僕たちの業界は 製造業ではなくてサービス業です

大阪
株式会社メトロ チーフマネージャー ヒグチユタカ(樋口豊)氏
 
大阪ではゲーム業界の老舗的存在でありながら、奇抜な路線で多くのヒットタイトルを持つ株式会社メトロ、現在、キッズアーケードでデータカードダスの大ヒットタイトルを世に出している。そのメトロの大阪開発事業を統括するチーフマネージャー、ヒグチユタカ(樋口豊)氏に独自の理論でモノづくり、ゲーム業界のことを語っていただきました。

まだ世の中に出ていない珍しいタイトルを作るのがポリシー

業界に影響のある革命的なタイトルが多いそうですね。

弊社は市場にない、かつ面白い発展性のあるタイトルを作るのがポリシーですが、そのひとつがウルトラマンのゲームです。アーケードで3D格闘が出始めた頃だったのですが、ポリゴンでウルトラマンのモデルを作り格闘ゲームにしたのが、ファイティングエボリューションシリーズです。 またアイドルマスターも、「アーケードでポリゴンを使ったギャルゲーのようなものにチャレンジしてみませんか」とお話をいただいて作りましたが、当時、制作を担当していた僕自身も「ポリゴンで可愛いキャラクターが作れるのか?」ってところから始まりました(笑)。アイドルを育成するゲームで、当時はグラビアアイドルが主流だったのですが、テレビで歌うアイドルを育てようと。なのでライブシーンは、これ以前に作ったスクウェア・エニックスのリズムゲーのバスト ア ムーブで培ったダンスシーンの経験を活かして作り上げました。開発にはかなり長い歳月がかかりました。

現在ではキッズジャンルのアーケードゲームに力を注いでいらっしゃいますよね。 子供に大人気だと思いますが、その秘訣は?

データカードダスはカード販売機にゲームがついている、いわゆるゲームは「おまけ」なんですね。ユーザーはお金を払ってカードを手に入れることで、ほぼ達成感を得られているんです。ゲームが与える娯楽は難しい問題をクリアするより、痛快に勝てた!と言うキモチいい感情だけをフィードバックされたいのです。また文字による説明ではなく、直観的に操作ができるようなグラフィカルなUIが必要ですね。自分が手に入れたカードに書かれたイラストのキャラクターがゲームの中で映像として飛び出て、かっこよく必殺技を決めて「勝った」と言うことで興奮や感動を得る。プレイヤーが遊んだ感、自分がやっつけたというドラマを味わってゲームが終わると。そうすると、他のカードも欲しくなる。さらにそこにチームを組んだり、デッキ構築ができたりとか、カードゲームならではの要素、カードを集める楽しさを演出していくわけです。

そのような子供の心理は専門的な知識から?

専門的な勉強と言うより、単純にゲームをしてる子供達をよく観察することですね。大人はネットでユーザーの反応を見ることができるので、フィードバックの参考になりますが、子供は違います。実際の子供は行動パターンが予測不能なんです。これに7年間の開発を手がけていますが、7年間、同じノウハウが使えないわけです。年代が変わると子供のタイプ、性質も様変わりします。そもそも子供が見る媒体、テレビで放映されるクオリティーがどんどん進んでいるので受ける影響が全然違うんですね。子供の考え方や流行への感度をじっくり観察して、簡易化したものをフューチャリングしていくんです。スマホを持ってる子供は少ないけど、お兄ちゃんやお姉ちゃんが持っている憧れはある。そういうデバイスや情報とかを取り入れたモノを作らないと流行らないわけです。また、バンダイさんから勉強させてもらっているのですが、キャラクターは生鮮食品だと。売り時があり、テレビ放映したその週末にはそのキャラクターが買えるコンテンツを用意しないと意味がない。だから、僕たちもまだ字コンテの段階から開発に関わり、テレビ放映ギリギリに出来上がるということはよくありますね。

製造業と言うよりむしろサービス業に近い

ゲームの製造はテクノロジーだけではムリなんですね。

ゲーム業界は製造業だと思いますが、スマホやアーケードゲームはサービス業に近いと言えるのではないでしょうか?開発の現場でよく言うのは「お店にその商品があったら、それを買いますか?」と。お客さんを第一に考えたモノづくり。パッケージゲームは売り切りだけど、アーケードはインカム(収入)の商売ですから、リピーターがないと。親切でわかりやすい、サービスのクオリティーが重要視されます。 これはあくまでも僕の個人的な意見ですが、家庭用の市場が縮小した原因は、ハードウェアがアップしていくのに伴い映像のクオリティーを精鋭化していったことにもあると思います。それは例えるとグルメな高級料理店ばかりが並んでしまったのですね。確かにお金持ちの舌が肥えたユーザー、僕は貴族ゲーマーと呼んでますが(笑)、その人たちはいるのですが、みんながみんなそうではないわけです。実際の市場は庶民ゲーマーがほとんどで、その庶民にアプローチしなかったから、市場縮小につながったのだと思っています。とくにバブル崩壊以降、ファッション業界はDCブランドからファストファッションにニーズが求められたのですが、なぜかゲーム業界だけはファストゲームではなくブランドゲームが求められていると信じてその方向へ進んで行ったのです。

そして今は庶民ゲームの時代だと?

そうですね。スマホのゲームはまさに庶民ゲームだと思います。でも、ファストゲームが求められているからと言って、ただ単に安いだけではダメです。安くても質のいい、コストパフォーマンスの一番高いコンテンツを求めているのですね、庶民ゲーマーは。そこは間違えてはいけない部分です。

技術だけでなく、コミュニケーション能力も必要

今秋リリース予定! 『大怪獣ラッシュ ULTRA FRONTIER』 (C)円谷プロ (C)BANDAI

今秋リリース予定!
『大怪獣ラッシュ ULTRA FRONTIER』
(C)円谷プロ (C)BANDAI

ゲーム業界で働くにはどのような資質が必要だと思いますか?

こういうゲーム業界で働く人は真面目で実直な人が多いのですが、正直なところコミュニケーション能力に優れた人は少ないですね(苦笑)。人と接することがあまり多くないことも一因かと思いますが…。「気が利くとか、利かない」と言うのは、相手の人にこうしてあげたら、その人が次にすることが楽になるだろうと考えて動けるかどうかだと思いますね。すごく細かいことですが、ゲームの開発の現場においても同じことが言えるんです。日常生活において、ほんのちょっと気が利くようになるだけで、仕事にも反映されるんです。人付き合いをしてこなかった人が多いので、知らないわけですね。それをひとつひとつ、こうすれはお客さんが喜ぶよと教えると、それに対しては真面目に取り組んでいくようになりますね。

樋口さんの持論はどのような経験から?

僕は学生時代に経済的理由からアルバイトを数多くしました、そのほとんどがサービス業だったのですが、接客業で培った経験は今の仕事にかなり活かされてと思います。僕は叱られることが好きです。叱られると言うことはそれを直せばまだ伸びしろがあると言うことだから。この業界に就職しようと思う人は、技術の習得ももちろんですが、それ以上にたくさんの社会経験を積んで欲しいと思います。オンラインでのコミュニケーションだけでなく、オフラインでの人とのコミュニケーションを大事にして欲しいですね。

取材日:2013年4月24日

株式会社メトロ

  • 代表取締役:金光德哲
  • 設立:1987年(昭和62年)5月15日
  • 資本金:4,900万円
  • 事業内容:
    • 業務用、家庭用ゲームソフト、オンラインゲーム、携帯コンテンツ
    • 及び周辺機器の企画開発、製造販売
    • 各種ソフトウェアのデバッグサービス
    • ショッピングセンターにおける娯楽施設の運営
  • 所在地:大阪本社/大阪市淀川区西中島5丁目12番8号 エス・ティ・エスビル
  • TEL:06-6303-0811
  • FAX:06-6303-0813
  • URL:http://www.metro-japan.com/
続きを読む

インタビューをもっと見る

TOP