WEB・モバイル2018.12.12

「広告枠を買うのではなくオーディエンスを買う」DSPサービスを中心に、新しいメディアの時代についての解説をしましょう

Vol.160
ブルースクレイ・ジャパン株式会社 マーケティング Div. 事業開発 Dept. 今泉 勇介 氏
インターネット登場から30年、スマホの登場からも10年と言われています。それらは、私たちの生活を大きく変えました。その変化した行動を整理してみると、「検索をする」という行動が一番大きな変化だと気が付きます。その行動変化に即したビジネスがインターネット広告です。この分野の事業ではいまも大きな技術革新が続いていますが、今回はその変遷とサービスの詳細な解説を、ブルースクレイ・ジャパン株式会社 マーケティング Div. 事業開発 Dept. マネージャーの今泉勇介さんにお願いしました。

「メディア」は変わらざるを得ない時代がやってきた

今回のテーマは「DSP」ですが、その前に簡単にインターネット広告の歴史を振り返っておきたいと思います

インターネットの普及は一般の人々の情報接触行動を大きく変えてきました。日本のインターネット元年は1995年と言われています。インターネット広告と呼ばれるものは、まずはじめは静止画バナー広告になりますが、その登場が1996年頃です。いまに至る「リスティング広告」の誕生が2000年頃で、2008年になってアドテクノロジーという言葉がつかわれはじめました。この時代に至るところでようやく、インターネットの広告取引の概念が「広告枠を買う」という考え方から「どんな人たちに見てもらうか、つまり、情報がリーチする人数(オーディエンス)を買う」という考え方へとマインドシフトが起こっていったのですね。

現在のメディアの課題という点に話を進めていきたいと思います

まず、メディアという言葉の定義をしておきましょう。トリプルメディアという考え方を紹介しておきたいと思います。 これは、デジタルマーケティング時代に新しく生まれてきた考え方で、消費者が接触するメディアのことを分類しています。 「ペイドメディア」は、有料で広告を出稿するメディア、「オウンドメディア」は、自社で管理運営をするメディア、「アーンドメディア」は、消費者がコミュニケーションを通じて評判を得るメディアです。

例えば、テレビやラジオ。あるいは、新聞や雑誌広告みたいなものもここに加えられるのですか

デジタルマーケティングという文脈では、旧来既存メディアを分けて考えがちですが、ユーザーが接触するメディアということで分類すれば、同様の考え方で整理できるものだと思います。トリプルメディアの3つのメディアの特徴を整理してみると、「ペイドメディア」は企業ブランドや商品の認知向上が得意であると言えます。第一に、「ペイドメディア」は非常に多くのユーザーとの接点があるのが特徴で、影響力も大きい。まさに、旧来既存メディアの得意なところですよね。先に紹介した、クロスメディアでの広告展開などはそういう考え方をすることなくしては生まれてきませんでした。
一方、最近のテレビドラマの視聴率の傾向に顕著なようですが、必ずしもリアルタイム視聴が絶対ではなくなっているという以前では考えもしなかった事実があります。接触ポイントという点では、その時間的な傾向も大きく影響があることを意識すべき時代になっていると感じます。

他のメディアに関して、留意すべきことはいかがですか

オウンドメディアは、より詳しく企業の情報や商品の情報提供を行なうことが得意で、そのために活用されるべきメディア。ユーザーの要望・欲望・希望に応じて、それぞれに応えるかたちでオウンドメディアを活用できることになるのが理想です。ユーザーの情報取得の導線の中に、うまく商品情報を提供できるようにすれば、商品の特徴や魅力をより深く理解してもらいやすくなるわけです。もちろん購入にもつながっていきます。
一方、「アーンドメディア」とは、自然に行なわれているユーザー同士のコミュニケーションに直接触れられるメディアを言います。具体的には、Facebookコミュニティのようなものがわかりやすい例でしょうか。当然、その中にはポジティブな情報やネガティブな情報も混在します。それをうまく付き合いながら企業価値を高めていったり商品そのものの評判を醸成したりします。これも一朝一夕では成功させられませんし、独特のノウハウが必要です。
一言でいえば、メディア施策は非常に難しいです。

Webマーケティングができること・できないこと

SEOの始祖といわれるBruce Clay。

メディアが変わりつつある、その理解の上でWebマーケティングが得意なことってどんなことがあるのでしょうか

Webマーケティング=デジタルマーケティングを3つの要素に分解して理解してほしいと思います。「集客」「コンバージョン」「分析」の3つです。これは、まさに弊社がサービスとしている3つの要素です。一つずつ解説しますね。

・トラフィック最適化(集客)
誰もが思いつくのは、SEOという言葉ではないでしょうか? SEOとは「Search Engine Optimization」の略で検索エンジン最適化のことです。検索結果でより上位に表示させるためのテクニックを言います。ほかにも、インターネット広告では検索エンジンやSNSにおける、さまざまな試みがあります。

・コンバーション最適化
LPOというのは、「Landing Page Optimization」の略で、LP最適化のことです。一方、EFOと言いますが、「Entry Form Optimization」の略で、申込フォーム等の入力サポートを行なうツールを導入することで、ユーザーがフォーム入力する際の手間を軽減し、コンバージョン率を高めることができます。

・アナリティクス(分析)
Webマーケティングではクリック数やコンバージョン数といったデータの取得が得意と言えますので、トラフィック最適化とコンバージョン最適化における実施施策に対して、効果検証することで、成果改善を確かめながら進めることができます。

一方、いまだにWebマーケティングが不得意なことはあるのですか

はい、マーケティング手法がというよりも、現状の限界地点を懸念しています。現在のアドテクノロジーは非常に高度なものとなっています。つまり、使いこなすためには相当な知見が必要だということでもあります。ご説明の通り、金融系ツールは誰もが使えるものではないということと同様と考えていただくとわかりやすいのではないか、と思います。

DSPも実は5年くらい前から導入されはじめて、一時期ブームのように使われた時期がありました。が、なかなか成果が出ない、ということでいったん活用の熱が冷え込んだ経緯があります。これは我々自身の反省でもあるのですが、誤って活用をされると成果は上がらない、という点をもっと丁寧に導入説明するということと、改善点を明らかにして導入を図ることで大きな成果を得られるという実績を数多く積み重ねてきています。もちろん、ツールそのものの改善もどんどん進んでいます。

もうひとつ、声を大にして言いたいのは、そもそも売上を上げるという着地を重視しているということ。「現代マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラー氏は、マーケティングを短い言葉で定義すれば「ニーズに応えて利益を上げること」だと述べています。弊社も「売上と利益」を上げることが第一義の目的です。

DSPとはどんなしくみか、そしてこれから

さて、ではDSPについてご説明をお願いします

DSPとは「Demand Side Platform」の略で、インターネット広告の効果最大化を支援するツールです。ユーザー単位で広告を配信できるのが特徴で、複数のアドネットワークや、複数のアドエクスチェンジに広告配信を行なう広告配信プラットフォーム。SSPとは、「Supply Side Platform」の略で、媒体の広告枠販売や広告収益最大化を支援するツールです。DSPとSSPが接続することで、広告配信が可能となります。

広告配信までの流れ:
1. ユーザーがDSP広告枠のあるサイトを閲覧します。
2. サイトは、ユーザー情報(性別、年代、興味、行動履歴など)とともにSSPに広告をリクエストします。
3. SSPは提携する各DSPにユーザー情報を提供し、入札をリクエストします。
4. 各DSPは登録済み広告のなかからユーザーをターゲットとする広告を選択し、SSPに入札します。
5. SSPは受け取った入札のなかから最高額の広告をサイトに通知します。
6. サイトは落札したDSPに対して、広告配信のリクエストを送ります。
7. DSPからサイトへ広告が配信されます。
8. サイトに該当の広告が表示されます。

「枠」への出稿では広告主がターゲットとしていないユーザーにも広告が表示されてしまうことがありえますが、DSPでは広告主がアプローチしたいユーザーにのみ広告を配信するため、結果、広告の精度が向上してコストパフォーマンスが高くなるという利点がまず言えます。もう少し言いますと、重要なポイントは「配信」そのものではないということ。DSPは言わば「頭脳」であり、オペレーションをする司令塔だということです。広告在庫の買い付け、広告配信、掲載面、クリエイティブの分析、入札単価の調整、オーディエンスターゲティング等、広告主のためにあらゆる最適化をシステマティックに行ないます。DSPとは、広告オペレーションを自動化する未来志向のツールなんですね。

DSPをうまく使いこなす、というのは具体的にはどういう点が必要なのですか

第一には、RTB(リアルタイムビッティング)についてしっかり理解いただいて、これをうまく使える運用をするということ。さらには、設定をすべき優先項目を整理しながらPDCAを回していくことです。 具体的には、ターゲティング 、配信面(メディア)、バナークリエイティブ/LP(ランディングページ)、フリークエンシー設定、時間帯配信/曜日配信等の設定、といった項目になります。

ターゲティングということについて、もう少し詳しくご説明いただけますか

単純な広告枠単位での配信との大きな違いが、ターゲット設定によりメディア=「枠」単位ではなく興味・関心を持っているユーザー=「人」単位での広告配信ができるということ。広告が「枠から人へ」変化した、と、よく言われているのはまさにこのことです。性別や年齢もしくは趣味趣向の異なるさまざまな属性のユーザーへ、効果的にかつなるべく手間を掛けずに広告を配信したいというニーズに応えるカタチで生まれました。
さらに説明をすると、サイト訪問したユーザーが広告を配信したいターゲットかどうかについては、DSPのCookie(サイト閲覧履歴、閲覧日時、リファラー情報、キーワードなど)から取得して判別します。つまり、ユーザーはWebを回遊する中で事前にDSPのCookieに接触しているため、またDSPのCookieに種々の情報を保持している状態であればあるほど、ターゲティングの精密性が上がるということになります。

AIとMAと。未来志向でサービスを作り上げる

では、DSPを含めアドテクは今後どのように発展していくでしょうか?

まずわかりやすいのが、AIの導入ですよね。広告運用とは実はまだかなりマンオペレーションに依存しています。優秀なオペレーターが付けば、その広告運用が大きく改善するなんて事例もたくさんあります。それが、AIに代替されるようになると、安定的なパフォーマンスが提供できることになります。これは近い将来、そのようになってくるはずです。もう一つは、広告運用が他のさまざまなツールと連携できるようになって、より利益の最適化に対して提案ができるようになるという方向性も進んでいくものと思っています。MA(マーケティングオートメーション)ツールは、その一例になると考えています。

クリエイターにとってのマーケティング思考

さて、もう少し視点を変えてお話したいと思います。クリエイターにとって、今回のマーケティングの話題はどのようにご自身のキャリアに活かせると思われますか

弊社にもデザイナーがいます。バナー制作やLP制作は一部内製していますので。彼らによく伝えるのは、そもそも事業目的がクライアント社の利益の最大化なのですから、レイアウトデザインで思考を止めないで欲しいということです。インターネット広告分野では、ダイナミックバナーと呼ばれる自動生成型のバナーもよく活用されています。これは、楽天で買い物された方など、実はよく見ているではないでしょうか? 覚えがありますよね。こういうサービスは、固定された考えの人には発想できなかったものだったかもしれません。インターネットのサービスは、確かにデザイン的には、ほぼほぼ出来上がった感じになってきていますが、デザイナーの仕事はまだまだたくさんあるのだと思います。

クリエイターにとってマーケティングに対する理解や知識があることは力になりますか

そうですね。明確に大きな財産になるはずです。できれば、きちんと数字にコミットできるデザインができると良いですね。例えば、弊社でやっているLP制作分野では、デザインの仕事で実績向上を図ることができますから。A/Bテスト実施の経験なども貴重な経験になると思いますよ。私自身、クリエイターでなければ導けない発想に驚かされることも実際にありますから。

きっかけはなんでもよいですよね

ご自分でポートフォリオを作ったらそれを解析をすることろから始めたってよいと思います。ブログをやるなら、その書き方から考えるのもよいです。先にお伝えした、Webマーケティングは、「集客」「コンバーション」「分析」と分けて考えることを思い出してください。自分がなにが得意かどのように力を発揮できるか整理ができると思います。
クリエイティブが未来をつくると思っていますので、クリエイティブ職のみなさんには、個人としても会社としてもとても期待しているのです。

取材日:2018年10月18日 ライター:野田収一

ブルースクレイ・ジャパン株式会社

「Bruce Clay, Inc.」は、SEOの始祖といわれるBruce Clayにより1996年に設立された。 数々のアワードを受賞したSEOトレーニング、認定コース、SEO倫理規範、SEO多機能分析ツール「SEOToolSet®」などの開発等を手掛け、常に業界を牽引する存在。
「Bruce Clay Japan」は、2008年に「Bruce Clay, Inc.」の日本法人として設立。「Bruce Clay Japan」は米国でのノウハウを基に多くのクライアントにサービスを提供し続けています。

Bruce Clay Japan:https://bruceclay.jpn.com/

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