プロダクト2018.02.07

「恐竜」グッズの企画・販売で地元の人が県外の親戚や友達に自慢したくなる商品を創る

福井
株式会社ザウルス
代表取締役兼ディレクター
木村徳宏 氏
子どもから大人まで、その巨大な姿で多くの人のロマンをかきたてる恐竜。恐竜たちはなぜ巨大化したのか、どうして恐竜は絶滅したのか。太古の生き物の謎は人々を引きつけます。福井県は日本最大の恐竜化石発掘現場があることで知られています。県内で最も多くの化石が発見されている勝山市では、日本初の恐竜博物館もあります。恐竜を活かしたデザイン商品の開発に取り組む株式会社ザウルスの木村徳宏(きむら のりひろ)さんは、恐竜にどんな夢を託すのでしょうか。

商店街に育ち、デザインに興味を抱く

福井県勝山市のご出身だそうですね。

福井の山合いにある勝山市の商店街で生まれ育ちました。元々祖父が機屋(はたや)を経営していましたが、事業を立て直すために、祖母が商店街に呉服屋を開きました。そこに嫁いだ母は着物の縫製を学び、一級技能士の資格をとり、今でも現役で、縫製の仕事を続けています。 父は地元の染色会社で技術者として働いていました。

起業までの経緯を教えてください。

自宅の隣が書店だったこともあり、本が大好きでした。それでデザインに興味を持ったのです。デザインの中でも、モノづくりより情報に関わる仕事に就きたいと考え、高校卒業後は大阪にあった専門学校に入学、グラフィックデザインコースのエディトリアルデザインを専攻しました。卒業後は、大阪府吹田市のタウン誌制作会社に就職、7年間編集を担当しました。

なぜ、タウン誌の制作会社に就職されたのですか?

専門学校の同期の中では、メジャーな広告代理店やデザイン会社に就職する人も多かったのですが、もともと商店街育ちで地域密着型のスタイルに惹かれていたことと、インターネットが一般化する直前の時期で、誰もがメディアを持てる時代が来たと感じていましたので、より自由に動けそうなタウン誌の制作会社を選びました。編集、レイアウトが中心でしたが、記事を書いたり、イラストを描いたり、写真を撮ることもありました。小さな会社でしたので、ホームページ作りも独学で覚えて何でもやっていました。

30歳目前に、Uターンを決意

その後、出身地の福井へUターンされたのですか?

長男ということもあって、ひと区切り着いたら地元へ戻ろうと思い、30歳を目前にタウン誌の制作会社を退社しました。Uターンする前にもう少しだけ、違う経験がしたいと思っていた時に声を掛けてくれる人がいました。当時兵庫県の淡路島で開催されていた淡路花博(ジャパンフローラ2000)でアルバイトをしないかと誘われたのです。半年間、おみやげ品のデザインをしながら、売店でヤシの実にドリルで穴を開けてジュースを売っていました。その時は、後にキャラクター商品を自分で企画、販売するとは思ってもいませんでした。

そして福井に戻られたのですね。

地元の老舗広告代理店に就職しました。ここには9年在籍し、賃貸情報誌の編集と住宅チラシの制作を担当しました。フリーで仕事をしたいと思っていましたので、経営者が代わったのを機に退社、個人事業主として独立しました。その後、ウェブ制作に活路を見出しました。

独立し、歯科医に照準を絞ったウェブ制作をスタート

独立後、仕事は順調でしたか?

始めた月に、なんとか食べていけるだけの売上を確保できました。医療機メーカーに勤めている友人を介して、歯医者さんや病院系のウェブ制作を中心に受注を募り、比較的経費をかけやすい業種に特化し早期に安定化を実現しました。もともと私は編集者的な仕事をしてきましたので、歯科の業界紙などを研究する事で、今後の歯科医院の進む方向性が学べる……。といった情報収集のセンスが鍛えられたと思います。

これまでの地域密着の編集センスが、ウェブ制作に活かされたのですね。

クライアントの過去、現在、未来を感じ、確実に積み上げ続けられる価値を見つけだす事が、私のホームページ作りの真骨頂です。まずはその業態を調べ上げ、綿密なヒアリングを重ねます。クライアントの思いだけでなく、同業者の動向をリサーチし、現状を客観的にお伝えする事でストロングポイントに気づき、ようやく最初に手を付けるべき点が見えてきます。

資金の少ないお店であっても、インターネットを駆使して情報発信する事でカバーできる事も多々経験してきました。20年前にウィークリーホテルのホームページに外国人客用の英語ページを作った事で、すごく感謝された事を今でも覚えています。当時はとても画期的な事でした。オーナーが英語に堪能であった事に目を付け提案し制作してみたところ、オーナーの海外の知人からも評判が広がり、すぐに反応がありました。オーナーの語学力とコミュニケーション力を活かす事ができて、外国人客もリーズナブルで安心できる宿泊環境を手に入れられます。皆さんが幸せになれる事には間違いがありません!そんな価値の発掘体験が私のモチベーションを支えてくれています。

地域資源の「恐竜」に将来性を感じて法人成り

個人事業から株式会社ザウルスを設立したきっかけを教えてください。

出身地である勝山の知人の紹介で、元商社マンの富川正英と出会いました。その後、彼が運営していた通販サイトを手伝うことになります。彼は自分でPC関連のグッズの輸出入に携わっていましたが、将来は一緒に会社を運営しようという話をしていました。そうした中で、福井県を代表する地域資源である「恐竜」に関する観光事業の将来性をともに感じていました。

そこから、恐竜ビジネスが始まるのですね。

恐竜をコンテンツとして生かすためのアイデアを探る中で、福井県の公式恐竜ブランド「Juratic」(ジュラチック)のメインキャラクター「ラプトくん」の活用を考えました。キャラクター商品の展開に向けて、迷うことなく富川とともに会社を立ち上げ取り組んでいくこととなります。

ハローキティとのコラボに許可

御社がキャラクターグッズの企画・販売を担うことになった経緯を教えてください。

2016年1月に、「Juratic」のPRとともに、県内事業者が恐竜を活用したビジネスを展開できるよう、福井県が株式会社サンリオと協議し、「Juratic」とハローキティのコラボレーションが誕生しました。そこで、県にキャラクター使用の許可を申請、商品案をサンリオや権利を所有するデザイン会社に提出し、許可を受けて製造・販売にこぎ着けることができました。

トートバッグを商品開発するに当たってのデザインのポイントを教えてください。

2017年8月に、「Juratic」x ハローキティのコラボによるトートバック全6種を製作し、出荷を開始しました。 ターゲットは女子高生から30代の女性をイメージしています。トートバッグは生地の色を活かすために単色で企画し、デザインし直して許可をいただきました。キャラクターを強調するために、大きな図案を採り入れました。単色のデザインや大きな図案は高校生など若い世代向けに、また「Juratic」の仲間とハローキティが集合したデザインは明るく、ママさん世代やおみやげ用として買いやすいものをイメージしています。実際に流通してみて、縦型のファスナー付きが意外にも好評だったことや、もうワンサイズ大きなものがほしいなど、いろいろなご意見をいただいています。現在は、順調に商品が動いています。

トートバッグに続く第2弾商品は?

2017年12月24日には、「Juratic」 xハローキティのぬいぐるみとマスコットの販売を開始しました。「Juratic」のラプトくんをかぶったハローキティの、ぬいぐるみ20cm・マスコット10cmの2サイズです。

ぬいぐるみを選んだ理由はなんですか?

リサーチを行い、付加価値をつけて一定の価格で販売できる商品を考えました。ラプトくんのぬいぐるみはすでに福井で販売された実績がありましたので、そこにハローキティとのコラボレーションが加われば、ヒットは間違いないと確信しました。商品化までの調整に時間がかかり、トートバッグが先行しましたが、ぬいぐるみのアイデアが先にあったのです。

販路は広がりましたか?

恐竜博物館のミュージアムショップ「DINO STORE(ディノストア)」、北陸自動車道の南条サービスエリア上り、福井市内のホテルリバージュアケボノ、勝山市観光まちづくり株式会社が運営する長尾山レストハウス、県庁地下の生協などで販売しています。東京・南青山にある福井県のアンテナショップ「ふくい291」にも売場を提供してもらっています。今後は、エリアごとの拠点をはっきりさせて、管理をしていかなければと考えております。しかしながら、売場がまだまだ少ないというのが現状でして、人が動いている場所に置いてもらう、またそういった場所を発掘していくのもこれからの課題だと思っています。

「福井県を盛り上げる事業全て」が当社の事業

今後キャラクター事業についてはどのような展開を考えていますか?

私個人としては、福井県に軸足をおいて恐竜キャラクタービジネスの更なる展開に力を入れていきたいと思っています。今回のコラボを皮切りに、コレクターの方が欲しくてたまらなくなるような商品展開に発展していければ大成功だと考えています。

事業内容に、「福井県を盛り上げる事業全て」と挙げています。どのような活動を目指しますか?

デザインやクリエイティブな能力が高い若者はどうしても東京に行ってしまうんですね。そんな状況を何度か目のあたりにする中で、誰もやらないなら、自分がやるしかないと思いました。福井県に住む若者たちが、県外の人に自慢して見せられるモノづくりを進めたい。ハローキティのようにメジャーなキャラクターやツールを利用して、地元を発信したい。メジャーなコンテンツは注目度も高いですから。しっかりとメジャーの注目度を利用しながら、福井独自の商品を開発し、「自分もやってみたい」と若い人を感化させるような活動や事業に取り組み、福井を盛り上げていきたいと思っています。

取材日:2017年12月15日 ライター:加茂谷慎治

 

株式会社ザウルス

  • 代表者名:代表取締役兼ディレクター 木村徳宏
  • 設立年月:設立年月:2015年4月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:事業内容:総合商社・キャラクターグッズ企画・販売・OEM代行
  • 所在地:〒910-0265福井県坂井市丸岡町朝陽1丁目211-3
  • URL:http://www.zaurus.jp/
  • お問い合わせ先:MAIL)info@zaurus.jp

 

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