技術と経験の融合で、映像の新しい未来を造りだす。

福岡
株式会社OVER D-LIVE 代表取締役社長 清水 一秀 氏
テレビショッピングで気になる商品を思わず買ってしまった、という経験はありませんか?それはきっと映像を作る側の熱意が観る人に伝わったからです。その熱意を込めて通販番組を本気で作る株式会社OVER D−LIVEは、福岡を中心に活動している映像制作会社です。
2010年の設立から通販番組制作に主軸をおき、現在ではVR(バーチャル・リアリティ)を取り入れた新事業も展開しています。今回は同社の代表取締役社長の清水一秀(しみずかずひで)さんに、通販番組が持つ魅力や、新技術が流入する今後の映像業界についてお話を伺いました。

憧れの映像業界へ。そして出会った“通販番組"の世界

清水さんのこれまでのキャリアを教えてください。

私の出身は埼玉で高校生の頃から映像業界に興味があり、卒業後、映像専門学校に通いました。学校ではテレビ東京で放送されている音楽番組をプロのスタッフと一緒に制作し、その中のある人から声を掛けてもらい映像制作会社に入社。最初はカメラアシスタントとしていろいろな番組に携わりました。その会社はテレビ東京の番組制作が多かったことから、福岡に「株式会社TVQ九州放送」が開局するのを機に福岡に支社を開設しました。
何度か福岡に出張している内に福岡の方々の温かさに触れ、「ここで仕事がしたい」と思うようになり転勤希望を出しました。その後希望が認められ、福岡で仕事が出来ることになりました。

通販番組に携わるようになったきっかけは?

福岡支社時代、通販番組の収録にフロアディレクターとして参加したことがきっかけです。私の現場での仕事ぶりをご覧になっていた通販会社の方が、後日「自社で番組をつくるから協力してくれないか」と声を掛けてくださいました。私も通販会社の方々の番組制作に対する熱に魅了され、「通販番組の世界は成長性が高い」と確信し、事業の中心を通販番組にしていきました。

長く通販番組を手掛けてきた強みは?

今の会社では7年ですが、私自身は23年ほど通販番組に携わっています。その経験から思うのは、通販で物を売ることは店舗で売るのと同じ対面販売であるということ。つまり、この人から買いたいと思うか、この人の言葉は信用できると思うかどうかが大事です。番組に出演する方々の一瞬の表情や笑顔を視聴者は見ています。だから取材する時は本題以外の話もしながら、その方の気持ちや思いが伝わる空気感を作り出し、本当に良い所を抽出するようにしています。

最近、番組自体は形にはなっていても作り手の“熱”が見えないということ感じることが有ります。とは言え、こうしたら良いという正解もありません。だから、コミュニケーションをしっかりとって、言葉だけじゃなく表情や笑い声などにも、“本当”を引き出す番組づくりを心掛けているということが弊社の強みです。

現在の会社を立ち上げることになったきっかけは?

2010年に独立して今の会社を立ち上げました。最初は自分が社長なんて考えてもいませんでしたが、福岡で知り合った経営者の方々に触発されました。それは、食事の席の雑談で、ある経営者の方が「こんなことを考えている」と熱を持ってご自分の考えを話されていたのですが、その内容が一ヵ月後には設計図や企画書になっていたことがあり、それを見て「経営者は熱とスピードが大事だ。それはディレクターも同じ。自分にも可能性があるかも知れない」と思ったからです。

すべての出会いが今に繋がっていますね。

本当にそれしかないですね。通販番組の収録で私の姿を見てチャンスを下さった方や、 出会った経営者の方々から教わったことが、今の自分の根っ子になっています。

経営者として悩んだ時期。出した答えは「押し付けず、自由に」

現在のお仕事について教えてください。

映像制作では通信販売系の番組制作が中心で、全体の約8割を占めています。他にもテレビ番組やCMの制作も手掛けています。
内容に拘わらず「この人達と一緒に仕事ができたらおもしろい」という思いを大事にしています。映像をつくるのは大変ですが、情熱を持っている方と仕事をするのは、やはり楽しいものですね。

それでは、これまでに大変だったことは?

会社に人を定着させることです。私は家族的な会社にしたいという思いがあったので、以前は、人が離れることへのショックが大きかったです。会社を続けるのが無理だと思った時もありました。でも、先輩の経営者の方の言葉に目が覚めました。「自分にとっての良いはそれぞれにある。その人たちにあなたの良いを押しつけてはいけない。賛同してくれる人も100%同じ考えではない。何割か同じで残りは違う考えだから。でもその違いが面白くなってくるんだよ」と。それを聞いて6割は一緒に仕事をして、4割は自由にしようと。そうすることで新しい情報が入るし、私が取りこぼした情報も別の誰かから入ってくることに気付かされました。

VR技術が新たな映像の可能性を生み出す

新しい事業について教えてください。

今はVRを使った映像制作に力を入れています。2014年から始めた新しい事業ですが、これもスタッフの「今、こういう映像が開発されています。やってみたいですね!」という一言から始まりました。その頃、FacebookやYouTubeではまだ、VR映像を見ることができなかったので、手軽に見てもらえるように視聴用のVRアプリ「カメレオン360」(http://www.od-ch360.com/)を作りました。定点撮影になりがちなVR映像を映像制作会社という強みを活かしてしっかりカット割りしながら制作しているのが特徴です。最近ではJR九州「特急かわせみやませみ」の車内で楽しめる観光映像、大分県の観光誘致用映像、福岡市とJAF(一般社団法人日本自動車連盟)の交通安全教室用映像、「釣り具のポイント」の人材獲得用映像を手掛けています。このVR映像によって、合同会社説明会での着座率が上がったと好評です。

なぜVR事業をはじめることに?

どの業界もそうでしょうが、映像業界ももの凄いスピードで進化、変化しています。
新しい技術を早く取り入れることで先行者利益を確保できるのと同時に、今の事業への親和性が高いと感じたからです。SNS等を利用し通販の形も変化していくでしょう。
ひょっとするとVRで対面販売の番組が出来るかもしれません。
5年後、10年後の変化に対応する手段の一つとして、新たにVR事業をスタートさせました。

軌道に乗り始めたVR事業ですが、今後の展望は?

VRを使ったライブ映像の配信です。例えば、発展途上国にある世界遺産や、容易に行けない絶景スポットなどにカメラを設置してリアルな映像を“生”で見ることができる課金サービスです。その事業を通して、現地への貢献と収益にも繋げたいとも思っています。実は、私がこの事を考えるようになったのには理由があります。20数年前ですが、テレビ番組の仕事で当時はまだ軍事政権だったミャンマーに行きました。その頃、日本国内での報道は好意的なものではありませんでした。緊張感を持って現地に入りましたが、アテンドしてくれた政府の方、国民、見る物すべてが伝わってくるものと違ったんです。「ミャンマーの人も自分たちも、大切な家族を守るためにその環境下で必死に働いているだけで何も変わらない」と、じゃあ何が違うのか、と考えたら環境や貧困だと思いました。帰国してしばらくは何をして良いのか分からず過ぎましたが、あるイベントでカンボジアの地雷撤去NPOブースがあり、そこの映像ボランティアとして現地に行ったことが具体的な考えに結びつきました。幸い私たちの仕事は発想力で勝負できます。貧困により教育を奪われた人達にもチャンスが生まれ、負の連鎖を止める事が出来る。この事業が実現すれば、映像の新しい価値を生み出せると考えています。

協力して造り上げたものは一人の力より遥かに大きい。だから、映像という世界でも人間関係が大切

これから映像業界を目指す方へのアドバイスをお願いします。

昔に比べて映像業界を志す人が減っています。その反面、YouTubeのように誰でも簡単に映像を発信できる場があるため、映像を使う選択肢はこれからもどんどん広がるでしょう。情熱を持っておもしろいものを作り、それをネットに上げれば良くも悪くも評価される。そこに価値があると企業が感じれば仕事にも繋がる。そう考えたら、映像を使った分野は非常におもしろい。最初からクリエーターとしてチャレンジするスタイルもありますが、制作会社に入って経験を積んでもいい。いろんな選択肢があると思います。

最後に、社員に求めるものは?

いつもスタッフに言っていることは、相手に対して丁寧に接するということです。例えば、キャッチボールをするなら、先ず自分から相手がとりやすい優しい球を投げるということ。丁寧に投げれば丁寧に返してくれる。そういうコミュニケーションを繰り返すことで人間関係ができ、そこから生まれるものは一人の力よりも遥かに大きい。だから、一生懸命に相手のことを考えるのが一番です。そういうスタッフと一緒に仕事をしたいと思います。そして、会社に100%迎合せず、自分の考えをしっかり持って仕事をして欲しいです。

取材日:2018年1月24日 ライター:井みどり

株式会社OVER D−LIVE

  • 代表者:代表取締役社長 清水一秀
  • 設立年月::2010年10月
  • 資本金:900万円
  • 事業内容:通販番組・TV番組・VP・CF等映像の企画制作及び編集業務、ポストプロダクション業務、広告代理店業務、イベントプロデュース、人材派遣業務、デジタルコンテンツの企画制作および配信
  • 所在地:〒810-0075 福岡市中央区港2-7-11-4F
  • TE:092-738-0373
  • URL:http://www.over-dlive.co.jp/
続きを読む
TOP