プロダクト2021.07.28

「正しいことをシンプルにやり抜く」株式会社クワンド。厳しい状況下で結果を出すアパレルメーカーが大切にしていること

東京
株式会社Quando. 代表取締役
Kimihiko Akiyama
秋山 公彦

デニムを中心としたOEM※1 商品を中心に、企画、製造、販売といった事業を展開している株式会社Quando.(クワンド)。近年はODM※2 にも力を入れる他、自社ブランドを立ち上げ、商品の企画力を着実に伸ばしている企業です。そんなデニムメーカーの代表取締役である秋山公彦(あきやま きみひこ)さんに、独立した経緯、現在の事業内容、デニムに対する想いや今後のビジョンなどを伺いました。

※1製造だけを請け負う方式 ※2委託元ブランドを企画から製造まで請け負う方式

 

キャリアアップか、新しいチャレンジか

会社設立前はどのようなお仕事をされていましたか?

大学卒業後しまむらグループに勤め、Avail(アベイル)事業部が立ち上がってまもなくの頃から所属していました。そこでレディース部門のチーフバイヤーを担当した際、多くの取引先に恵まれ数字を伸ばせたんです。その後、商品部のレディス・キッズの部長職を数年経て独立しました。しまむらグループは組織体制が整っており、数字を伸ばせるかは本人次第ですが、社員が活躍しやすい環境なんです。グループ内にいくつか部門がありまして、その中でも役割が細分化されていました。

整った組織体制の中でも苦労されたことはありましたか?

当時はしまむらグループ内でAvail事業部は立ちあがったばかりで、店舗数も少ない状況でとにかく仕入れに苦労しました。メーカーさんを口説いて間口を広げるために、ものすごく努力したんです。その結果ものすごい数字がついてきました(笑)。あれは本当にうれしかったですね。

独立をお考えになったのは何故ですか?

実家が自営業を営んでいたので、「将来的に独立したいな」という気持ちは最初からありました。しまむらへ入社し、店長をやらせていただいているときに、お客さまや店舗の従業員だけでなく、対会社として、さらに多くの人と話ができるバイヤーに興味を持ち始めたんです。「自分が仕入れた商品を買っていただける」って、うれしいじゃないですか。「大変そうだけど、会社内で一番数字の作れるバイヤーを目指そう。その仕事を全力でやり切ってから辞めようかな」と。

バイヤーになり、それからは毎日夜中まで働いていましたが、楽しかったです。結果が出せたので、本当にうれしかった。バイヤーを経て辞めるつもりでしたが、人事異動で部長を任されることになり、「挑戦できるならやってみよう」と部長職も経験させていただきました。ただ、「会社に残ってキャリアアップを目指すのか、自分自身で新しいチャレンジするのか。」と悩みましたね。「圧倒的な数字を残せるのは『しまむらグループ』という会社名のおかげなのでは」、「売り場や組織体制が整っている、社内のサポートのおかげでは?」と、100%自分の力ではないと考えました。「せっかくこの世に生まれてきたんだし、より良い人生を送るために自分で一からチャレンジしたい。やるなら今しかない」と独立を決意したんです。

会社立ち上げの際に苦労した点はなんでしょうか?

立ち上げ当初から今まで苦労しっぱなしです(笑)。しまむら時代からの営業先をもって退職したわけではなく、会社を立ち上げた当初は取り引き先(売り先)がありませんでした。事務所を契約して会社を登記して…という形式的な手続きは問題なくても、お客さま開拓は営業をしない限りどうにもなりません。営業も経理も品質管理もその他事務作業も、立ち上げから約1年ほどは全部一人でこなしていたので、不安と闘いながら必死でした。そんな中でしまむら時代にお世話になったメーカーさんたちが相談にのってくださって、ご紹介から、少しずつ取引先が増えていきましたね。

 

余計なことを考えずに決めたことをシンプルにやり抜く

現在の事業内容について教えてください。

モノづくりに関してノウハウを身につけるためにも、OEMを主軸にやってきました。近年はODMという形で年4回内見会や展示会に参加して、少しずつ自社企画を増やしているといった状況ですね。取り扱うものは基本デニムなのですが、それ以外の布帛(ふはく)商品も少しずつ増やしていますし、自社ブランドを立ち上げたので、そこにも力を注いでいこうとしているところです。

もともとデニムを取り扱いたいとお考えだったのでしょうか? デニムの魅力について改めてお聞かせください。

デニムは経年変化という、自分で色落ちさせていくのが楽しいですよね。僕の学生時代はノンウォッシュデニムを手に入れて、どう色落ちさせていくかが流行っていました。私自身バイクでよく一人旅をしていて、そういった思い出もデニムの状態に現れていくのが、なんか良いじゃないですか。

またいろいろな服装に合わせやすいというのもデニムの魅力かなと。プライベートだけでなく仕事でも使えますし。最近だと肩の落ちたオーバーサイズ気味のアウターだったり、ワイドパンツであったり、形もどんどん変化していますよね。伸びるストレッチデニムも性別に関係なく支持されていたり。時代やライフスタイルに合わせて変わっていくデニムは、男性、女性、お子さん問わず、コーディネートの幅が広げられるアイテムだと言えるのではないでしょうか。

商品開発をする上で意識されているポイントは何でしょうか?

「購入してくれる方」ですね。値段、着こなし、スタイルにおいて「お客さまが何を必要としているか」を抜きにしての商品開発はありえないですね。モノづくりに対する姿勢、デザイナーの考え、ブランドさんの要望ももちろん大事ですが「手に取るお客さまがどう感じるか」を深く考えます。私が独立するときにいろいろとお世話になった方のひとりに、株式会社アン・ドゥーの中村社長という方がいます。中村社長はモノづくりの姿勢がとにかくすごいですね。例えば、低価格の商品に対して「2,980円ならこんなもんかな」などと妥協せずに、お客さまがその値段で「買いたい」かどうかを徹底的に吟味するんです。中村社長は、会社の事情よりも消費者の目線でモノづくりができて、余計なことを考えずに決めたことをシンプルにやり抜く姿勢を貫いていらっしゃいます。それでいて、ちゃんと利益も出せるところが、経営者としても素晴らしい方で尊敬しております。私も中村社長のようになりたいです。

デニムメーカーとして存続し続けるための秘訣はありますか?

まだ私も模索しているところですが、シンプルに正しいことを正しく、当たり前のことを当たり前にしていることかと思います。例えば納期を守ったり、デザインをこちらから提案したりですね。地道ですが、それが一番大切なのではないでしょうか。

御社のブランド『gram blue』という名称はどのように決めたのですか?

「どんなブランドにしたいか」を、社内のメンバーで話し合いながら決めました。『gram blue』は直訳すると「青の量」「ブルーの量」で、デニムを連想させるなと。社員の思いの集約と言っていいかもしれません。

ちなみに社員同士のコミュニケーションはいつも重要視しています。毎朝の社内勉強会のついでに、思ったこと感じたことなどを全員から一言ずつもらったりですね。相手がどんな人で何を考えているのかを知っていると、業務中に話しかけやすくなりますよね。一緒に仕事をする上でコミュニケーションのとりやすさや信頼関係って、大切ですから。

 

熱量があれば実現できるし、応援してくれる人が現れる

今後、株式会社Quando.をどのような会社にしたいですか?

社員皆が自信を持って働ける永続的な企業でありたいですね。「この会社に入って良かった」「活躍の場がここだと思えた」「仕事だけでなく考え方や心の持ち様が変わった」と言ってもらえる会社を目指しています。私は稲盛和夫さんの盛和塾に入っていまして、そこで学んだ経営哲学のひとつが「従業員全員の物心両面の幸福を追求」です。従業員あっての会社であり、従業員が幸せになれなければ会社は続かないという考え方です。

私も勉強中で、毎朝の社内勉強会では仕事のスキルや才能だけでなく、人として正しい考え方ができるかにも触れるようにしています。経営の面では、業績を上げて給料等のベースアップを図りたいです。雇用を増やして税金を納めれば社会貢献にもつながりますから。当たり前のようですけど、業績アップが実現できれば、会社を立ち上げたかいがありますよね。

共に働くメンバーに対して、会社として何を求めますか?

人として正しく、そして元気にがんばってもらえればうれしいです。同じベクトルで理解し合って一緒に働ければ、それ以上はないですよね。社会人経験が長くなるほど、自分の知識やスキルは今が限界だと感じてしまう一方で、若い世代に対してはこれからいろいろと積み上げていくべきだと思っている方は多いかもしれません。

でも実際は、「誰かが成長すればいい」ではなく、50代60代になっても進化をしていくべきかな、と。世代を問わず社員全員で、能力だけでなく“人として”ベースアップしていく必要があると感じています。“人として”という部分を重要視する理由は、人間には心があるので、能力や数値だけに囚われると疲弊してしまうからです。ただ、自分だけが「能力を上げろ」「ノルマを達成しろ」だけ言われていたら辛いですが、「皆でここへ行こう」と言われればエネルギーが出るでしょう。

私は私で企業理念をメンバーにしっかり伝えて「こういう山登ろうぜ」とリーダーシップを取っていく必要がありますね。

あとは「売り上げが悪い」「人手が足りない」といった問題を人や世の中のせいにしない、ですかね。そうしていると「悪い状況でどうやっていくか」と、自分で考える謙虚さが失われていくような気がします。考え方ひとつで行動も状況も変えていけるので、人として成長していくことは大切ですね。ただ、自分も実行できているわけではないので(笑)。社員の皆と学んでいるところです。

アパレルブランドを立ち上げたいと考えている方へ、アドバイスをお願いいたします。

「ブランドを立ち上げる」ということは「自分がブランドになる」ということですから、難しい反面、熱量があれば応援してくれる人が現れます。「こういう服を着たい」「こういうブランドを作りたい」「絶対にこうなりたい」という熱量があれば実現できると思いますよ。大変ですが、やりがいはあります。

応援してもらえる人間性や事業内容、経営に関する数値の計算ができる冷静さも大切ですけれど「自分が何をしたいのか」を人に伝えることが大切だと思います。そしてそれを具体化するために小さな一歩でも行動してみることが大切だと思います。その後、いろいろなことに気づいて、学んでいけばいいんじゃないでしょうか。

取材日:2021年6月4日 ライター:Yoshiko

株式会社Quando.

  • 代表者名:秋山 公彦
  • 設立年月:2013年5月
  • 資本金:950万円
  • 事業内容:布帛(デニム)中心の衣料品の企画、製造、販売
  • 所在地:〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷4-16-7北参道DTビル4階
  • URL:http://quando.co.jp
  • お問い合わせ先:TEL:03-6721-1462/FAX:03-6721-1463
    http://quando.co.jp/contact/

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP