WEB・モバイル2022.09.21

起業したら“あの”アプリが大ヒット スマホアプリで業務改善 追い風はコロナ禍?

札幌
株式会社敷島アプリ開発 代表取締役
Kazuki Sawada
沢田 一樹

大手のソフトウェア開発会社から身を転じ、独立した沢田一樹(さわだ かずき)さん。スマートフォンのアプリケーションなどを開発する、北海道札幌市の「株式会社敷島アプリ開発」を立ち上げました。設立当初に開発した、“ある”アプリを皮切りに、今では、ゴルフ場や飲食店の経費節減や人手不足解消などに役立つアプリを次々と生み出しています。「北海道でiOS技術者が充実している企業はまだまだ少ない」と語る沢田さんに、現在手がける事業や、アプリ開発に取り組み始めたきっかけ、今後の展望などをお聞きしました。

安価なスマホアプリで経費節減 ゴルフ場の新システム開発

現在の事業内容を教えてください

タブレットやスマートフォンを使用したシステム制作に注力していて、飲食店やゴルフ場向けの専用アプリをメインに開発・販売しています。特に地図ナビゲーションと連携したサービスが得意です。
飲食店向けでは、スマートフォンとタブレットを使った、出前のオーダーと配達先へのナビゲーションシステム。スマートフォンからオーダーができて、受注すると配達車に設置したタブレットに配達先への経路がすぐに表示されるというものです。
ゴルフ場向けのものは、ゴルフ場のカート1台1台にタブレットを設置して、そこにコースマップや現在地を表示するナビゲーションシステムです。さらに管理室では全カートの位置を把握し、運行管理ができるようになっています。そのほかスマートウォッチを利用して、保育園の業務効率化システムの制作なども行っています。

営業初日で即決も 会長の“ゴルフ好き”転じ

ゴルフ場向けのシステムは自社で企画されたものと伺いました。企画・開発のきっかけは何だったのでしょうか?

当社の会長から、「価格を抑えたゴルフ場のナビシステムを開発できれば、売れるのでは?」と声をかけられたのがきっかけです。会長はゴルフ好きで、自分でもゴルフ場を持っているんですが、従来のゴルフ場のナビシステムは、専用機器としてハードごとに開発されたもので、とにかく高額でした。
タブレットやスマートフォンの性能が上がってきたこともあり、タブレットでもできるのでは、と挑戦することにしました。
開発から動作確認まで自社で行い、とあるゴルフ場へ営業したところ、初日で即決をいただきました。価格的には、従来のものより大幅に安くできたとはいえ、1ゴルフ場にカートは数十台あるので決して安くはない取引です。それを初日で即決いただいたことはとてもうれしく、手応えを感じました。初めて導入が決まったのが4年前で、現在は北海道内13カ所のゴルフ場で導入いただいています。

開発や運用にあたって大変だったことはありますか?

新しいシステムの使い始めはどうしても不具合が起こるもので、導入から1年くらいはトラブルの電話がきてゴルフ場に駆けつける……なんてこともしょっちゅうでした。特にゴルフ場は夏休みや土日などに人が集中して数百人が一気にナビを使うので、通信量の増大でサーバーが落ちて、システムが全部止まってしまうこともよくありましたから、土日はいつでも電話に出られるようにしていました。
新しいシステムだったこともあってゴルフ場もかなり協力的で「今日は使えないって張り紙をしておきますね」なんてお気遣いをいただくこともありました。お気持ちに応えたくて、寝ないでサーバーの復旧をしましたよ。おかげでスピードには自信がつきました。

好調を支える高い技術力 ネイティブアプリも開発

現在の会社の強みはどんなところでしょうか?

タブレットやスマホアプリのシステム開発に特化していることと、デバイスにインストールして使用でき、動作が高速でオフラインでも使える、ネイティブアプリの開発ができることです。特にiPhoneのネイティブアプリを作れる技術者はとても少ないです。
インターネットブラウザを利用するWebアプリだと、操作のたびに通信が発生したり圏外だと使えなかったりします。当社は、飲食店向けやゴルフ場向けアプリなど合わせて1,000台以上が安定して常時稼働を続けている実績もあり、知識、技術、経験ともしっかり備えています。

開発したアプリが大ヒット 大企業からスカウトも

沢田さんは、もとは技術者だったのでしょうか?

現在は社長ですが、今も自分で手を動かして開発もしますし、会社員時代は大手のソフトウェア開発会社でプログラマーやSEとして働いていました。
当時のIT業界は、“出社したら二度と帰れない”なんて言うくらいとても忙しく、水曜に出社して帰宅が土曜だったなんてことも(笑)。自分が作ったものが完成して思い通りに動くのは楽しいという思いで働いていましたが、あまりにも忙しくてあるときもう手が動かなくなってしまい、これは続けられないなと思ったのです。

それで独立を考えられたのですね。

そうなんです。独立して何を作ろうか考えた際に、ちょうどその頃、日本でもiPhoneが出てきていたので、「iPhoneのアプリを作ったら売れるのでは?」と、挑戦してみたら大当たりしたんです。シャッター音なしで写真が撮れる「無音カメラ」のアプリなんですけど。

無音カメラアプリの第1号ということですか?

そうです。飲食店で料理を撮影するときなどに使えたらいいなと思ったのですが、当然、盗撮などに使われる問題もあるので、傾きセンサーを入れてカメラが傾いていたらシャッターが切れないなどの工夫もしました。

その頃は、ほかにどんなアプリを制作しましたか?

大きなものだと、自治体のゴミ分別アプリや、工事現場で使える工事写真台帳アプリなども作りました。当時はまだアプリがあまりなかったので、「あったら便利かも」「面白いかも」と作ったものが意外にたくさんダウンロードされました。

コロナ禍で吹いた追い風 新アプリで人手不足解消へ

飲食店はコロナ禍で大変な状況が続いていますが、影響はありますか?

テイクアウトや出前の需要が高まっているので、当社にとってはむしろ仕事が増えています。ある飲食店では、出前館さんより当社で作ったシステムでの注文の方が多いという実績もあります。厳しい状況の中でも、需要があって使いやすいシステムを作れば結果はきちんとついてきます。店舗内の省人化を図るお店も多いので、今後もシステムの出番は多いはずです。

今後取り組みたいプロジェクトや新たに挑戦したい分野などはありますか?

飲食店向けのシステムをさらに広げていきたいと思っています。
そのほかに葬儀会社向けのシステムも考え中です。具体的にはこれからですが、葬儀では受付や香典管理で人手にかかるという悩みがあるので、それらを解決できるようなシステムを作りたいなと考えています。

プログラムは手段 「こういうものがあったらいいのに」を目的に

今後の展望を教えてください。

まずは会社を末永く安定させていくことを目指しています。システムを納めたクライアントとも、保守で長く付き合っていくのが理想なので、人を増やして社内体制を整えてきました。社内で定期的にアイデア会議を行い、新しいサービスも考えています。今後もさまざまなシステムを作ってクライアントを増やしていきたいです。

ありがとうございます。最後にクリエイターを目指す方にメッセージをお願いします。

できれば「プログラマーになりたい」ではなく、「もっとこういうものがあったらいいのに」とか「自分だったらこうする」というモチベーションがあるといいですね。プログラムは目的ではなく手段ですから。プログラムを書くこと自体が目的になってしまっては、勉強を続けるのも大変です。
私が大変な仕事を続けてこられたのは、自分で考えて作ったものが思い通りに動いた瞬間がうれしかったからです。自分の好きな分野で、成果が目の当たりにできる立場になることができれば、さらに楽しいですよ。「新しいものを生み出す」という実感をぜひ味わってほしいです。

取材日:2022年8月18日 ライター:小山 佐知子

株式会社敷島アプリ開発

  • 代表者名:沢田 一樹
  • 設立年月:2015年10月
  • 資本金:2,000万円
  • 事業内容:スマートフォンアプリケーション制作、ゲーム制作、ホームページ制作など
  • 所在地:〒060-0001 北海道札幌市中央区北1条西3丁目3番地 敷島北一条ビル6F
  • URL:http://shikishimaapp.co.jp/
  • お問い合わせ先:

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

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