職種その他2021.12.15

福岡とNYCの2拠点から世界へ!人の心を動かすCM音楽を届けたい

福岡
株式会社ウルヴズ・ユナイト・ジャパン 代表取締役・プロデューサー/   取締役・プロデューサー
Tomoko Kobayashi/Koki Saito
小林 世以子 氏/ 齊藤 弘毅
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ニューヨークで歯科医師として働いていた小林世以子(こばやし ともこ)さんと、ニューヨークのプロダクションで活躍していたCM作曲家の齊藤弘毅(さいとう こうき)さんが、アメリカで立ち上げたWolves Unite, Inc.。

2年後には地元九州の福岡で株式会社ウルヴズ・ユナイト・ジャパンも設立して、数々の有名企業のCM音楽を生み出してきました。

なぜ二人で創業したのか、どうやって日本での仕事を軌道に乗せていったのかなど、明るくテキパキした小林さんと穏やかで謙虚な齊藤さんが自然体で語ってくれました。

 

同郷の二人がニューヨークで出会い会社を設立

ウルヴズ・ユナイト・ジャパンを立ち上げるまでの経緯を教えてください。

小林:

大学病院の脳外科医だった父の転勤に伴う転校の繰り返しを経て、最終地となる熊本県人吉市で父が開業しました。ピアノやバイオリンを習いながら中学校では合唱部で活動するなど、大好きな音楽に関わりながら育ちました。両親から将来のために資格を取るように勧められて福岡の歯科大学に進学。卒業後は歯科医師として、大学病院などで働いていました。30歳になり、「アメリカで生活してみたい」という長年の夢を叶えるため、ニューヨーク大学歯学部(NYUCD)の試験を受けて単身ニューヨークへ。口腔外科に入局して歯科診療を行いました。多国籍な人たちに囲まれた、刺激あふれる環境に感化されていくうち、やはり仕事で大好きな音楽をやりたいと思うようになりました。ちょうどその頃、ニューヨークで音楽プロデューサーとして活躍している齊藤と出会って。まずは2011年、ニューヨークでWolves Unite, Inc.を二人で立ち上げました。

齊藤:

僕も人吉出身で、子どもの頃からバイオリンを習い、中学では軽音部に入りバンドを組んでギターを弾いていました。ボストンのバークリー大学で作曲と制作を学び、ニューヨークのCM音楽を手がけるプロダクションに作曲家として就職。プロデューサーにもなり、そろそろ独立しようと考えていた頃、たまたま出会った小林と意気投合して。二人で会社を立ち上げた時、僕は26歳でした。そして2年後、日本でも活動しようと福岡でウルヴズ・ユナイト・ジャパンを立ち上げました。

齊藤さんはアメリカのCM音楽を作られていたのですか?

齊藤:

はい、私が所属していたのは20人ほどの作曲家が所属する、アメリカでは一番大きなプロダクションでした。アメリカをメインに海外のCM音楽を作ることもありましたね。日本で放送されたものでは、日本でとても有名な衣料メーカーのCM音楽を担当しました。

小林さんは歯科医師から思い切った転身ですね。

小林:

歯科医師の仕事はお休みして、音楽の仕事に専念しました。私は音楽のプロではないけれど、齊藤は第一線で活躍していて実績もあるので、特に心配はありませんでした。CM曲は15秒から60秒ほどのごく限られた時間でインパクトのある曲を作る世界。奥が深くて、とても面白いなと思ったんです。

齊藤:

小林はずっと声楽もやってますし、テクニックもあり、個性的な声なので、CMソングにはとても向いていると思います。

小林:

彼が曲作りをして、私はできた曲に対して「ここをもっとこうしたら聞きやすくなるんじゃない」などと意見を出していますね。

彼はプロ目線ですが、CMは子どもからシニアまでいろんな方が見るので、私はフラットな視点で見ることを大切にしています。ほかにサポート全般と、デモの演奏や歌が必要なときに参加したりしています。

 

日本・欧米・アジアに向けたCM音楽を年間100本ほど制作

ニューヨークで設立した会社では、主にCM音楽を作られていたのですか?

齊藤:

ほとんどアメリカのCM音楽を作っていました。それまで働いていた会社との仕事がメインで、指名してもらったりコンペになったりして、年間300曲ほど作り、そのうち100曲ほどを世に送り出してきたでしょうか。

小林:

テレビやラジオで自分たちの音楽がながれるたびに、ウキウキしてとても満たされた気持ちになりました。

齊藤:

いつか地元の九州でも活動したいと思っていたところ、機材が進化してリモートで制作がやりやすくなったこともあり、2013年に福岡でウルヴズ・ユナイト・ジャパンを設立しました。1年ほど準備して、2014年から日本でも活動をスタート。それからは福岡をベースに、必要に応じてニューヨークと福岡を行ったり来たりしています。

小林:

アメリカである程度の実績があれば、日本にいてもアメリカの仕事が入ってきます。だから今度は日本の仕事をしてみたいと考えました。そして日本のCM音楽なら、齊藤と私、それぞれの家族にも聞いてもらえるという思いもありました。

現在の事業内容を教えてください。

小林:

創業時からずっと変わらず、日本とアメリカ、ヨーロッパ、アジアに向けて、テレビやラジオ、WebのCM音楽を作っています。

また、ゲーム音楽や番組挿入歌なども手がけていますよ。演奏や歌唱は基本的に齊藤と私が行っていますが、ご希望やコンセプトに応じて、演奏者やシンガーを世界中から探して制作しています。

齊藤:

アジアではシンガポールやタイ、中国などの仕事をしてきました。海外のCMは実際には見られないけれど、YouTubeなどで見ることができます。

日本では、どうやって仕事を広げていきましたか。

小林:

アメリカでの実績をDVDにまとめて、福岡をはじめ東京や大阪などの広告会社や映像制作会社などに直接足を運んで営業をしました。東京ビッグサイトで開催されたエキスポにも出展しましたね。

齊藤:

当時、福岡の会社は「音楽は東京の会社に頼む」というところが多かったですね。

小林:

でも、おかげさまで少しずつ福岡の仕事も増えてきましたし、今では海外と日本が半々くらいになりました。本当に皆さんに感謝しています。

CMを手がけられた会社を具体的に教えてください。

小林:

日本の会社では、JR九州、九州電力、携帯電話会社、福岡ソフトバンクホークス、ジャパネットたかたなどを担当させていただきました。

アメリカの会社を通じては、大手パソコンメーカー、ドイツの車メーカー、ドバイ観光局などの仕事をしています。弊社のホームページでお仕事を紹介していますので、もしよかったらご覧ください。

齊藤さんは曲作りが苦しくなることはありますか?

齊藤:

いいえ、苦しいと感じることは全くありません。ただ、作曲家がよく「メロディが降りてくる」なんて言いますが、僕のところにはそもそも降りてきません(笑)。僕はキーボードやギターで地道に探す、下からいく感じです。なかなか探り当てられなくても、それがきついとは思わないんですよね。

 

作品のビジョンに合わせつつ、ウルヴズらしさも追求

齊藤さんが曲を作るために心がけていることがあれば教えてください。

齊藤:

いい曲をいっぱい聴くことでしょうか。悪い音楽ってあんまりないと思うので、ジャンルを問わずにいろんな音楽を聴くようにしています。

仕事のやりがいはどんなところでしょうか。

齊藤:

CMでは音楽が映像の力になったり、お互いに高め合うような関係性だと思います。うまくハマる音楽ができて、監督さんやスタッフさんに「良かった」と言ってもらえたり、一般の方にも「あのCM曲いいよね」と言われたりすると、とてもうれしいです。

小林:

たまに制作会社に「あの曲は誰が作っているんですか」「あの歌は誰が歌っているんですか」などとお問い合わせがあるそうです。この前は、長崎の方から突然電話がかかってきて、「あの九州電力の坊ガツルのCMの音楽がすごく良かったよ」と言ってもらって。わざわざうちのことを調べて、直接感想を伝えてくださったことにすごく感激しました。

今後の展望をお聞かせください。

小林:

CMはもちろん、楽曲提供の幅を広げて、もっとウルヴズらしさを追求した音楽を皆さまにお届けしたいです。15秒でも心に残るCM音楽はたくさんあります。どんな長さでも、求められたクオリティを忠実に音にしていきたいと思います。

齊藤:

どんな会社のCMでも音楽でもチャレンジしてみたいです。また、地元九州の演奏者やシンガーなどアーティストさんたちと、もっと一緒に作っていきたいなと考えています。

ちなみに、CM音楽以外にも何か制作活動はされていらっしゃいますか?

齊藤:

ほそぼそとやっているんですよ。アメリカのCM作曲家の友達とアルバムを作って、アップルミュージックで配信しています。

小林:

私は文章や詩を書いたりするのが好きなので、自分のアルバムを作っているところです。YouTubeではカバー曲をいくつか出しているので、よかったら見てください。ちなみに私は、ウルヴズのお仕事に加えて週1回、歯科医師として働いています。歯科医師としての私も大切にしています。

最後に、御社でクリエイターが一緒に働くとしたら、彼らに求めることを聞かせてください。

小林:

自分の音楽をはっきり主張できる人がいいけれど、柔軟に考えられることも重要です。仕事のコンセプトに合わせて、自分の音楽をうまく融合できる人がいいと思います。

齊藤:

CMは監督さんのビジョンがあってこそ成り立つもの。その点においては、音楽家によっては、この仕事に向き不向きがあります。

自分はこうしたいという思いはすごく大事ですが、まずはビジョンに応えることが必要です。そのうえで僕は、自分のやりたいことをこっそり盛り込んだりしていますね。

取材日:2021年10月1日 ライター:佐々木 恵美

株式会社ウルヴズ・ユナイト・ジャパン

  • 代表者名:小林世以子
  • 設立年月:2013年4月
  • 事業内容:CMや映像に合わせたオリジナル音楽の制作
  • 所在地:〒810-0022 福岡市中央区舞鶴2-1-21 天神茜ビル2F
  • URL:https://www.wolvesunitejapan.com/
  • お問い合わせ先:090-7169-1092

 

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