WEB・モバイル2019.10.09

「うちの会社の独自性はなんだ!?」 地方のアマチュアスポーツに活路あり

新潟
株式会社クワサンプラス 代表取締役
Yukio Kuwabara
桑原 幸夫

放課後や夏休み、休日や終業後に一生懸命練習に励んでも、学生スポーツやアマチュアスポーツがメディアで取り上げられることはほんのわずか。そんな「当たり前」を覆しているスポーツ雑誌が「スタンダード新潟」です。アマチュアの選手やメジャーではないスポーツも取り上げ、選手や保護者、関係者に今までになかった喜びを届け、地域のスポーツ振興に貢献しています。 東北を中心に展開している「スタンダード」の新潟版を新潟市のWeb・DTP・デザイン制作会社クワサンプラスの新規事業として株式会社クワサンエディットという別会社から創刊したのが2018年秋。 「普通のWeb制作会社」が新しい独自性を模索する中で行き着いた「スポーツ」という切り口。それはただのコンテンツではなく、スポーツに関わる人の暮らしにもポジティブな影響を与える挑戦でした。

異業種から憧れのものづくりの世界へ。そして独立へ。

桑原社長はマスコミ畑でずっとご活躍されてきたのですか?

高校の機械科を卒業後、いろいろなことをやってきました。まず新潟の鉄工所で図面を描く仕事や非破壊検査の仕事を経て19歳で上京。その後一念発起してレジや電光掲示板を販売する飛び込み営業マンに転職。ちょうど消費税が導入される時期だったのでものすごく契約が取れたんです。
初めての営業職で結果もついてきたこともあり面白かったのですが、元々何もないところからモノやコトを生み出すことに興味があったので、広告代理店に転職しました。飛び込み営業マンになる前は印刷会社を中心に数社履歴書を送りましたが、ことごとく落とされました。何もないところにデザインして一つの形にするのが面白そうだったし、鉄工所では鉄でモノを作っていたのが、紙に変わるだけだと簡単に思っていたんですよね。
広告代理店ではバス広告が中心でしたが、どうせなら自社媒体を手掛けたいと思い、その後、住宅情報誌の制作会社に転職し9年勤めました。27歳の頃には取締役にもなりました。

元々は異業種からの転身だったんですね。紙媒体専門のようですが、現在のクワサンプラスはWeb制作に強い企業です。その変遷を教えてください。

この住宅情報誌の時代に、システム開発のリーダーになりました。計算能力の高いWindowsとデザイン性が高いMacに互換性を持たせる(当時は互換性が無い)ことで、データベースを中心とした展開が描け、住宅の基礎情報を制作側へスムーズに伝達できるので、雑誌を隔週発行から毎週発行にできるようにすることを目指していました。
そこで地方発信の生活情報誌として全国でも稀な成功事例になっていた「新潟Komachi」の社長に出会い、そのシステムの相談からはじまり、最終的に「新潟Komachi」を作っている株式会社ニューズ・ラインに入社しました。
ここでは、新しい情報誌の創刊や、NTTドコモの地方発有料iモードコンテンツ「トクだねこまち」を始動したりしました。そしてこれからはホームページの時代だと考えて、33歳の時にWeb専門の子会社の社長に就任しました。

その後独立して現在のクワサンプラスにつながります。

社長就任後は成績不振による降格なども経験し、株式会社ニューズ・ライン時代も含め約15年間勤務しましたが、最後は自分で・・・と思い、2013年の秋に独立してWeb制作会社を立ち上げました。当時は一人でのんびり、ディレクターと外部のスタッフを雇ってやっていければいいなと思ってたんですけどね・・・。 経営は順調で、営業しなくても仕事はありました。ありがたいことにお客さんが他のお客さんを紹介してくれるんです。
紙媒体もニーズがあったのでパンフレットやチラシなども制作していたところ、どんどん仕事が増えてきて求められるレベルも上がってくる、しかも官公庁の仕事も受けるようになってきたので、これは体制をしっかり整えないとと思い社員を増やしていったんです。2013年は僕一人、それが2014年で3人、2015年で5人、そこから加速度的に増えていき、今は16人です。これだけの人を抱えると、のんびりはしていられない(笑)。僕が現場を回すことはやめて、事業作りに集中するようになりました。

会社の個性を模索してたどり着いた「スポーツ」という答え

その中で、出てきたキーワードが「スポーツ」なんですね。

世の中にホームページを作っている会社が増え、価格・スピード競争になって来ており、この先この業界での真向勝負は、なかなか苦戦するな?と判断しました。

「風雲会社伝」に登場している新潟の経営者たちはみんな年下ですが、例えばソルメディエージの丸山社長(※1)ならプロジェクションマッピング、ユニークワンの立川社長(※2)は自社のWebメディアやWeb広告のテリトリー、クーネルワークの谷社長(※3)なら「新潟直送計画」というそれぞれが強みのあるコンテンツを持っている。そう考えると、うちは専門性が何もないなぁと・・・。受注したものだけ作っていても勝てない。将来的に勝てるコンテンツとは何か?を考えた時に、スポーツだったんです。

※1<風雲会社伝_株式会社ソルメディエージ/代表取締役 丸山 健太氏>

※2<風雲会社伝_株式会社ユニークワン/代表取締役 立川 和行氏>

※3<風雲会社伝_株式会社クーネルワーク/代表取締役 谷 俊介氏>

なぜスポーツに着目されたんですか?

オリンピックの人気と、自分自身がスポーツ好きだったからですね。昔はバスケットボールをしていました。
新潟には「新潟アルビレックスBB」というバスケットボールのプロチームがあります。僕は後援会の会長をしていたり、その前から趣味でブログに試合の感想を書いたりしていたんです。結構注目されて全国でもランキングが高かった。
サッカーに関する書き込みを見ても、書いている人は分散していて、それを取りまとめる存在の必要性を感じました。そこで「スポーツ」はひとつのキーになるのではないかと気づいたんです。 ただスポーツの世界でのWebを使ったコンテンツは、知名度が無いと一般の方に浸透させることがなかなか難しいとも感じていました。ならば紙のほうがいい。 その頃たまたま、東北で制作・販売している地元のスポーツ情報を中心に取り上げる「スタンダード」という雑誌の存在を思い出したんです。子どもやアマチュア選手もたくさん取り上げられていて、写真もふんだんに使われていて。ローカルでもこんなに良い雑誌を作って成立させているなんてすばらしいと思い、制作会社に足を運びました。
そこから2018年正月に発行を決めて、バスケットボールのリーグ開幕戦に合わせて10月に「スタンダード新潟版」を創刊しました。

反響はいかがでしたか?

企画段階では関係者もピンと来ていなかったみたいですが、創刊号を出したらすごく評判が良くて、学校の先生方からは「生徒の頑張っている姿を紹介してくれたからうれしくて」と手紙が届きました。 今までは雑誌の広告営業だと「うちは出さないよ」と軽くあしらわれて喜ばれない職業だったのが、出したら喜ばれるようになったんです。
一番うれしかったのが、創刊した時に僕の中学の恩師が、たまたま試合会場に来たので一冊渡したら、試合会場を去るときに「桑原、お前いい仕事しているな、これはいいぞ」と褒めてもらったんです。涙が出たし、これはやらないといけないなと改めて強く感じました。自分勝手な使命感みたいなものですかね?

他にもスポーツビジネスを展開されているそうですね。

今年から「みんなの運動会」というコンテンツを出しています。
昔は企業で運動会などを実施していましたが、最近はなくなりましたよね。そこで企業コミュニケーションや婚活イベントに、僕らが運営を行うので運動会をしませんか?という提案です。
学校の運動会も請け負います。そうすれば学校は一年に一回しか使わない運動会の競技の道具を持たなくて済むし、先生方が運営のために残業をしたりストレスを抱えなくて済む。先生の働き方改革にもつながるんです。
競技も例えばバブルサッカーとか、運動が得意な子もそうでない子もチームの戦略で戦える変則リレーなど、工夫を凝らした新しい競技のご提案もできます。

スポーツの魅力を拡張する最新のテクノロジーを導入。

企業や学校にとってメリットが大きいですね。

また世界が注目しているAR(拡張現実)イベントとして「HADO」というテクノスポーツのイベント開催のサポートもしています。
これは遊園地やショッピングモール、アイドルグループなどから連携の問い合わせが来ていますね。 そして「HOISPO(ホイスポ)」です。無人のAIカメラでアマチュアスポーツや部活の試合を中継するサービスです。決勝戦だとテレビで放送されたりしますが、一回戦から準決勝ってほぼ放送されることはないじゃないですか。
でも、決勝まで行けなくても一生懸命戦っている子どもの姿を見たい親や関係者はたくさんいるはずで。特に新潟は広いので、物理的にも観戦が容易ではないことも多いのです。この夏、試験的に配信を行いましたが、新潟市で開催された試合が佐渡の学校と新潟県の北端エリア村上市の学校との対戦で、アクセス数が多かったですね。

ホイスポについてもう少し具体的に教えてください。

フットサル、サッカー、バスケ、バレー、野球、レスリングなど12種類のスポーツに対応しているAIカメラで、自動的に映像を配信してくれます。ゲームを自動で追って適時、絞りもしてくれる。またVRカメラのように自分が見たい部分にフォーカスしてみることもできます。
試合の映像は、選手や指導者にとっても振り返りの材料として貴重な資料になるんです。高校生だと「見に来ないで」って言われちゃう親もいるんです、例えば僕とか(笑)。そういうフォローにもなります。

ホイスポも新潟のみならず他県、そして東京の通信系の企業から連携の話を受けているところで
運動会もそうですが、先生方がサービス残業でいろいろな試合で動かないといけない、その運営のお手伝いができれば彼らの働き方改革にもつながる。生徒やお子さんたちの頑張りを手助けする、それがビジネスになるのがいいのかなと思っています。そこまで行けるように事業を組み立てていきたいですね。

事業を通じて、学校や家庭が抱える課題を解決したい。

全てのサービスを行う上で、大切にしている理念を教えてください。

Give&Giveの精神ですね。
昔指導してくれた人が、「君は与えたことに対して見返りを求めるけど、とにかく与え続けることがいいんじゃないか」とアドバイスしてくれたことがありました。
そこで素直に相手の立場に立って、Takeを求めず与え続けることをはじめてみました。そうすると人が集まってお客さんがお客さんを紹介してくれるようになったんです。
今はその信頼を裏切らないこと=高いクオリティを大切にしています。

今後のビジネスの展望をお聞かせください。

やはりスポーツを切り口に挑戦していきたいですね。まだどこもやっていないので。まだまだ20個くらいやりたいことのアイデアはあるんです。 スタッフにも、せっかく生まれてきたのだから誇りに思えるような新しいコンテンツなど、人生に何かを残して欲しいと思っています。
前述した新潟の下の世代が尖ったコンテンツを作っているので、僕も戦いを挑む土俵にいるわけですよ、負けたくないし「桑原さんやるなぁ」と言わせたい。
それを地方でやることに光が見出せて、形ができるんだったら最高だなと思いますね。だから挑戦し続けるしかありませんね。

スポーツコンテンツとクリエイティブの将来性はどのようにお考えですか?

少子化だと言っても子どもにお金をかけているし、子どもたちを健全な姿で育て上げていくのが親の役目です。むしろひきこもりとか、挨拶ができないとか人付き合いが出来ないのは、スポーツで改善できる可能性があると思います。
親が共働きで送迎ができない、だからスポーツさせません!という状況は変えないといけない。これも「スタンダード新潟」の事業の延長線上として考え、送迎ができる仕組みができればスポーツに関われる子どもも増えると思います。
勉強や音楽なども大事だけど、運動能力は人間にとって大事だから、それを親のせいで遮断するのはかわいそうなので、それができるためには僕らが力をつけないといけませんね。だから僕たちの活動の認知や収益などをちゃんと形にしていかないとかなと思っています。

取材日:2019年9月3日 ライター:丸山 智子

株式会社クワサンプラス

  • 代表者名:代表取締役 桑原 幸夫
  • 設立年月:2017年3月
  • 資本金:600万円
  • 事業内容:Web、DTP、デザイン制作、スポーツ関連事業の企画・運営
  • 所在地:〒950-2006 新潟県新潟市西区青山新町31-12
  • URL:https://kuwasan.jp
  • お問い合わせ先:025-234-5000

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