脱・下請け! 社員の「やりたい」を肯定する映像制作会社

東京
株式会社レティクル 代表取締役
Tetsuo Matsuki
松木 徹雄

株式会社レティクルには、動画によるマーケティング事業だけでなく、映像に長く携わってきたからこそ出来る、映像を主力とした多くの関連事業があった。社員の「やりたい」を肯定し、コンテンツ作りを通して下請けからの脱却を目指している。それぞれの事業の中核を担うのは、社員たちだ。お話を伺うと、社員との絆を大切にし、チャレンジ精神に富んだ松木さんの大らかな人柄が見えてきた。

芸人をしつつ、大学とデジハリに通う三足の草鞋を履いて始めた動画制作

松木さんはもともと、お笑いをされていたと伺ったのですが本当ですか?

はるか昔ですけど、ちょっとだけ。

そんなお笑いの世界から、動画制作とはどのような出合いだったのでしょうか?

当時は芸人もやりつつ、神奈川大学の経営学部に通っていました。映画『ジュラシック・パーク』(1993年)や『ターミネーター2』(1991年)が上映された頃で、CGに興味を持ったんです。それからはダブルスクールで芸人をやりながら大学に通って、デジタルハリウッドでCGを学びました。そのあともデジハリで講師アシスタントのようなバイトをしてましたから、三足の草鞋を履いていた感じですね。

そこから動画一本でやろうと決めたのはいつ頃だったんでしょうか?

お笑いは、相方は演者向きでラジオ方面に進んでいきました。けれど僕の方は映像系のコンテストに応募するなかですぐ気づいたんですけど、演者よりも裏方が向いてたんです。それで最終的には、映像のほうへ進んでいく感じですね。

では、起業するキッカケはなんだったのでしょうか?

デジハリを卒業したあとはNHKの下請け制作会社に入って、2~3年ほどアニメーターとして『にほんごであそぼ』や『ピタゴラスイッチ』などのワンコーナーの映像を作っていました。 ですが、NHKだと長いあいだ同じ番組で、同じことをやるじゃないですか。それで、ちょっと飽きてきたというか・・・。

それから6年ほど前に、「動画の時代が来る」と言われ始めた時期があったんですよ。企業系の映像や、YouTubeチャンネル、動画を使っていろいろなことをしたいという思いがあって今の会社を立ち上げました。

御社のホームページを拝見したとき、アニメーションを作るなかでも、なぜ「動画マーケティング」を選んだんだろうというのが気になったのですが、それはテレビでもウェディングでもなくて、という状況のなかで残ったものだったのでしょうか?

ただ下請けをやっててもつまらないな、と思ったんです。「動画を作って終わり」ではなく、広告としてYouTubeを使ってどうしたら物が売れるか、とか。そういう風に特化していったほうが良いと考えました。

とは言っても、実際には弊社は動画だけじゃなくて、動画を中心にいろんなことをやっているんですよ。

根本にあるのは、お客様を「楽しませたい」思い

では、御社の事業をお教えていただけますか?

まずは、映像制作事業。広告代理店や、中小企業の社長さんから依頼をいただいて、商品の販売促進動画や採用動画などを作っています。

次に「景品パラダイス」という名前で、パーティー用の景品を通販しています。うちは映像屋なので、景品の紹介映像とのセット売りが特長です。

それから、声優・中原茂さんによる「言の葉塾」。「言の葉塾」ではYouTubeチャンネルと、クラウドファンディングサイトのCAMPFIREを使ったオンラインサロンや、声優になりたい人が学ぶための塾を開講しています。YouTubeで集客をして、CAMPFIREに繋げる流れですね。 最近オフ会をやったんですけど、感動して泣いてくれた人もいて。良いイベントをやれてよかったです。会費が3000円なので高校生も参加してくれました。

そのお値段で指導が受けられるって、とても貴重な機会ですね。

ありがとうございます。次に、「笑ウェディング」というウェディングで笑いを取るための映像事業。
それから、Vtuber事業をやっています。イベントを開いたり、物販でグッズを販売したり、普通のYouTube広告で稼いだりしています。

ホームランはないんですが、小さい事業を何個かやっているんですね。

 一貫してエンタメ力があるというか、エンタメに強い印象を受けますね。

「笑わせたい」とか、自分たちが面白いと思うことで、お客さんにも面白いと思ってもらいたいんですよね。もともと映像屋なので、映像で付加価値をつけて集客をしたいっていう狙いはあるんですけど、根本にあるのは「楽しませたい」ですね。

「やりたいことをやらせてあげたい」

いま従業員は何人くらいいらっしゃるんですか?

取締役が僕を入れて3名で、社員は4名、バイトが6名くらいかな。

やっていることに比べて、人が少なそうに聞こえるのですが・・・。

うちの事業はすべて、ひとつの事業に対して責任者であるディレクター(部長)が一人いて、あとはバイトという形です。まかなえない部分は、フリーの人にお願いしています。それぞれの事業は、それぞれの部長たちがやりたいことをやらせてあげたいと思っています。

従業員を採用する上で、基準にしていることはありますか?

小さな会社なので、机に座って作るだけの人を雇うのは難しいですね。ディレクター業もできなきゃいけないし、外に打ち合わせにも行くし、できればお金の流れも見てほしい。作れるのはもちろん重要なんですけど、採用に関して言えば実はそっちを重要視しているところはありますね。あとは、「面白いことをやりたい」「人を楽しませたい」って思いに共感してくれる人を入れたいなと思います。

御社の募集要項を拝見したのですが、アルバイトは1~2か月で動画編集ソフト「After Effects」を学べるんですよね。チャレンジするのに、願ってもない環境じゃないでしょうか。

もともとアルバイトは未経験者を雇っていたんです。「動画が好きだけど、実務経験はない」っていう人は結構多いんですよ。それで一年もしたら結構使えるようになるから、スキルを得て辞めていくバイトの子も多いですね。

せっかく教えるのに、辞めてしまわれたらもったいなくないのでしょうか?

若い子たちは僕が言うのも何なんですけど、ほかの会社で社員としてやったほうが良いんじゃないかなって思ったりもするので・・・。After Effectsまで出来ると就職先も広がりますし、うちのバイトでやってきたことを実務経験として書いてもらえれば、必ず就職が決まると思うんですよ。

笑ってもらえたら、仕事はなんでもいいのかもしれない

さきほど、「部長たちがやりたいことをやらせてあげたい」というお話がありましたが、いくつかの事業は社員からの企画で生まれているんでしょうか?

そうですね。実は紹介していない事業もたくさんあります。アイコンや事業概要をペラ一枚で作ってくれれば、ある程度の予算は会社から出しています。

すごく良い環境じゃないですか。

そうでしょうか。そこから生まれてくるものが、もっと活発になってくれると良いなって思うんですけどね。

なるほど、ではもっと上手くいってほしいなと思う事業はありますか?

はじめたばかりなんですが、YouTubeの動画セミナー事業「YouTube集客塾」はやっていきたいです。僕は喋るのが下手なんですけど、社員は喋ったり教えたりするのが得意だから、もっとセミナーをやれば良いのにって思うんですよね。

社長さんが傍目に見ていて思うんだから、説得力がありますね。今後、どのような会社にしていきたいですか?

こういう企画が、あと5倍はあるといいと思ってます。

いろんなことをするのって大変そうだなと思いますが、増やしたいのはなぜなんでしょうか?

一番は、下請けの制作はなるべく少なくしたいから。というか、下請けでも「作って終わり」は本当に減らしたいんです。それこそ、Vtuverのように自分たちでコンテンツを作って、それが皆に評価されて売り上げが上がって――っていうのがベストなんです。

それから僕は性格上、仕事を一個にするのが本当に苦手で、いろんなことをしたいって思ってるんですよね。

ある意味、パラレルキャリアなのかもしれませんね。事業が5倍になった先の目標はありますか?

事業ごとに目標は決めていて、金額的なこともあれば、「言の葉塾」なら全国規模でやりたいのような具体的な目標がゴールなこともあります。 Vtuberだと、YouTubeだけでなくbilibiliにも載せているからイベントを開くと中国から来る参加者もいるんです。そんな風に中国をはじめ、アジアを絡めていけたら楽しいなと思います。

こんなに動画とリアルとの境が曖昧というか、その垣根を一企業で超えるお話って珍しいように思います。

ウェディングにしても、景品にしても、BtoBの社長さん相手にしても、喜んでもらえる声が直接聞けると励みになります。ずっと携わってきた映像が主力にはなるんですけど、笑ってもらえたらなんでもいいかなって気はします。

課題は、いかに仕事を任せられるか

今後新しく仲間を増やすとなったら、どんな人が欲しいですか?

先日デジハリで学生たちと話したんですが、やっぱり考え方が若いなと感じました。うちもディレクターは皆30代になり、僕もいま39歳。もっと若いディレクターと一緒に仕事ができたら、僕らも学べることがあるのかなと思います。

自分たちにない視点を持った人がいいのでしょうか。

そうです。それから、今いる社員は前職からの知り合いだったり、もともと知り合いだったりするケースがほとんどなので、今後はいかに任せられるか。いかに自立している人を雇っていくのかが課題だと思います。仕事を任せるぶん、本当に自由ですから。

どう信頼関係を築いていくかが大切なんですね。では最後に、どんなクリエイターに依頼したいですか?

僕らがまた依頼したいと思うクリエイターは、やはり融通がきく人ですね。どうしても、クライアントによっては最初の話からどんどん変わっていってしまうこともあって、僕らは板挟みになることも多いんです。そうした状況の中で、臨機応変に一緒に考えてくれる人とは、またやりたいと思います。

取材日:2019日年7月10日 ライター:渡辺 りえ

株式会社レティクル

  • 代表者名:代表取締役 松木 徹雄
  • 設立年月:2014年9月
  • 資本金:300万円(2017年2月現在)
  • 事業内容:映像制作事業、Webコンサル事業、ウエディング事業 『笑ウエディング』、ネット広告事業、セミナー事業、EC事業 『景品パラダイス』
  • 所在地:〒170-0005 東京都豊島区南大塚1-60-20 天翔大塚駅前ビル S515
  • URL:http://reticle.jp.net/
  • お問い合わせ先:上記サイトのお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

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