グラフィック2022.01.19

マーケティングを生かした販促DMや企画商品で顧客をサポート

札幌
パラシュート株式会社 代表取締役社長
Takeshi Arao
荒生 猛

創業から70年にわたる歴史のなかで印刷の知識•技術を磨きあげ、時代の変化に合わせてマーケティング企業へと変貌した「パラシュート株式会社」。

長年営業に携わってきた荒生猛(あらお たけし)さんが代表取締役に就任したのは2020年。現在は、前任者が掲げた「Information Design(情報デザイン)」というミッションを受け継ぎ、デジタル社会のなかで強みを発揮できる企業作りに取り組んでいます。そんな荒生さんに仕事への思いや、会社が目指す今後の展開について話を伺いました。

 

人とのつながりを大切にしながら少しずつ販路を拡大

御社の成り立ちと、荒生さまのキャリアについて教えてください。

東京の凸版印刷株式会社に勤務していた、初代代表の花井日出夫(はない ひでお)が、終戦後の1950年、北海道に引き上げる際にのれん分けという形で「札幌凸版印刷株式会社」として立ち上げたのが始まりです。

活版印刷からスタートし、時代とともにオフセット、デジタルへと進むなか、マーケティング企業へと事業を変え、おかげさまで2020年に創業70年を迎えました。

私は以前、製版会社で営業をしており、札幌凸版印刷はお得意先の一つでした。お付き合いをするなかで経営層から声をかけていただき、1986年に入社しました。入社してからも営業一筋で働いてきました。

現在の主な事業内容とクライアントを教えてください。

主な事業は、情報デザイン•行動デザインをベースにしたマーケティング、商品の企画・製造・販売で、日本郵便の商品も製造しています。

創業時は印刷会社の下請けとして、名刺受注などを行っていました。そこから徐々に日本郵便をはじめ、大手化粧品メーカーとお取引させていただくようになりました。

転勤族の多い取引先ですので、異動後も人とのつながりで取引が継続しましたし、新たなお客さまをご紹介していただき、いつの間にか関東を中心とした道外のお客さまが増えていったんです。

パラシュートに社名変更した理由をお聞かせください。

印刷会社として創業。日本郵便とのお付き合いが進むなかで、DM(ダイレクトメール)を事業領域にしようと考えたのが大きいですね。

2007年に「札幌凸版印刷株式会社」から「パラシュート株式会社」に社名を変更しました。

 

クロスメディアマーケティングで効果を引き出す

2020年に代表取締役に就任されました。

私で六代目になります。まさか自分がなるとは思っていませんでしたので、最初にお話をいただいたときは正直悩みました。

先代からは、社員を大切にすることと、長年お付き合いをいただいているクライアントの信頼をなくさないように、と言われています。それを胸に日々業務に励んでおります。

荒生さんが考える、クロスメディアの魅力について教えてください。

小売りの場面では一般的に、売り上げの8割を生み出しているのは2割の優良顧客と言われています。その優良顧客の手に直接渡るDM(ダイレクトメール)やチラシなどのオフラインツールが、実はSNSよりも効果的とされています。

一方でオンラインメディアは、低予算で一気に情報を拡大できる点が魅力。弊社ではそうした、オンライン・オフラインの良さを生かした、クロスメディアマーケティングを提案しています。

具体的にはどのようなことでしょうか。

今の若い方は年賀状も含めて自分宛に送られたDMになじみがないので、まずはキャッチーな言葉で簡単に商品紹介をし、QRコードでWebサイトへ誘ってしっかりと商品を確認してもらうのが一般的です。

そこで、DMを手にした方に興味をもってもらうために、印刷物にひとこと手書き文字を添えることをお勧めしています。

昔からのベタな手法ではありますが、今の時代だからこそ、相手の心を動かすのではないでしょうか。とはいえ、顧客全員にそこまで時間や手間をかけるのは難しいので、今は購買分析をして、販売商品ごとに該当する人にだけDMを出しわけることで、効果を最大化する企業が増えています。

そうした流れに合わせてしっかりとマーケティングをし、お客さまの販促活動に最適な手法を提案・実行していくのが、私たちの仕事です。

 

封入から発送まで社内で一元管理するシステムを構築

御社の強みを教えてください。

特徴的なのは、社内にセットアップサービスを行う専用部門をもっていることでしょうか。

切手などの金券や、DMを作るうえで個人情報を取り扱っているため、15年ほど前から商品の封入・封緘・梱包、パッケージの組み立てなどを行う専用チームを設け、すべて社内で完結できる体制を整えています。スタッフは皆ベテランで、その仕事ぶりの正確さや丁寧さは弊社の自慢の一つです。

どうしても納期が厳しい場合は、信頼のおける協力会社に依頼しますが、原則は社内で一元管理しています。 商品のなかには全国2万局以上の郵便局に納めるものもありますから、間違いがないよう緊張感をもって取り組んでいます。

長年やってきて事故やクレームはほとんどありませんし、仮に何かあったときには迅速な対応を心掛けていますね。

そうした積み重ねが信頼につながっています。

日本郵便の商品を数多く手掛けられています。最初に制作した商品は何ですか?

20年ほど前の「さっぽろ雪まつり」の商品です。当時は郵便事業の民営化前で、今のようにキャラクターグッズなどの取り扱いもなかったため、雪だるまの形をしたハガキに切手を一枚付けた、特殊切手帳を作りました。

さらに寒い会場を歩く人たちに、パッと見て欲しいと思ってもらえるような商品として作ったのが、ハガキの半分に透明フィルムを貼ってカラー印刷をしたポストカード「窓めーる(R)」です。これはすぐに実用新案と商標登録を取りました。

これが結構話題となり、全国の観光地からも注文をいただきました。その頃からでしょうか。少しずつ、付加価値を付けた小ロットで多品種の商品作りを目指すようになっていきました。

そのような企画商品はどのように生まれるのですか?

季節やイベントに合わせた商品の提案もありますし、例えば次にこのアニメやキャラクターが流行りそうだと思ったら、すぐに版権元を確認し、メーカーとのコラボ商品を作るといった企画の売り込みも行っていて。

大抵の企画は社内で製造、商品化できるのが私たちの強みです。なお商品化にあたり、弊社の機械設備で対応できない場合は、必要な技術や機械をもつ会社に依頼しています。

 

自社商品製作のノウハウを獲得し、自由な発想で提案

 

 

これまで手掛けた商品で印象に残っているものはありますか?

最近ですと、インバウンド向けに「フレーム切手2020シリーズ」を作りました。“日本の良さを伝える”というコンセプトで、テーマを富士山、桜、城、花火に絞り、写真にこだわって製作しました。なかでも富士山は読売新聞社の報道写真を使用していますので、見応えがありますよ。桜、城、花火においても、それぞれ専門のカメラマンに依頼したおかげで、素敵な仕上がりになりました。

切手やハガキ以外の商品もありますか?

長年お付き合いいただいている東海支社には毎年企画を提案し、クリアファイル付きの富士山山頂郵便局の証明書や、山頂で手紙を書くためのレターセット、封緘用シールなどを作っています。

さらに2021年には「日本郵政創業150周年記念」のオリジナル企画として、明治から現代までの郵便ポストをモチーフにしたピンバッジとフレーム切手、リーフレットを特製ホルダーにセットした商品を限定発売しました。

郵政博物館でしっかり取材をし、日本郵便の許諾を得たうえで、装丁には郵便をモチーフにした「立版古(たてはんこ)」というペーパークラフトの手法を使い、貴重な図画を箔押しやマットPP加工を用いて現代風にアレンジしました。

自由な発想ですね。デザイナーのやりがいも大きいのではないですか?

そうですね。商品の発売は日本郵便ですが、商材自体は弊社のものなので、売れても売れなくても自分たちの責任です。もちろん売れることが前提ですが、自分たちが楽しく作れる商品があることが大切だと思います。今回も半年ほどかけて何度も色校正を出しながら、絵や箔の雰囲気、濃淡の表現などを考えている彼らの姿を見ていました。本当に楽しそうで、私自身も嬉しかったですね。

一緒に働くスタッフや、今後クリエイティブの世界を目指す人材に、どのようなことを求めますか?

クリエイターとしてのプライドも大切ですが、あくまでも商業商品を製作しているのですから、自分の好きなものではなく、いつ、誰に売るかを考えたうえで企画やデザインをしてほしいと思います。アートと違い、デザインはお客さまの課題解決のためにあるもの。お客さまが求める結果を導くために、どういう表現が必要なのか、しっかりとコミュニケーションを取りながら考えてほしいですね。技術的な経験があるに越したことはありませんが、それよりもマーケティング思考をもってものづくりに取り組み、自分の制作物が世の中に出ることに喜びを感じてもらえると嬉しいです。

最後に今後の展望、将来のビジョンについてお聞かせください。

この先も長年培ってきたノウハウや自社の強みを生かしながら、マーケティングに基づくDMやWeb、企画商品などを提案し、お客さまの課題の解決に力を入れていきたいと思います。

コロナ禍でDMの発注が激減し、正直大変な思いをしました。それでも郵政150周年記念商品や有名アーティストのグッズ製作で、なんとか売上をカバーできたんです。

やはり自分たちで「BtoC」につながる商品をもっていると心強いですし、経営の安定にもつながることを痛感しました。今後は主力である「BtoB」に加え、「BtoC」の商品もどんどん手掛けていきたいと思います。

取材日:2021年11月22日 ライター:八幡 智子

パラシュート株式会社

  • 代表者名:荒生 猛
  • 設立年月:1950年4月
  • 資本金:3,000万円
  • 事業内容:マーケティング、商品の企画・製造•販売、イベント企画・Webデザイン・グラフィックデザイン等
  • 所在地:〒003-0023 北海道札幌市白石区南郷通18丁目北1-7 パラシュートビル
  • URL:https://www.parachute.co.jp/
  • お問い合わせ先:上記の「お問い合わせ」へ

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