WEB・モバイル2020.05.06

「天才だ」と証明したい気持ちが、チャレンジの原動力

仙台
株式会社hyoi 代表取締役
Hikaru Watanabe
渡邉 輝

「物理的距離を0にする」というコンセプトの下、行きたい場所がある人と現地でその場を撮影できる人をつなぐサービス「hyoi(ヒョイ)」を開発、運営している株式会社hyoi。学生時代に起業を果たした代表取締役の渡邉輝(わたなべ ひかる)さんに、それまでのいきさつや、サービスにかける思い、今後のビジョンなどについて話を伺いました。

「あなたは天才だから」と言われて育てられた

学生時代に起業したと伺いましたが、大学ではどういったことを学ばれていたのですか?

会社を作ったのは大学3年生のときで、この春に卒業しました。大学では、経営コースで主にマネジメントや経営管理について勉強し、会計ゼミで上場企業の財務諸表の分析などを行ってきました。ゲーム理論などを使って、会社は本当に上場する必要があるのかを研究してまとめたのが卒論です。大学は正直なところ、受かった大学に入ったのですが、高校生の頃の将来の夢はファッションデザイナーでしたし、漠然とながら将来起業したいという思いは持っていましたね。

創業のきっかけを教えてください。

ファッション業界に興味があり、業界の構造から学ぼうと思って、縫製会社にインターンに行ったことがありました。

でも、そこで2日目に嘔吐(おうと)したんです。人に雇われて働くことに気持ち悪さを感じたことがきっかけとなりました。たまたま実業家の堀江貴文(ほりえ たかふみ)さんの本を読んで、「会社を作る」という選択肢もあるなと思って、母に相談したところ「それもいいんじゃない」と背中を押してもらったので、起業したという流れです。

会社を経営している方ではなく、母親が相談相手だったのですか?

実は、実家が地元でクリーニングの会社を経営しているんです。曽祖父、祖父、母と経営者としてやってきているので、初めに相談しました。母からは、「あなたは天才だから」と子供の頃から言われて育てられたんです。それで、自分は天才だと信じ込んできたのですが、いくら自分で「天才だ」と口にしても誰も認めないですよね。だから、「何か大きいことをして、天才だということを証明したい」という思いはあります。

否定してきた人に証明してみせたいという気持ちが、チャレンジの原動力ともなっています。

家族の影響が大きいのですね?

両親の影響も大きいのですが、生きていくうえで一番影響を受けているのは祖父ですね。曽祖父が早くに亡くなって、踏ん張ってクリーニング店を経営してきたのが祖父です。自分が中学生のときに胃がんを患って亡くなったのですが、祖父を失ってから考えさせられることが多かったですね。熱心に営業に行って、地域マーケットのシェアを拡げていたなと思うんです。直接何を教わったということではありませんが、祖父には背中で語ってもらっていたのだと思います。

共感してくれた人たちが仲間に

会社を立ち上げたとき、事業は決まっていたんですか?

そうですね。現在の「hyoi」というWebサービスのアイデアはすでに固めていました。

「hyoi」は「物理的距離を0にする」というコンセプトのサービスなのですが、きっかけは「福島市で独りで暮らしている祖母のそばにいつもいれたらいいのに」と思ったこと。物理的距離があっても隣に存在しているようなサービスが作れないかと考えていった結果、「行きたい場所がある人と、現地で景色を撮影できる人をつなぐプラットフォーム」というアイデアが生まれました。

会社を立ち上げた段階からメンバーがいたんですか?

「hyoi」のサービスを考えついてから、このサービスを面白いと思ってくれて、コンセプトに共感してくれた人たちが、仲間になってくれました。

大学2年生のときに山形大学の起業家育成プログラムに通っていたのですが、そこで知り合った「エンジニアとしてサービスを作りたい人」とか「会社を起こしたい人」に声をかけていきましたら、会社の立ち上げの時点で、すでに私含めて7人のメンバー体制ができていました。といっても、社員は私一人で、仲間は基本的にみんな学生なので、思いに共感してくれて動いてくれている形ですが。

メンバーに求めていることは?

メンバーに入ってもらううえで、大事にしているのは仕事を抜きにして仲良くなれるかどうかです。特にスタートアップということもあるので、公私ともに仲間になれる人というのはありますね。今のメンバーとはライブに一緒に行ったり、夜にゲームをして遊んだりということもありますね。個々が強くても信頼関係がないといけないので、チームスピリットを大事にしています。

高校生のときに、結構強い高校でサッカーをしていて、補欠のBチームだったのですが、練習でレギュラーのAチームとゲームをすると、そこそこの確率で勝つことがありました。Aチームは個々の能力は高いけど、人間関係がギスギスしていて、Bチームはみんな仲が良かったのがその勝因だと思っていて「チームワーク、信頼関係ができていれば、個々の力が上のチームが相手でも、勝つことが十分可能」だと、そこで学びましたね。

メンバーとのコミュニケーションはどのように取っていますか?

みんな別々の大学、場所にいますので、コミュニケーションはチャットが中心です。

個々ではオフラインで会うことも多いのですが、全員揃うことはなかなかないですね。その分、チャットでは自分の思いを結構書いていますね。どこまで伝わっているかは分かりませんが、「CEO脳みそ部屋」というのを作って、サービスについてや、今後の展望など、思いついたことは書くようにしています。

メンバーはニックネームで呼び合っていると聞きました。

山形県庄内地方が属する「日本海側」という呼称を、日本の「西海岸」として置き換え、ポジティブなイメージにすることに取り組んでいる「一般社団法人日本西海岸計画」という団体があるのですが、そこの理事長の池田友喜(いけだ ゆうき)さんが私の師匠です。みんなニックネームで呼びあうのは、その界隈のやり方で、それをまねて取り入れました。私は池田さんにつけられた「マイケル」ですが、ニックネームにすることで距離が縮まっていると実際に感じていますね。

世界に名を知らしめるような存在に

「hyoi」以外のサービスも今後は手掛けていくのですか?

はい。「hyoi」では「物理的距離を0にする」というコンセプトで、「自分と土地とをつなげる」ことに焦点を当てているサービスなのですが、今後は「人と人とをつなげる」ことをテーマにしたサービスの開発にも取り組んでいこうと考えています。

具体的に言えば、現在コミュニケーションツールとして音声通話やテレビ通話が使われていると思うのですが、これをMR(複合現実)のテクノロジーを使って、バーチャルで隣にいるように表示できるコミュニケーションサービスに取り組もうと考えています。テクノロジーの進化により、エンドユーザー向けのスマートグラスが実用できるぐらいに進化してきているので、「スマホも持たずに、これだけ持ち歩く時代も遠くない」と思っています。そうなったときに、スマホに誰もがコミュニケーションツールのアプリを入れるのと同じように、「スマートグラスを持ったとき最初に入れるアプリ」という存在を目指していきたいです。

それによって、MRの世界が実現できるのでしょうか?

今、テレビ会議とかのツールがかなり使われていますが、2Dでは伝わらないメタメッセージは多くあるように思います。表情とかの細部が、本当に隣にいるようなレベルまで分かれば、より多くのことが伝わるのではないでしょうか。

パッと思いつくのは、恋人同士が遠距離であっても電話で距離を縮めているはずなのに、それでも「会いたい」という言葉が出る。そんなときに、その表情までリアルに分かれば、もっと幸せになれるんじゃないかなと思っています。

会社としてのhyoiの今後のビジョンを教えてください。

株式会社hyoiという社名を聞けば、誰もが何をしている会社かわかるほどの存在になりたいです。ゆくゆくは上場したいと思いますが、まずは、メンバー全員が事業できちんと食べていける会社にしていくことが目標です。

取材日:2020年3月18日 ライター:高橋 徹

株式会社hyoi

  • 代表者名:渡邉 輝
  • 設立年月:2018年12月
  • 事業内容:Webサービス、スマホアプリの開発・運営
  • 所在地:〒998-0864 山形県酒田市新橋2丁目26-20コワーキングスペース「LIGHTHOUSE」
  • URL:http://hyo-i.com/official/index.html
  • お問い合わせ先:

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