WEB・モバイル2021.03.24

「テクノロジー」で日本の漫画を支えていく! コミチが築く新しい“マンガ道”

東京
株式会社コミチ 代表取締役
Daisaku Manda
萬田 大作

世界に誇れる名作が数多くある、日本の漫画。「海外人気も年々高まっている」という声も耳にしますが、株式会社コミチの代表取締役である萬田大作(まんだ だいさく)さんは、「海外の漫画市場はすでに他の国に取られつつある」と語ります。

「縦スクロール漫画」に着目し、オリジナル作品・既存作品問わず、数多くのさまざまな漫画を独自のプラットフォームで配信している「コミチ」。漫画配信のみならず、漫画家の活躍をバックアップするさまざまなサービスも提供しています。そんなコミチを運営する萬田さんに、日本の漫画の現状、プラットフォームで漫画家を支える方法について、詳しく伺いました。

 

「新しい漫画の道を作りたい」コミチの名前に込めた思い

まずは、株式会社コミチの立ち上げの経緯を教えてください。

コミチは、漫画家の「作る」「広げる」「稼ぐ」を支えるプラットフォームです。「テクノロジーの力で漫画家を支える」を目標に、2018年3月に立ち上げました。僕の経歴をザッとお話しすると、もともとはエンジニアとして、経路検索エンジンの立ち上げに携わっていました。

その後もさまざまなシステムを開発する中で、やがて株式会社コルク(作家専門のエージェント会社)を運営する佐渡島庸平との出会いがあって。自分が昔から漫画が好きだったのと、作家や漫画家といったクリエイターを支えて作品を広めていこうとする佐渡島の考えに共感して、3年ほどコルクの取締役を務めました。

佐渡島と「どうやったら漫画家さんの作品を世界に広めていけるか?」とよく話していましたね。そんな中で、漫画家さんに必要なものは、やっぱり作品を広めていくプラットフォームだと感じて……。まず初めに、「コルクBooks」というサービスを立ち上げたんです。

漫画家さんのためのプラットフォームを作りたい! と考えたのは、「コルクBooks」のときからですか?

そうです。ただ、「コルクBooks」だけ聞くと、パッと漫画が連想できないんですよね。小説とか、エッセイとか、そういったものもイメージに入ってくる。コルクBooksを運営する中で、もっと漫画に特化していると分かるサービスにしていきたいと思って。あとは、単純に「コルク」と「コルクブックス」だと、コルクの子会社の印象が強かったので……。

独自のサービスを提供している、かつ漫画に特化したプラットフォームだとアピールするために、サービス名を変更しました。「コミチ」は、ラテン語で「マンガ」という意味です。新しい漫画の道を作りたい、そのためにプラットフォームを作りたい! という気持ちから、この名前を選びました。

 

「縦スクロール」で、日本の漫画を世界へ

「日本の漫画」は、日本にとっては財産であり、世界に誇れるものだと思っています。ただ、海外の漫画市場では、すでに日本はトップではないんでしょうか……?

日本の漫画のクオリティはすばらしいです。世界に誇れる作品もたくさんあるんですが、作品を広げるためのプラットフォームがついてきていない。コミック市場では、「紙」よりも「電子」が成長を続けています。

2019年には、とうとう電子コミックが紙の販売金額を抜きました。漫画を読んでいる人の半数以上が、スマートフォンなどの電子機器で読んでいる。もしくは、紙と電子機器どちらでも読んでいる、ということです。

スマートフォンを利用する人って、ほとんどが「縦スクロール」に慣れているんですよ。サイトを見るときも、SNSをチェックするときも、縦にスッスッと指を動かしますよね。「横の動き」より、主に使われるのは「縦の動き」なんです。

確かに、「縦の動き」が多いですね! ただ、漫画は「横の動き」ですね。電子コミックを読むとき、日本の漫画の多くは横にスワイプするし……。

そう、日本の漫画の多くは、まだ「縦の動き」を取り入れられていないんです。アメリカのスマートフォン向けアプリの中に、少年ジャンプのアプリもあるんですけど、コミックのカテゴリでインストール数は何位だと思いますか?

世界的に有名な作品も多い少年ジャンプのアプリですから、3位以内には入っているのでは……?

2021年1月の時点では、8位です。いや海外で8位なのはすごいんですよ。もちろん、日本人向けの漫画ですしね。ただ1位は、縦スクロールの漫画のみを配信しているアプリ。海外で漫画を読む人の多くは、縦スクロールで読むことを好んで、それができるアプリやサイトを選んでいると言ってもいいかと思います。

クオリティの高い漫画でも、「“縦読み”プラットフォームがないから読んでもらいにくい」可能性は大いにあるんですね……。

そうです。日本の漫画を世界に広めていくためには、新しいプラットフォームを作っていかなくてはいけない。コミチでは“縦スクロール用に描かれたオリジナル漫画”の配信だけではなく、既存の漫画を縦スクロールに組み替えるシステムも提供しています。

漫画のデータをアップロードして、「縦スクロール変換」のボタンを押せば、自動的にシステムがコマ分割して、縦スクロールで読めるように組み替えてくれます。すでにコミチに掲載されている三田紀房さんの『ドラゴン桜2』も、システムで縦スクロールに変換したものです。

ドラゴン桜2
©copyright 2021 comici Inc.

すごい! このシステムを利用すれば、漫画家さんの手間がグッと減りますね。

世界でも認められるはずの日本の漫画が、スクロールの問題だけで読んでもらえないのは悔しいですから。縦スクロールに興味はありつつ、「既存の漫画を縦に書き直す時間も余力もない」という漫画家さんに、ぜひ使っていただきたいです。

 

「テクノロジーの力」で漫画家を支えていく

「漫画家の『作る』『広げる』『稼ぐ』を支える」ためにコミチがしていることを、もう少し教えていただきたいです。

例えば、「共同制作サービス」ですかね。漫画を共同制作する際に連携しやすいように、インターネット上で漫画のコマに「ここがわかりにくい」「瞳を入れてください」など、コメントのやり取りができるシステムを開発しました。

昔は、漫画家さんとアシスタントさんが同じ部屋に集まって、口頭でやり取りしながら漫画を作るのが主流だったんですが……。最近は、メールやチャットを利用して、それぞれの自宅で作業する人たちも多いんです。ただ、会わないと、意思の疎通が困難になる場合もある。そんなお悩みを解決できるように開発したのが、このサービスです。

コメントのやり取りだけではなく、「描き直したページを元に戻したい!」という希望を叶えるために、ファイルのバージョン管理機能もついています。「描き直したけど、前のほうがよかった……」と感じたら、クリックひとつで前回アップロードしたファイルに戻せます。

「テクノロジーの力で漫画家を支える」を、本当に実現しているんですね……! 共同制作サービスは、「作る」を支える部分ですよね。では、「広げる」を支えるのは?

漫画家さんにぜひ活用していただきたいのは、「HP機能の提供」です。漫画家さんって、ものすごく有名になっても、個人のホームページを持っていない人がほとんどなんです。

コミチでは、登録した漫画家さんに対して、ホームページを提供することが可能です。今まで発売された漫画はすべて一覧で表示されて、新刊表示もできます。例えばご自身のSNSに紐づけて、「今まで発売された漫画はこちら!」とアピールしてもいいですよね。ご自身の作品を広める材料として、使っていただけたらと思います。

「作る」「広げる」と続いて、最後は「稼ぐ」ですね。漫画家さんにお金が入ることは、安心して作品を作るためにも重要かと思います。どうやってお金の流れを生み出しているんでしょうか?

まずは、コミチ上での漫画販売です。コミチでは、1話ごとに漫画を販売できます。購入されたら、売上額の最大85%が漫画家さんに入ります。通常印税は8%や10%なので、コミチの還元率の高さは魅力的と自負しています。

あとは、コミチ主催の漫画コンテストを定期的に実施しています。賞金がついているコンテストは、受賞したらもちろん賞金は漫画家さんのもの。他メディアでの連載権がついている場合もあるので、「稼ぐ」以外に「広める」にも関わってきますね。

本日お話を伺って、「テクノロジーの力で漫画家を支える」を着実に進めているんだなと感じました。今後さらにコミチを盛り上げていくために、「こんな人が仲間になってほしい!」という理想像はありますか?

職種としては、「エンジニア」「WEBデザイナー」「ライター」「編集者」などは、いつかコミチに入ってほしいと思っています。

人物像としては、もちろん「漫画が好き」であること。そして、「漫画家を支えたい」という思いを持っていることです。さらに言うなら、「テクノロジーの力を使って、社会課題を解決したい」という目標に共感できること。コミチは、テクノロジーで漫画家さんを支える会社ですから。そこに共感していただけるなら、ぜひご一緒したいなと思います。

取材日:1月26日 編集協力:くまの なな

株式会社コミチ

  • 代表者名:萬田 大作(まんだ だいさく)
  • 設立年月:2018年3月
  • 事業内容:メディア(電子コミックサイト)事業、広告事業、マーケティング支援事業
  • 所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-12-8 ILA渋谷美竹ビル501
  • URL:https://comici.jp/
  • 問い合わせ先:コミチ問い合わせ

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