む

東京
株式会社ウィルマッチ 代表取締役 柳沢健太郎氏
 
株式会社ウィルマッチは、Facebookなどのソーシャルメディアで成果を上げたいと考える企業・個人に、コンサルティングを提供する企業です。 代表取締役社長の柳沢健太郎さんは、株式会社リクルートでネット事業に携わってきた経験の中で、ソーシャルメディアでは既存顧客といったファンを多く抱えている大手企業以上に、「高い専門性を持つ個人」こそがその利便性を享受できると考えるようになり、その支援に携わるべく2011年に同社を起業しました。 同社設立の経緯と理念、ビジネスモデルについて、柳沢さんにお聞きします。

ソーシャルメディアでは”人”がベースの中小企業・個人に、より可能性がある

ソーシャルメディアにビジネス上の可能性を信じ、起業に踏み切られたのですね?

ネットの世界はポータル事業、検索(サーチ)事業の隆盛を経て今、TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)による事業の時代に入ったと言えます。 私は過去2年の間、株式会社リクルートの事業開発室に所属し、リクルート出資の株式会社ブログウオッチャーというネットベンチャーに出向して、ブログ・Twitter・Facebookといったソーシャルメディアマーケティングや検索エンジン最適化(SEO)に関する、コンサルティングサービスに従事してきました。 その中で、今後はSNSなどのソーシャルメディアを使ったコミュニティ事業――Facebookなどを使って個人や法人のファンを集めて、有益な情報を提供しながら、ファンと絆をつくり、最終的にサービスの告知などに結びつけるような事業が伸びていくと確信し、起業を決意しました。

ソーシャルメディアは、ビジネスツールとしてどれほどの可能性を持っているのでしょう。

これからはエッジのきいた、専門スキルや明確なキャラクターを持った個人の時代で、そこでソーシャルメディアは有効なビジネスツールとして大いに役立つと私は考えています。 その一例が、アメリカのワインライブラリー・ドットコムという、ワインの通販企業の事例です。 ワインの通販ショップだけでは差別化できないと考えたオーナーのゲイリー・ベーナーチャックさんが、自分でワインのチャンネルをつくった。こんなワインが出ました、という投稿だけでは誰も見てくれませんから、ユーザーに代わってワインを試飲した専門家がワインの味を動画ブログにアップする。その内容にワインファンが惹きつけられたわけです。 専門性を持った個人がソーシャルメディアを使って、お役立ち情報を提供し、最終的には販売サイトに誘導した、最大の成功例です。 おしなべて言えば、人がベースの中小企業・個人などはより成功の可能性が高いと言えるでしょう。ゲイリーさんが手がけたようなアプローチをクライアントに実践していただけるよう、コンサルティングをしていきたいですね。

ソーシャルメディアをHPやブログなど従来のメディアに絡めることをお考えでしょうか?

当面は、Facebookで記事を発見してもらいアクセスを呼びますが、飛び先は企業様のHPやブログにというやり方が主流になるでしょう。 Twitter、Facebookはあくまでユーザーに発見してもらう場です。単なる告知広告はソーシャルメディアでは受け入れられにくいので、ユーザーにとってのお役立ち情報をTwitterやFacebookに投稿し、そこに広告をあわせていく。自社のブログに誘導する中で、記事中に広告を入れるなどの手法を中心に提案します。 Facebookのブログ機能でも告知もできるのですが、そこはあくまでノート的な更新情報で、まとまった一覧性がありません。ですから、専門的なコンテンツについてはブログや自社HPを利用する必要があるのです。

実績のない個人や中小企業が信頼を勝ち得ることができる場

ソーシャルメディアで集客するためのコンサルティングが、主軸になる。

最近よく言われているように、ソーシャルメディアで売上げを上げるのは案外難しいものです。したがってそこに向けて知恵をお出ししようと考えています。 当社の場合は、個社向けのコンサルティングも行っておりますが、ソーシャルメディアに関するノウハウをセミナー形式や動画を活用したWEBセミナー形式にして、「当社対多くのお客様」というビジネスモデルを確立したいと思っています。 最近は関西とか四国など遠方からも要望をいただいていますが、こういったWebセミナーであれば、時間や空間の制約を超えて、お客様に価値を提供できると考えています。

売上げに結びつくソーシャルメディアを、お客さまと一緒につくっていくのですね。

そうですね。まずはノウハウをセミナーで習得いただき、その後、ソーシャルメディア活用に関する戦略策定をやって、必要であれば、その後月1回ペースでモニタリングし、アドバイスをしていく、そういうやり方を考えています。 これまで日本の企業では、広告づくりは広告代理店に依存してきたと思います。かたやFacebookの場合は、テレビや雑誌の広告を作って集客するのとは違い、番組自体をつくることになります。 コンテンツはお客様自身でつくっていただく。そこが重要な、基本です。代理店など第三者がつくってもつまらない上、時間もかかる。アメリカで成功した企業はどれも、コンテンツづくりを内製化しています。

柳沢さんは、Facebookの中での交流で実績を得て起業された、まさに時代の申し子でもありますね?

まだまだ、これからですので、今後にご期待頂きたいと思います!(笑)。 ソーシャルメディアを活用した集客・ブランディングについてのコンテンツをFacebookなど投稿していたのですが、その内容に興味を持った方から、講演や取材・コンサルティングの打診をくださり、クライアントになっていただいています。 Facebookで質問に対して丁寧に答えを返しているうちに信頼をいただき、コンサルティングの依頼をいただいたケースもあります。 既存の取引先企業や信用のある大手企業に仕事を頼むのがこれまでの常識であり、知名度のない中小企業や個人が仕事を受注するのは難しいのもまたこれまでの常識でした。 しかしそれが大きく変わりつつあるのを実感します。

ファンを獲得するための情報の先出しも有効

クライアントからはどのような質問が多いですか?

まずはFacebookの使い方がよく分からない。「可能性はあるのでは?」と思いながらも、具体的な活用法が分かられない方からの、最も基本的なお問い合わせですね。 もうひとつは、アメリカで成功していることは分かったけど、日本の成功事例を教えてくれというオーダー。

日本でもまだ数は少ないですけど、おもしろい事例が出始めていますね。 私自身も日本中を相手にできるようなビジネスモデル、たとえば「Facebook等を活用して効率的に集客・ブランディングするためのナレッジ・ノウハウ」を日本中のお客様に配信できるコミュニティ事業などを創っていきたい。

また、Facebook活用のメリットとして、実はFacebookはSEOに強いんです。 グーグルが定めているドメインのページランクでは、Facebookのページランクは「10」ですが、これはFacebookとGoogleくらいです。またアメブロ、Youtube、Ustreamなどもページランク「7」以上です。普通の企業のHPは「2」とか「3」なんですよ。 そういった強みを生かし、ある弁護士さんがFacebookページを持っていて、特定エリア×弁護士という検索で上位にヒットさせることに成功しています。たとえば「新富町×飲食店」といったように、ニッチなエリア名×業種名という検索でヒットさせる手法は、可能性を感じさせます。

ソーシャルメディアは集客には威力を発揮できるが、その先売上げに結びつける部分が、コンサルの一番の鍵になりますね?

広告でも同じですが、その企業の強みを打ち出していくことが第一ですね。あとは魅力のあるコンテンツが大事だと思います。 最終的に提供したい商品やサービスから逆算し、ターゲットとなる潜在層を想定してコンテンツをつくるべきだと思います。 売上のためにはまずファンを集めなきゃいけない。そこでブランディングして、絆を深めていく作業が必要なんですね。つまり、ファンを増やして、ブランディングして、その上で何かをお勧めするという、3段階のプロセスがあるわけで、すぐに売上げに結びつくわけではありません。 そこで、まずファンを獲得するため、個人や中小企業などには、私は情報の先出しをすることをお勧めしています。普通ならセミナーなどに来ないと、話さないことなどをFacebookに出すことで、ファンを惹きつけることが重要だと思います。

人やキャラクターを見せて対話を生み、潜在層をも巻き込む

それらのアプローチは、どのような業態が向いていると感じますか。

分野によっては口コミを起こせばいいとも限りません。たとえば、転職や中途採用には向かない。「いいね!」を押した途端に、転職の意思が周囲にばれてしまうからです。新卒採用には使えるでしょうが。 また、BtoCやBtoBの相談業などは向いていると思いますが、BtoBの製品販促などはまだ障壁が高いと思います。 たとえば友人と遊びに行く車の中で、うちの製品が一番だとか、宣伝はしないですよね。それよりもサッカーの話とか共通の話題を選びます。それと同じで、専門的なBtoBの製品販促などは、Facebookでも共有してほしくないとユーザーは感じる。共感できる人の数が少ないですからね。

売上に連動した、成果報酬モデルは考えておられますか?

他社の通販サイト制作会社ではそういう例がありますが、そうした場合、お客様が頑張らなくなってこちらに丸投げになってしまう。 ソーシャルメディアではお客様自体がコンテンツづくりの主役です。ですから、私は自分の立ち位置を、正確にはコンサルティングではなくトレーナーなのだと考えています。 お客様が主役になってコンテンツをつくられ、そこを伴走する、“家庭教師”に近い存在。売上も、あくまで家庭教師代(笑)としてお金をいただくビジネスモデルを考えています。 要するにソーシャルメディアはテレビ局を持つようなもの、ということです。そこが飲み込めない企業様はなかなか成功に結びつかないと思います。

今後の貴社の展望を教えてください。

まずは実践研究として僕自身がソーシャルメディアで成果を出すために頑張っていき、お客様を満足させられるようなコンテンツを配信していきたいですね。 成果を皆さんとシェアするかたちで集客に悩むクライアントに、さまざまなサポートを提供していきたいと考えています。

(取材日:2011年6月)

株式会社ウィルマッチ

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