WEB・モバイル2022.06.15

「リモート」をキーワードに、独自性の強いプロダクト作りに挑戦

札幌
しくみ製作所株式会社       代表取締役社長/ディレクター
Takuya Kuruma/Nozomu Yamashita
車 拓哉 氏/     山下 望

2014年の立ち上げ当初からフルリモート勤務で運営し、現在は全国各地にスタッフがいるというしくみ製作所株式会社。「少し未来」の日常を見据え、リモートをもっと楽しく・快適にするサービスの開発や、開発過程で蓄積したナレッジを生かしたプロダクト・ツールの制作などを行っています。2020年には、イベントのオンライン化が進む中で浮き彫りとなった課題や新たなニーズに応えるべく、オンラインイベントに特化した自社サービス「reBako.io(リバコ)」をリリース。起業やサービス立ち上げの経緯、フルリモートだからこそ求められるスタッフの資質などをお聞きしました。

新規事業に強いプロダクト開発を目指してチャレンジ

起業前のキャリアと起業のきっかけを教えてください

車:

私はもともと大学で機械系の研究職を目指していたのですが、ITベンチャー企業の立ち上げに誘われたのを機にIT業界へ。社員1号だったこともあり、エンジニアリングからデザイン、採用までいろいろなことをやりました。その後7年ほど勤めましたが、自分がやりたいことと、会社の方向性が徐々に違ってきたなと感じていました。私は自社の新規事業やクライアントの新規事業の立ち上げに携わる仕事がしたいと思い、2014年に独立しました。

起業にあたって苦労したことはありますか?

車:

大変だったのは、やはり人材集めです。創業メンバーは私ともう1人の2人しかおらず、胡散くさい会社だと思われて誰も入社してくれないのでは?と思い、フルリモート勤務をウリに採用活動をしました。また私は東京、メンバーは大阪在住だったため、遠隔での起業準備には苦労しました。

起業された2014年当時、札幌でフルリモート勤務を導入していた会社は少なかったのではないでしょうか。

車:

そうですね。スタートアップはベンチャーキャピタルなどから出資を受けることが一般的だと思いますが、私たちは出資を受けずに、まずは自分たちでなんとか頑張っていこうと考えていました。とにかく自分たちで稼ぐ能力を付けたかったんですね。そしてそのために重要なのは人材なので、フルリモートという働き方を取り入れました。実際、採用においてとてもプラスに働いたと思います。新しいことに挑戦してくれる面白い人たちが集まってくれました。

札幌で起業した理由は何ですか?

車:

東京にはコネクションがあったので、良くも悪くも頼ってしまうと考え、思い切ってつながりのない場所でやってみようと思ったのです。札幌を選んだのは妻が北海道出身だったからで、私は起業にあたって初めて札幌に引っ越してきました。

現在はどのような案件が中心なのでしょうか?

車:

現在、全体の8割ほどは企業からの受託システム開発案件です。クライアントの新規事業や新企画に関するシステムを、パートナーとして一緒に作っていく案件が多いです。さらに、その過程で出てきた知見をソフトウェアとしてパッケージ化し、SaaS(サーズ)として販売しています。 主に、コミュニティサービス関係や映像配信関係、CMR(顧客管理システム)などのシステム開発が多いです。

みんなが集まってワイワイ楽しめる空間づくりをオンラインで実現

自社サービスの「reBako.io(リバコ)」 も、オンラインコミュニティサービスですね。開発の経緯を教えていただけますか?

山下:

もともとフルリモート体制で事業を始めたので、業務は問題なくできていましたが、社員交流の機会をもっと増やしたいと考えていました。でも、オンラインで社内イベントなどを開くのは難しいなとも。2014年当時でもビデオチャットやテキストチャット自体はあったのですが、飲み会やイベントのように集まってワイワイできるサービスはありませんでした。なので、「みんなで集まって、イベントのようなグループビデオチャットがぱっと開けるグラフィカルなツールがあったらいいな、作れないかな」とずっと考えていました。ですが、当時はリモートワークも一般的ではなく、需要はなさそうだなと構想止まりでした。

それが今では、一般企業でもリモートワークが広がっていますね

山下:

そうなんです。クライアントからも「イベントを開きたいのだけれど、どうしたらいいかな」という相談を受けるようになってきたんです。ニーズがあり、ファーストクライアントも見つかっている状態ならと思って、改めて開発に取り組むことにしました。そうしてできたのが「reBako.io(リバコ)」で、「みんなで集まれるオンラインスペースを自由に作って、イベントを開ける」というサービスです。

「reBako.io(リバコ)」ではどんなことができるのでしょうか

山下:

オンラインのマップ(会場)の中で、アバターを使ってイベントに参加します。マップ上のイベント空間でビデオチャットをしたり、近くの人と個別に会話をしながら全体を見たり、参加者全員向けに配信をしたり、リンクや埋め込み動画を配置したり…、リアルのイベント会場で行われていることはほぼ再現できるようになっています。 合同説明会や展示会など複数の企業が出展するイベントとは特に相性が良いですね。企業がそれぞれブースを並べて担当者を配置し、参加者は各ブースを回って話を聞く。ブースは自由にデザインをしたりボット(人間の代わりに対応する自動化プログラム)を設定したりして、企業ごとの特色を出せるようになっています。

reBako.io」 を使い、オンライン上にオープンオフィスを持っています。

会社総会を reBako 上で行う様子。 会場を映画館風にして、代表の kuruma が今後の展望について話しているムービーを流しました。

「reBako.io(リバコ)」の開発で苦労したことはありますか?

山下:

完全自社の開発案件は初めてに近かったので、分からないことだらけでした。そもそもどう進めていけばいいのか、0から10まで細かいことがすべて大変でしたね。技術的にも難しい部分が多く、特にフロントエンドの画面が最初はとても重たくて、安定性を高めるのが一番の課題でした。裏で使っているビデオチャットサービスもいろいろなものを試してみたり、自分たちで作ってみたり、現在のサービスに行きつくまではかなり苦労しました。「Zoomがスムーズだから対応してほしい」という要望に応えて、Zoomを埋め込むことも可能にしました。

リリースから約1年たち、手ごたえはいかがでしょうか

山下:

利用していただいた企業のリピート率がとても高いです。頑張って作り込んだプロダクトなので本当にありがたいですね。一方で、宣伝の難しさも感じています。企業の方がオンラインコミュニケーションに課題を持っていなければ必要性を感じづらいサービスなので、タイミングが合わなければ宣伝や提案をしても関心を得にくいのです。実際に「reBako.io(リバコ)」を利用したイベントのプレスリリースなどで紹介してもらうことで、これからさらに多くの人に知ってもらいたいです。

「働き方は自分で決める」-フルリモートだからこそ積極性やコミュニケーション能力を重視

フルリモート勤務とのことですが、どのような職種の方がどのような働き方をしているのでしょうか

車:

現在はエンジニアが40名ほど、デザイナー5名、そのほかバックオフィススタッフなどが5名います。スタッフの9割がエンジニアです。普段はプロジェクト単位で動いているので、朝会で集まって打ち合わせを行い、各自で仕事を進めます。スタッフは全国各地に住んでいますが、オフィスの空間がないだけで普通の会社と変わりません。

山下:

もしかしたら、会議は普通の会社よりも多いかもしれませんね。移動がない分、スケジュールはぎりぎりまで詰まっています。

スタッフはどのような方が多いのでしょうか?

車:

エンジニアの特性なのかもしれませんが、粘り強くしっかり考えてくれる人が多いです。会社に対してもアイデアをよく出してくれます。また、フルリモートの利点を活かし、東京から別の場所に引っ越した人も多いです。

山下:

過去には、世界一周しながら働いているなんて人もいましたね。あとは、みんなものづくりが好きだからか、料理にハマっている人も多いですよ。

今後スタッフを採用するとしたら、どんな人材を求めますか?

山下:

極論を言うと、明るくてポジティブな人が良いですね。ほとんど未経験から入社する人もいます。学ぶ姿勢があれば技術は後からついてきますから、採用時のスキルはあまり重視していません。また、フルリモートだからこそ、自分から積極的に参加したり相談したりといったアクションを起こせる人がいいと思います。

車:

小さな会社なので、エンジニアの枠からはみ出して柔軟に動ける方は楽しめると思います。また、山下の言う通りポテンシャル採用が多いので、社内でもみんなで勉強しようという意識が高まっています。スクールに通っていたとか、これからエンジニアに転向したいというモチベーションの高い方が、特に向いているのではないでしょうか。

今後取り組みたい事業などはありますか?

車:

現在取り組んでいる新規事業立ち上げに特化した「つくらないプロダクト開発」をさらに強化し、ブランディングを強めていきたいです。これは、デザイン・ビジネス・エンジニアリングの3つの視点から「何をつくるか」を一緒に考え、構想から開発まで一機貫通でサポートするサービスで、仮説検証において成功の道筋が立てられないと判断した場合には「つくらない」という選択をすることもあります。開発の段階でも機能の優先順位付けをして、不要な開発を避ける提案を心がけているものです。また、新規事業の開発過程において必要なツールの作成も考えています。新規事業開発とそれに役立つツール(ソフトウェア)を、統一したブランドとして展開していきたいと思っています。
またゆくゆくは、いま社内でやっている業務や取り組みをパッケージ化して、フリーランスのクリエイターさんと一緒に進めていける仕組みづくりを目指していきたいです。

取材日:2022年5月10日 ライター:小山 佐知子

しくみ製作所株式会社

  • 代表者名:車 拓哉
  • 設立年月:2014年8月1日
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:ITソリューションサービス
  • 所在地:〒060-0061 札幌市中央区南一条西十六丁目1番323号
  • URL:https://sikmi.com/

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

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