新たな価値をモデリングして海外とも取引していきたい

福岡
株式会社ModelingCafe 福岡支社代表 北田栄二氏
モデリングに特化したCG会社として、2012年に東京で創業した「株式会社ModelingCafe」。数々の有名な映画やアニメ、ゲームなどのモデリングを手がけており、業界でも一目置かれる珍しい存在だ。2015年4月には福岡オフィスを開設。今回は、国内外で活躍してきた福岡支社代表の北田栄二さんに、モノトーンのスタイリッシュなオフィスでお話を伺いました。

海外に出て驚いた、日本のワークスタイルとの違い

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まずは北田さんが入社されるまでのことを教えてください。

私は大阪出身で、専門学校で4年間学んだ後、建築パースのCGを作る会社に4年勤めました。もともとエンターテイメント系のCGをやりたいと思っていたのですが、当時はほぼ経験者採用しかなく、建築系で経験を積む傍ら、自分の作品を作り続けました。 私が特に衝撃を受けたのは、ファイナルファンタジーⅦの3DCGでした。そこで、上京してスクウェア・エニックス ビジュアルワークスへ移籍。映像部門でモデリングやテクスチャーを担当しました。やりがいはあったのですが、結婚して子どもが生まれたのに、とにかく仕事が忙しくて家族との時間が持てない。どんどん成長する子どもを傍目に、自分は同じプロジェクトで働いていることに危機感も感じて、キャリアアップと家庭生活のために海外で勝負しようと決意しました。32歳のときでした。 2010年からオーストラリア・シドニーのAnimal Logic、Dr. D Studiosに勤務、2011年11月にシンガポールのDouble Negative Visual Effectsへ移籍しました。主に手がけたのはハリウッド映画のCGです。

海外での仕事はいかがでしたか。

最初に驚いたのは、ワークスタイルですね。日本の現場は昼前に出社して深夜まで作業するのが当たり前でしたが、シドニーの会社では朝9時から18、19時くらいが勤務時間。700人ほどの優秀な人材が集まる会社で、みんなその時間内にタスクをしっかりこなして帰宅していたのです。ですから、私もこれまで1日12時間で仕上げていたタスクのクオリティを維持しながら、1日8時間に短縮しなければならない。いろいろ工夫しながら、徐々にその制作スピードに追い付けるようになりました。 それから、日本と海外ではCGの技術に大きな差があることも実感しました。海外では、プロジェクトごとにチームが変わってもノウハウを蓄積していけるような進め方をしているのが印象的でした。

その後、帰国されたのはなぜでしょう。

子育ての環境を最優先に考えました。子どもが小学校へ入学するにあたり、そのまま卒業まで海外にいるか、それとも帰国するか、妻と話し合って2014年11月に帰国しました。

暮らしやすい福岡で、支社の立ち上げに関わる

帰国にあたり、何か構想はありましたか。

縁もゆかりもないのですが、福岡で暮らしたいと考えていました。ダウンタウンがコンパクトにまとまり、海や山が近いというロケーションがとても魅力的で、シドニーやバンクーバーと似ている気がします。それに、通勤にかかる時間が短く、生活や育児のストレスも少なくて、心に余裕を持って暮らせそうだと感じていたんです。 そんなとき、ModelingCafe代表の岸本に声をかけられ、福岡オフィスの立ち上げに関わることになりました。本当はフリーで活動するつもりでしたが、会社に入ればより多くの案件に携わることができます。それに、もともと海外で得た知識や技術を日本の現場に還元したいという気持ちも大きかったので、入社を決めました。

ModelingCafeへ入社されたのはいつ頃ですか。

2014年11月に帰国して、2015年1月に入社。福岡でオフィスや人材を探して、福岡オフィスを正式に立ち上げたのは2015年の4月です。スタッフは東京から2名来て、こちらでも採用し、今は7名です。

モデリングに特化して、海外の案件も受注したい

『Maya実践ハードサーフェスモデリング プロップと背景から学ぶワークフロー』北田 栄二著(株式会社 ボーンデジタル)

『Maya実践ハードサーフェスモデリング プロップと背景から学ぶワークフロー』北田 栄二著(株式会社 ボーンデジタル)

御社が創業するまでの経緯を教えてください。

代表の岸本は、総合映像プロダクションの株式会社デジタル・フロンティアで働いていました。そこで働いていた仲間4人で2012年にこの会社を興したそうです。今は30名ほどのスタッフが働いています。

御社の特徴や強みを教えてください。

ひとつは、モデリングに特化したCG会社であること。建築パースやエンターテイメント全般を手がける会社はありますが、これだけとがってモデリングに特化した会社は、世界を見渡しても他にないと思います。あらゆるジャンルのモデリングに対応できます。そしてもうひとつ、コンセプトデザインからモデリング、テクスチャー、ルックデブまで一括で企画・提案できるのが当社の強みです。

御社はどんな仕事を手がけられてきたのでしょうか。

設立から3年で、一例として『アップルシードα』『遊戯王ARC-V』『るろうに剣心』などを担当してきました。私が入社した後に手がけたのは100%東京からの仕事で、まだ詳細を明かすことはできませんが、フルCGの長編映画、実写とCGをあわせた映画、CMなどがありますね。

モデリングの面白さはどこにありますか。

二次元から立体的に起こすことです。二次元では見えないディテールまで起こし、相手に「あっ」と驚かれるような作品に仕上げるのが醍醐味ですね。 CGをいかに本物のように見せるか、説得力のある作品にできるかどうかが勝負です。説得力のある作品にするには、その物についてしっかり調べて、構造を理解することが大切。ただ単に立体にするのではなく、実物に見せることが重要なのです。写真から起こせば、だいたい誰でもある程度のクオリティの作品ができるのですが、絵から起こすと圧倒的な技術力の差が出ます。

今後の展望をお聞かせください。

会社として、これからは海外の案件も受注できればと思っています。そのために今は実績を積み重ねて、準備を進めているところです。そして、九州支社を軌道に乗せることが私の大きなミッションです。 一方で、海外に通用するデジタルアーティストを育てたいと思っているので、社内の人間を育てつつ、社外でもセミナーを開催しています。日々変化するモデリングの手法を世界基準で研究して、発表していくことも考えています。今年2月に『Maya実践 ハードサーフェスモデリング プロップと背景から学ぶワークフロー』(ボーンデジタル)を出版したのも、自分が海外で学んだハリウッド流のCG制作のノウハウを、日本の業界に伝えたい還元したいという思いからでした。

好きなこと、やりたいことは貪欲に追求しよう

北田さんが仕事をする上で心がけていることはありますか。

即断即決ですね。仕事でもプライベートでも、スピーディにやる・やらないを考えて、やると決めたら、その日からでもすぐに行動します。行動力がその後を拓くカギだと思いますね。

では、諦めも早いほうですか。

いえいえ、やりたいことは粘りますよ、B型ですから。一番働きたかったニュージーランドの会社にはこれまで4回応募しましたが、タイミングが合わないままで…。まだ諦めきれず、いつか単身赴任で短期のプロジェクトに参加できればと考えたりしています。

最後に、クリエイターにメッセージをお願いします。

私と同じように、この業界は映像やゲーム、アニメなどが好きで入ってくる人が多いと感じます。その好きなことだけを追求していけばいいのではないでしょうか。私自身、専門学校の2年生まではあまり真面目に学んでいませんでしたが、3年でスイッチが入り、好きなロボットの3D化ばかりしていました。それは無駄になっていないと思います。 CGやモデリングの世界は日進月歩で、次々と新しい技術が入ってきて、年を取っても学び続けなければなりません。いつまでも技術を向上させてモチベーションを保っていくためには、やはり好きという気持ちが大きな原動力になると思います。

取材日:2015年8月14日

株式会社ModelingCafe

  • 代表取締役: 岸本浩一
  • 設立: 2012年7月
  • 資本金: 9,000,000円
  • 事業内容: 映画・アニメ・ゲーム・遊技機・CM・その他CG作品のモデリング、プロダクトモデリング、 フィギュアモデリング、キャラクターデザインなど
  • 本社所在地: 東京都渋谷区鴬谷町7-3 トミー・リージェンシー301
  • 福岡オフィス: 福岡県福岡市中央区今泉1-12-8 天神QRビル505
  • 本社TEL: 03-6416-5933
  • URL: http://modelingcafe.co.jp/

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