グラフィック2019.08.07

広告という枠を超えてCoolで熱い事業を創出して日本を元気に!

仙台
株式会社comme-nt 代表取締役
Hiroharu Gotou
後藤 広晴

2014年に創業した株式会社comme-nt(コメント)は、杜の都仙台をイメージさせる定禅寺通り近くにオフィスを構えています。広告の企画・提案・制作をメインに、イベント企画・運営などを行い、社長の後藤氏を含む5名のメンバーそれぞれが、広告、イベント関係で実績を持つエキスパートです。会社ロゴの「※」が先で、社名は後から考えたと笑いながら話す後藤氏に、comme-ntを立ち上げるまでのエピソードと、これからの夢について伺いました。

人と接して繋がることを仕事にしたい

起業されるまでのキャリアについてお聞きかせください

私が生まれ育ったのはフルーツ生産で有名な山形県寒河江(さがえ)市です。実家は現在専業農家で、さくらんぼや桃、スモモ、ラ・フランスを作っています。高校を卒業して進学で仙台に来て、建築・設計とデザインを専攻しました。在学中は飲食業を中心に様々なバイトを経験し、人と会話してサービスを提供することが一番楽しいと気付きました。そこから不動産関係の営業として就職しましたが、自分のやりたいこととは違っていたので、広告業界へ転職しました。

かなり違った道へ舵を切られたんですね

学生時代にデザインを学んでいたので、全く関係がないという印象はなかったのですが、ここでもデザイナーではなく、営業を希望して転職しました。入社したのはかなり老舗で、宮城で最初に創立された民放TV局と同時期に始まった会社でした。デザイン部門、撮影部門、印刷部門があり、私は写真部門の営業職で入社しました。レンタル写真の撮影企画やディレクターを担当しながら、フォトコーディネイターとして商業写真の提案営業を行っていました。

所属部門を分社化されたとお聞きしました

ルート営業という形態に物足りなさを感じ始めたころ大型出力機が導入されて、結果、ポスターや看板の制作を行うようになりました。そして、さらにクリエイティブに制作を進めたいと、写真部門の中にデザイン部門を立ち上げ受注を増やしていき、最終的に2006年に写真部門を分社化させました。私自身は28歳でした。

勝っていくための修行を積みたい!

事業独立で留まらず次のステップへ向かわれた理由は?

役員、プロデューサー兼ディレクター、営業と役割が増えていくなか、テンションを高めて挑戦を続け自らを成長させるという、非常に充実した時期でした。仙台の広告宣伝業界自体も元気で盛り上がっていました。しかし、分社して約3年経過したときに、もともとグラフィックをメインにした会社でしたので、Web制作や映像制作、イベント企画という仕事については弱く、「自分自身ももっと勉強しなくては生き残っていけないのでは?」と危機感を持ち始めました。営業として代理店が行える仕事は解っていないと今後は勝負できないという焦燥感に駆られました。

そこで別の会社へ転職されたんですか?

経済的にも安定していた状況を振り切ってのリスタートを決めました。引き留めてくださる方も多かったのですが、それ以上に学びたいという思いが強かったため、退社してイベント制作会社へ就職し、そこでプロデュース部門を立ち上げましたが、もっと幅広く学びたかったので、ここも退社しました。

経験値を増やしていかれた時代ですね

代理店でクリエイティブ部門の経験がある方が社長の会社に入社させていただきました。営業は仕事を取ってくることだけではなく、広告という何かと何かを繋ぐものの一翼を担うことで、クライアントとデザイナーや映像編集者というフィニッシュワークを行う方々を繋ぐ、橋渡しの窓口でもあります。クライアントが満足する広告宣伝を実現していくために動くのが醍醐味です。その一方で自分がプランニングすれば、クリエイターたちはスムーズに動いてくれるのではないかということで、自ら企画も行うようになり、営業からプランニングも含め、徐々に職域を広げていくことができました。

自分の人生をもっと楽しまなくちゃ

ここでも分社化という動きがあったとお聞きしましたが

いよいよプロデュース会社を社内で立ち上げたいと社長に相談していた時、東日本大震災が起こりました。大震災によって、近しい人たちが天に召されたり、自分自身も大変な経験をして死生観が変わりました。自分の人生はもっと楽しまなくては、挑戦しなくてはと大きく意識が変わり、分社化ではなく独立してやってみようと思ったのです。これは大きな変化で、震災がなければ独立はしなかったと思います。昔からNo.2として、社長や慕う上司、会社を盛り上げたい、神輿を担ぎたいという意識が強かったのですが、自らが神輿に乗り担ごうと決心したのです。

現在の事業内容についてお聞かせください

2014年、私が35歳の時に2名で株式会社comme-ntを立ち上げました。事業は3本柱で広告全般、イベント企画・制作・運営、クリエイティブプランニングです。イベント企画運営のエキスパート、音楽イベントのエキスパートも加わり、現在は5名体制です。「仙台フードコンベンション」、「さがえ芋煮まつりin仙台」をはじめ、食をテーマにしたイベントや、「Saikoro」(URL http://saikoro7.com/)という東北を中心とした音楽イベントの企画・制作を行っています。

仙台フードコンベンションについてお聞かせください

仙台フードコンベンションは2009年に始まりました。地元の食材にこだわりをもっている地元の店舗の方々を中心にした食のイベントです。震災前から実施しており、前職から携わってきました。特に震災後からは屋内から屋外へと会場を移し、震災で被害を受けた飲食業界を元気づけたいという思いが強かったです。

 

音楽関係のイベントにも注力されていますよね

地元在住・出身のアーティストに限らず、仙台から新しい音楽アーティストの発信をするということで、これまで、竹原ピストル、チャラン・ポ・ランタンなどをフューチャリングしました。今年の7月14日は東北在住のアーティストを中心とした「CHICA fes」という仙台市営地下鉄の車両基地で行うイベントも実施します。地下鉄で遊びに行こうという意味合いも発信していて、車の渋滞緩和にも訴求しており、一日地下鉄乗り放題チケット付きです。

 

地域と地域を繋ぐという仕事が実現するそうですね

新たに、今年の8月から私の地元である山形県寒河江市のアンテナショップを仙台でスタートさせます。冷たい肉そばなど、寒河江市の産品を使った飲食中心で展開します。そこには、仙台と寒河江の人と人を繋ぐ架け橋となる空間になればという想いがあります。東北大震災の風評被害でさくらんぼ狩りの客足が鈍くなった時、寒河江市からラジオCMの制作を受けたことがきっかけの一つでしたが、実家も支援を受けたことを考えると、これは自分がやるべきだろうと思いお引き受けしました。

「※」から生まれた社名に込められた思い

訪問して真っ先に会社ロゴが目に飛び込んできました

実は会社名のcomme-nt(コメント)は「※」という文字から発想しました。会社ロゴでもある「※」はコメントと読み、「注釈」、「小さくても目立たなくても大事なこと」という意味です。また、「コメント (comment)」の語源はラテン語の「commentum」で、「お互いの心」という意味があります。「※」には米印という読み方もあって、起業するときに広告だけにとらわれず、食に関わっていきたいという思いも含められるなと思っています。

御社の企業理念についてお話ください

人や街はもちろん「見えないもの」を「可視化」させ繋げること、事業を通じて東北、ひいては日本の地域の魅力を高めていく一助となることを目的として、弊社は存在しています。 「地域」は人それぞれの定義が異なっていますが、私の解釈は「故郷」「なくなっては困るもの」、生活圏としての場所です。震災後この意識が明確になって、より地域というものに対する思いが深くなりました。寒河江市、仙台を中心とした東北、広げていくと日本、社会を地域ととらえることもできるかもしれません。
この地域に対して何をもって貢献できているか?何のために仕事をしているのか、何を会社として解決できるのか?ということを問い続けています。会社は社会に生かされていますので、事業を手段として社会の役に立つという目的のために働こうと思っています。

今後の展望、将来のビジョンについてお聞かせください

日本政府が地方創生と言い出してから時間が経ちましたが、まだ実が伴っていない気がします。私が携わる広告は「見たい」「買いたい」「行きたい」などの「~したい」という欲求を掻き立てることがベースです。地域外からのインバウンドとして成立させるために、欲求を掻き立てるコンテンツをPRすること、そのコンテンツが無いなら創り出すことを行いたいです。

また、自分が住む場所以外で所得を得るような、外貨を稼ぐというような感覚ではなく、地域で働き地域でお金を落とすという地域内循環経済システムを作ることを行いたいです。また逆にコンテンツを外に売り出すというアウトバウンドも行いたいです。Cool JAPAN ならぬ「Cool 地方」を創り出すことは、ひいては日本を元気にしていくことに繋がると思っています。これが目指す方向ですね。

これらに取り組んでいけば、多種多様な仕事を行っていくことになり、多様性をもった会社になっていきます。この意識を共有化したいというスタッフが、それぞれの業務を通して生き方の自己実現を果たしていくことができるようになるのも、comme-ntの将来の夢ですね。

一緒に働くスタッフに対してどのようなことを求められますか?

自分は何に感動するのか、何に重きを感じるのかという自分自身の価値観を持ったうえで、目標を持つことが大事だと思います。なんとなくデザイナーやっている、なんとなく広告業界にいたい、ということではなく、会社を通じて何を社会に訴えたいのか?何を社会の役に立って還元したいのか?それをしっかり考えて目標を持つことは必要なのではないかと思います。現状に満足しないことも大切ですね。

あとは情熱!情熱が必要です。みんなでイノベーションを起こしていこうよ!というような気持ちですね。情熱は社内全体に伝染しますから、スタッフが熱量をもっていることが原資で、とても大切だと思っています。

取材日:2019年6月18日 ライター:桐生 由規

株式会社comme-nt / comme-nt, Inc

  • 代表者名:代表取締役 後藤 広晴
  • 設立年月:2014年1月
  • 資本金:3,000,000円
  • 事業内容: パンフレット、広告、ロゴ、ポスター、チラシ、パッケージ等、グラフィックデザイン全般 ・企業、ショップ、自治体等のデザインワーク&プロモーション企画、 WEBサイトの企画、デザイン提案、TV-CM、PRビデオ等の映像企画
  • 所在地:〒980-0821 宮城県仙台市青葉区仙台市青葉区春日町5-27 1F
  • URL:http://www.comme-nt.co.jp/
  • お問い合わせ先:TEL:022-224-5640/FAX:022-263-5612

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