WEB・モバイル2022.10.19

きっかけは、百貨店の展覧会。論理的なデザインで様々な分野の思いに寄り添い、課題を解決

福岡
シーグレープデザイン合同会社 代表/アートディレクター
Jiro Shibayama
芝山 次郎

グラフィックやWebのデザイン、ブランディング、イベント運営など、デザインを軸に幅広い事業を展開する、シーグレープデザイン合同会社。東京でキャリアを積んだ芝山 次郎(しばやま じろう)代表は、独立して13年目の2009年に地元、福岡に戻って創業。社内事業だけでなく、専門学校の講師も務めています。一つの場所に安住せず、「もっと考えられるデザイナーを増やしたい」と将来のデザイナー人材を育てるべく、果敢に挑戦し続けています。そんな芝山代表がデザイナーを目指したきっかけは、浪人中にふと立ち寄った百貨店の展覧会でした。

浪人中に偶然見た展覧会で衝撃 進路を変更しデザインの道へ

芝山さんがデザイナーを目指したきっかけを聞かせてください。

高校を卒業して浪人が決まった春、たまたま福岡の百貨店で有名なアートディレクターさんの展覧会を見たのがきっかけです。それまで私はサッカーひと筋で、普段絵を描くこともなく、デザイナーがどんな仕事をするのかも知りませんでした。でも、その展覧会は、全ての作品に説明が添えられていて、論理的にデザインが作られていることがよく分かり、めちゃくちゃ面白かったんです。それでデザインを学びたいと思い、進路変更して千葉大学のデザイン工学科に進学しました。

東京で3社を経験 焦燥しながらもがむしゃらに働き、地元・福岡で独立

偶然の出会いから始まったのですね。卒業後はどうされたのですか?

東京でまずは広告代理店、次は個人事務所で、それぞれ1年ほどデザイナーとして勤務しました。ただ、どちらも思ったように経験が積めず、かなり焦りが募りました。そして3社目の広告制作会社で、ようやくここで頑張れば力がつくと思える環境に巡り合いました。大半は大手代理店からの仕事で、私が担当したのは新聞をはじめ、紙モノのデザインがメイン。睡眠時間を惜しんで働き、やりがいも感じていました。
30歳を前にして、次のステップに進もうと決意しました。将来的には地元の福岡で独立するつもりだったので、2008年末に福岡に帰りました。ただ、独立するには何のツテもなく、いったん就職しようかなと求人を見たけれどピンとくるところがなくて。長く知り合いだったベテランのデザイナーさんに作品を持参して相談したところ、「自分でやったら」とアドバイスされました。それで、2009年3月に個人事業主として創業しました。

ツテがないところから、どのように仕事を増やしていったのでしょうか?

そのデザイナーさんが事務所に間借りさせてくれて、自分の仕事先を紹介してくださったんです。本当にありがたかったです。新聞のチラシや食品系の仕事から始めて、そこからいろいろなご縁が広がっていきました。独立する時に、お客さんと直接やり取りできる仕事をしようと決めていました。相手の顔が見える仕事がしたかったからです。

しばらくは個人事業主として活動されていたのですか?

はい。12年ほどは個人事業主で、シーグレープデザインを設立したのは2021年です。人手が必要な時はアルバイトやパートで手伝ってもらうことはあったのですが、本格的に人を雇用したのは5年ほど前です。
今はスタッフ5人と、ほかにも多くのクリエイターの方々に協力してもらいながら仕事を進めています。

あえて特化せず、多様な分野で力になれることがやりがい

現在の事業内容を教えてください。

デザインを軸として、幅広く手がけています。もともと私はグラフィックやエディトリアル、パッケージデザインの経験が豊富で、ブランディングや、Webデザインも行ってきました。さらに営業スタッフは、前職で商業施設の販促企画や運営をしていたため、企画プロモーションやイベント運営、SNSの運用、ビジネス支援までと幅が出てきました。加えて、今のオフィスは編集プロダクションとシェアしていて、編集やライティング、も連携して取り組むことができます。

カバーできる分野が広いですね。具体的な実績を教えてください。

ホームページでご紹介している案件として、「ライターマガジン」「carePERSON」「保育百華」など専門誌を丸ごと1冊制作したり、スポーツイベントのシンボルマークからポスター、ゼッケン、応援アイテムなど一式をデザインしたりしています。また、「美味伊都」(https://0831umaito.studio.site/)という生産者に寄り添った青果店の開業にあたって、ブランディングからデザイン全般を担当しました。具体的に公表できない案件が多いのですが、商業施設の販促ツールやリクルート用のツール、行政の仕事なども請け負っています。

得意な分野や強みはどんなところでしょうか?

それが、あえて何かに特化しないように意識しているんです。確かに独立した当初から、何かの分野に特化した方がいい、そうしないと仕事が取れないと言われ続けてきました。でも、私はデザインという仕事を通してさまざまな分野の人と関わることが楽しく、さまざまな人の力になれることにやりがいを感じています。ですから、特定の分野に絞ったり、特化してPRしたりはしていません。

顧客に寄り添い、最適な手段探る 大切なのは「お客さんとしっかり話すこと」

なるほど。では、会社として大切にしていることを教えてください。

私たちは、お客さんとしっかり話すことから始めます。例えば「チラシを作ってほしい」と相談を受けても、よくよく話を聞いてみると、もっと別の手段の方がいいということもあります。お客さんがチラシを作りたいという背景には、何かしら伝えたいことや解決したい課題があるはずです。そこを一緒に紐解き、ベストな方法を提案したいと考えています。単に言われた通りに作るのではなく、お客さんに寄り添い、デザインの力で課題を解決して、目標を達成したらみんなで大いに笑いたい。「寄り添う・挑む・笑う」が弊社のミッションです。

仕事をする上での喜びややりがいは、どんなところに感じますか?

現在は、私を含めてデザイナーが5人。5人体制になったことで、いろいろな側面からの提案が可能で、何でも作ることができるようになり、とても楽しいです。デザイナーという仕事は、その人が育ってきた環境や背景、好きなもの、考え方などがそのままデザインに表れる気がしていて、人が増えればバリエーションも増えます。さらに営業担当も入ってくれたことで、どんどん攻めていきたいと思っています。

今後の展望や目標について教えてください。

弊社くらいの規模で営業スタッフがいるのは、非常に珍しいケースでしょう。これまでは私が1人で営業をしていて、九州内ではこれ以上、急激に受注が伸びることはないかなと感じていました。それで、私がいた東京や営業担当者の地元である大阪、さらにこれまでとは違う分野にも仕事を広げられたらと思い、この4月から営業を頑張っているところです。

論理的に考えられるデザイナーを育てたい 「人に喜ばれ感謝される、素敵な仕事」

専門学校の講師も務められているそうですね。

はい。週1回、専門学校で講師をしています。デザイナーを目指す若者たちがたくさんいるのですが、一方で、なかなか仕事に就けず、せっかく就職してもきつくてすぐに辞めてしまうという現実があります。デザインはすごく面白い仕事なのに、もったいないですよね。
デザインを単なる感覚ではなく、意図を汲み取りながら論理的に考えられるようになれば、仕事はもっと楽しくなるに違いないと信じています。
デザインって、相手のことを思い、仕事の大小にかかわらず人に喜ばれ感謝される、すごく素敵な仕事なんです。だから、社内でも専門学校でも、しっかり考えられるデザイナーを育てたいというのが私の生涯のビジョンです。
今はいろんなツールが発達してきて、誰でもデザインができる時代になりました。だからこそ、プロとして鍛えるべきは考え方なんです。お客さんの思いを叶えるために、自分の頭でしっかり考えてデザインする。言われたままに作るのではなく、もっと上流から関わっていける人が増えれば、デザイナーという職業自体の価値も上がっていくと考えています。

一緒に働くスタッフに対して、会社としてはどんなことを求めますか?

デザイナーでも営業スタッフでも、お客さんの思いに寄り添い、しっかり考えて、ベストなカタチにできるように挑み続けてほしいと思います。そして明るく楽しく、自分の持てる力を全てお客さんに向けて発揮できるような環境をつくることが、私の役割だと自任しています。そのために私自身も成長していきたいと常に意識しています。

 

取材日:2022年9月5日 ライター:佐々木 恵美

シーグレープデザイン合同会社

  • 代表者名:芝山 次郎
  • 設立年月:2021年5月(創業2009年)
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:グラフィックデザイン/エディトリアルデザイン/CI ・ VI開発/webデザイン
  • 所在地:〒810-0074 福岡市中央区大手門2-9-30 PondMumK4 203
  • URL:https://seagrape-design.com/
  • お問い合わせ先:092-688-5770

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