グラフィック2020.05.27

美しいものは選ばれる。移りゆく時代の中でブレない信念を持つ強さ

東京
株式会社プラグ 代表取締役社長 プロデューサー
Yuichi Furukawa
古川 雄一

木のぬくもりが感じられるオフィスは、セクションごとに仕切られ、それぞれスタッフの個性が見え隠れしています。株式会社プラグは、広告制作を中心としたプロダクション。数々の有名企業の広告を制作しています。代表を務めるのはプロデューサーの古川雄一(ふるかわ ゆういち)さん。「広告に大いに憧れてほしい」と語る古川さんに、プロダクションの代表として、また一人のクリエイターとして、広告の世界の面白さと時代について伺いました。

始まりは、華やかな広告の世界への憧れ

会社を設立したきっかけを伺えますか。

会社を設立したのは17年前、フェローズさんと同じですね。(※フェローズは、クリエイターズステーションの運営会社です。)私は、それ以前も今のような制作プロダクションにいました。とても良い会社で、仕事も考え方などの全てを覚えさせてもらい、とても感謝しています。

でも、その当時にも感じて今でも思うのは「僕らのような少人数の制作プロダクションはスタッフが独立していく形が美しい」という考え方です。基本的に、会社が大きくなってくると、デザイナーやプロデューサーは動きづらくなるんです。人が増えると会社という縛りというか自由度がなくなってきて意思が薄れるというか…。だから、ある程度フレキシブルで制作に集中し、対応できる少人数のほうがいいのではないかと。

それに歳を重ねると、クライアントの側のスタッフ年齢や役割、見方も変わってきますよね。そうすると自ずと自分のできることも変わる。いつまでも制作の一人のままではいられなくなってくるんです。そういうことを考えると独立のタイミンは誰にでも必ずあると思います。

自分たちならこうできるのにとか、もっと他にできるんじゃないかとか。それで僕はチームのスタッフと相談して独立することにしました。作りたいのは会社ではなくて、プロダクションだったんですね。

ご自身がクリエイティブな業界を目指したのはなぜでしょうか。

何かを作っていきたいとか、崇高な目標があったわけではありません。当時はコピーライターの糸井重里(いとい しげさと)さんや仲畑貴志(なかはた さとし)さんがもてはやされた時代で、単純に華やかな世界に惹かれました。なんとなく普通は嫌だな、タレントに会えたらいいな、くらいの感覚だったのは覚えています。

それで学生の時にまず青山の制作事務所に荷物運びなどをするアルバイトとして潜り込んで。いろんな仕事や面白い人に会う事ができて、どんどんこの世界の面白さにハマりました。今でもずっと面白い、楽しいという気持ちは同じですね。

これまでのお仕事で特に印象深い案件はありましたか。

特別にこれはという記憶はありません、というのも常々必死なので。継続して受けている仕事というのはあまりないんです。うちでは、キリンホールディングス株式会社のパッケージなどのように継続した仕事もありますが、基本的にその都度、コンペに参加し、勝ち取ってという流れの繰り返しです。

その時のオーダーにいかに応えられるかが、継続できる重要な点です。初期には、ある大手のタレント事務所の案件をよくいただいていました。そのときに、かなり鍛えられましたね。きちんとひとつずつやっていくことで「ちゃんとできるんだね」と、周りに認めてもらえるようになりました。

強いて言うなら、毎回求められるものは違うので全ての仕事が面白いし、達成感は大きいです。

大切なのはコミュニケーション。関係を継続するために必要なこと

コンペにはかなり参加されているのでしょうか。

プレゼンは多いです。うちは大手代理店と組ませていただくことが多いのですが、その場合ナショナルクライアントが中心ですから規模も大きい。

僕らグラフィックだけではなく、Web制作者や映像制作者などいろんな人と関わることになります。その中でクリエイティブ・ディレクターやアートディレクターの考えや感性をどこまでくみ取れるかも重要です。そこで、どう人とつながって、「また一緒にやろう」と言ってもらえるか。

そのためには、コミュニケーション力も必要となってきます。技術や結果を出すことも大切ですが、それだけではないです。

スタッフに目指して欲しいのは独立。プロダクションとして考える健全な形

現在の御社のスタッフ構成を教えてください。

デザイナー、アートディレクター、プロデューサーが勤務しています。7:3で女性が多いです。面接の段階で既に女性が多く、優秀な人も多い。それに、今は美大も女性がかなりの割合を占めています。

これは他のプロダクションともよく話していますが、男性で優秀な人を採用するのは難しいですね。まず人数が少ないうえに、広告業界を志望する人が減ってきています。ゲーム業界に行く人が多いんです。プロダクションを受ける人は減っているのが現状なのが寂しいですね。

男性を採用したいのはバランスの問題でしょうか。

そうです。例えば化粧品なんかは、僕より女性のほうが詳しい人が多いですから。その商品やサービスを知らなくてもできる人はできるんでしょうが、僕個人の考えとして、知っている人間が作るほうがいいと思っています。そうじゃないと、見る人の心を動かすことはできないと思います。

今年の採用はどうでしたか。

全員新卒を迎え入れました。うちは常に新卒にこだわっているわけではありません。必要なときには中途採用もしています。今年は会社に若干の余裕があり、将来に向けて新陳代謝を考えた結果です。若い世代を入れるなら、一人ではなく、何人か入れたほうがいいと考えました。

若い感性や知識に期待しているので、意見やアイデアをどんどん出して欲しいです。以前のやり方では通じないこともありますから。そのとき、先輩の中に一人というより、同じ年代が何人かいるほうが意見を言いやすいし、結果として面白いものができると思うんです。

スタッフの知識や技術のアップデートについて意識されていますか。

考えてはいますが難しいですね。みんな忙しいのでなかなか時間が取れない。うちのスタッフは外部とのやりとりの中で情報交換をしています。

例えば撮影ではカメラマンやヘアメイク・スタイリストの人がいて、そこでは違う角度からのものの見方や情報が入ったり。僕らは横のつながりが強いので、それが武器になります。やはり、ここでもコミュニケーションが重要になってきます。

スタッフには最終的に独立を意識してほしいです。それは、そのつもりでやっていくほうがスキルも上がると思うからです。デザイナーは、歳を取って、現場を退いても、下が育っていれば自分でチームや会社を作っていけます。「プラグ出身です」という人が増えるのが理想ですね。

広告の世界の面白さをもっと知って欲しい

広告現場で今必要とされている技能は何でしょうか。

必然的に外せないのはWebです。プレゼンの時のWebムービーをどうするのかとか。

今、ムービーと写真の境目が曖昧になってきています。撮影でも簡単な動画であれば、グラフィックのカメラマンが撮影できる。一方でムービーのカメラマンはライティングなど含め、よりクオリティの高い動画を撮影することもできる。

ただ、予算の都合でムービーのカメラマンでの撮影が難しい案件もあります。そういう中間の仕事を取り合う状態になっています。これを双方(ムービーかグラフィック)どちらから取りにいくのがいいのか、積極的に考えています。

今後、Webなどの他のジャンルに参入することは考えていますか。

グラフィックに関するWebの仕事は今でも受けていますが、全体の制作(サイトの構築など)や運用までやっていくのは僕たちの仕事として違う気がします。やるとしても他のWebチームと組むという形を取ると思います。今後面白い展開になれば変わるかもしれませんが。

僕の考えですが、紙媒体の表現は減っていくことはあっても、なくならないと思っています。最終的にグラフィックでは「美しいものは選ばれ続ける」。コンペにしても勝ち負けにこだわり過ぎる気はないけれど、勝たないと「信頼が次に続かない」。そこにこだわりたいんです。

広告や制作に興味がある人、現役で頑張っている人に向けて何か伝えたいことはありますか。

広告に大いに憧れてほしいです。

自分の個性で挑戦し、人に認められる仕事です。ですから、若くてもアイデア次第で勝負しやすい世界だとも思います。新しいことに挑戦できる可能性はまだまだあると思いますよ。もちろん、クライアントの意向などもありますが、自分がやってきたことをしっかり表現できるので広告業界って本当に楽しいんですよ。どんどん新しい人に入ってきてほしいですね。

取材日:2020年3月23日 ライター:久世 薫

株式会社プラグ

  • 代表者名:古川 雄一
  • 設立年月:2003年2月
  • 資本金:1000万円
  • 事業内容:広告デザイン制作
  • 所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座7-11-3 矢島ビル5F
  • URL:http://www.plugged.co.jp/
  • お問い合わせ先:03-5537-5812

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