第4回FFF-Sで最優秀賞の原彰吾「自分の作品を作り続けるのは、難しくも楽しい」

Vol.206
第4回フェローズフィルムフェスティバル学生部門 最優秀賞
Shogo Hara
原 彰吾

クリエイターズステーションを運営する株式会社フェローズが開催する、学生のための短編映画祭「フェローズフィルムフェスティバル学生部門(以下FFF-S)」は、国内の学生を対象に4分間のショートフィルムを募集するコンペティションです。一次審査を通過した8作品は都内の映画館で上映され、各賞を決定します。最優秀作品には、賞金50万円の他に、BSデジタル放送のテレビ番組にて全国放送が予定されています。
早くも5回目の作品募集がはじまりました。(募集期間:~2022年10月31日まで)本大会よりソニー・ミュージックエンタテインメントが協賛パートナーとなり、新たに「ソニーミュージック賞」が設置されることになりました。
2022年1月13日、渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホールにて行われた第4回FFF-Sで、最優秀賞を受賞したのは当時大学4年生だった原彰吾(はら しょうご)さんでした。原さんに作品にまつわるエピソードや授賞式の様子、FFF-Sに参加した前後で変わったことなどについて、お話を伺いました。

FFF-Sとの出会いはたまたま。参加のしやすさから応募へ

この度は受賞おめでとうございます。早速ですが、原さんがFFF-Sに作品を応募したきっかけを教えてください。

大学在学中に一つは賞を取ろうと思っていて、完成後、コンペに応募できないかとネットで探していたんです。その中で、FFF-Sの応募条件が、僕の作った作品とたまたま合致したので応募したんです。
FFF-Sの応募条件は、学生であること、尺が4分から4分15秒以内の作品であること、型式が映像であることくらい。特に変わった条件はありません。コンペの種類にもよりますが、他よりも参加しやすいコンペだと思います。

受賞が決まった当時の状況は?

受賞が決まったのは、今年の1月頃で、卒業制作の提出が一週間後に迫った時期でした。昨年の8月頃に応募したので、忘れた頃に連絡が来ました。当時は大学院進学も考えていたのですが、やはり一度現場でアニメーションを学ぶべきだと思い、今はアニメ制作の仕事をしています。

今回、応募するにあたって、手応えはあったのですか。

ほとんどなかったです。受賞すればいいなとは思っていましたが、最後の最後まで最優秀賞を受賞するとは思っていませんでした。一次選考を通過したのも、すごくラッキーだなと思ったくらい。授賞式に行ったら、大きなスクリーンでの上映など思いのほか規模が大きかったので驚いたのを覚えています。

学生時代はFFF-S以外にも、コンペに参加されていたんですか?

そんなに数は出していませんでした。大学4年生の時に5分くらいの短編作品を作るようになってからはいくつか参加しました。例えば、東京アニメーションフェスティバルとか、CGアニメコンテストとか。在学中はわりとコンスタントに作品制作をしていました。

原さんの作品は、唯一アニメーション作品でしたね。受賞するにあたって、個人的に評価されたポイントは何だと思いますか?

これは審査員の樋口真嗣監督が言ってくださったことですが、対話形式にすることによって印象が軽くなり、見やすかったというのは大きいかなと思います。他の応募者の方が実写作品を作っていた中で、僕だけがアニメーションだったことも注目してもらえた理由かもしれません。

とてもメッセージ性が強い作品ですよね。反対に反省点はありますか?

反省点はいろいろあります。もう少し鑑賞者に寄り添った形で作れたらよかったと思います。製作期間は全体で3、4ヶ月くらいでしたが、音楽や音声はそれぞれ1、2日しかかけられなくて、自分で声を入れました。もっとしっかり練習しておくか、できる人にお願いしてクオリティを少しでも上げておきたかったです。

では、作品で一番こだわった部分を教えてください。

最初は自分の一人口調で淡々と進めていく予定でしたが、ちょっと重くなってしまいそうだったので、ビジュアルを少しかわいらしい感じにしたり、会話形式にしたり、鑑賞者が見やすくなるように工夫したことです。

4分という制限時間はどうですか?4分で言いたいことを言うのは結構難しいようにも思いますが。

言いたいことを言うのは2時間の映画であったとしても難しいと思いますが、4分というのは詰め込もうと思えば、しっかりとした作品を作れる時間でもあるので、大変よい時間設定だと思います。
今年から「ソニーミュージック賞」があると聞きました。ミュージックビデオも4分前後の作品が多いですし、音楽と映像の相性もよいので、いろいろ試してみるといいかもしれません。

授賞式では他の作家との交流も

続いて、授賞式の様子を伺います。授賞式では、特別招待作品も含め、13作品が上映されたそうですね。

はい。どの作品もすごく魅力的で、勢いがあるなと感じました。高校生の作家さんもいらしていて、若いのにかなりしっかりした作品を作っていたのには驚きました。
僕は当時、広島市立大学で映像メディア造形を専攻していて、周りにはアニメーションを作る学生はたくさんいましたが、実写の作品を作っている人はあまりいなかったので、FFF-Sで実写作品を作る作家さんと出会えたのがとてもよかったです。

なるほど。他の受賞者の方とは、どんなお話をされたのですか?

授賞式の後に交流会を用意していただいたので、そこで授賞式に参加した大体の方とはお話させていただきました。特に、「ダボ」という作品を作られた、牧大我さんのチームの方々とは交流会が始まる前から映画や今後の活動についてお話しして、たくさん刺激を受けました。一番印象的だったのは、好きな監督について話したことです。ヤン・シュヴァンクマイエルさんや黒沢明監督の話をして盛り上がったのを覚えています。
今もSNSでは繋がっているので、皆さんの活動も時々チェックしています。映像以外にも、絵を描いている方もいて、すごいなって思いました。また機会があれば、交流したいです。

他の受賞作品を見て、次回作のヒントはありましたか?

広兼光さんの『導(しるべ)』という作品はヒントになりました。深く心に残る作品だったので。小さな心境の変化でも、丁寧に描くことで美しい作品になるのだと改めて感じました。アニメーションとは違う、実写の良さが詰まっていたと思います。

審査員の方からの反応についても教えてください。

今回の作品は今まで思っていたことを落とし込んだ作品なので、大勢の人に向けて作ったというよりも、自分のために作った部分が結構大きいんです。だから、それを認めてもらえた、肯定してもらえたような気がしてとても嬉しく思いました。

今回、受賞して何か変わったことはありましたか?

自分の作品を作り続けるのは、難しくも楽しいことだと感じたので、これからも挑戦し続けていきたいなと考えるようになりました。受賞する前も、将来はできればアニメーション映画監督など、アニメや映像に携わる仕事をしたいと思っていましたが、受賞を機にこれからも作り続けていきたいという気持ちがより強くなりました。参加してよかったなと思います。

改めて、FFF-Sの魅力を教えてください。

学生が参加しやすいコンペであるということは大前提としてあり、やはり審査委員が豪華であること。第一線で活躍されている樋口監督が審査員をやっていらっしゃるコンペというのが最大の魅力かなと思います。
また、FFF-Sにはいろいろなジャンルを扱う作家さんが集まっていることも魅力です。実写、アニメ、CGなど、映像って本当に自由なんだなと改めて感じました。

学生だったらまたFFF-Sに応募したい

現在は、大学を卒業してアニメ制作の会社で働いてらっしゃるそうですね。

はい。アニメーションの撮影の仕事をしています。原画をタイムシートという指示書にあわせて映像にしていくという作業が多いです。最初は覚えることがたくさんあって大変でしたが、理解を深めていくのはすごく楽しいです。

アニメーションの作品作りを始めたきっかけは何でしょう?

高校時代にアニメーションの背景美術に興味を持ち、面白いなと思って始めたのがきっかけです。
大学在学中にユーリ・ノルシュテインさんやカレル・ゼマンさん、水江未来さんを知り、アニメーションにますます興味が湧きました。
『WANDER』制作時はアメリカのアニメーション作家のドン・ハーツフェルトさんに影響を受けました。簡単な棒人間みたいなキャラクターで緻密なアニメ作品を作っている監督です。どちらかといえばアート系の作品を見ることが多かったので、今はいろいろなアニメ作品を見て勉強しています。

社会人になってから映像を作ることに対して、学生の頃と変化を感じることはありますか?

学生の頃は集中して作品を作る時間がありましたが、今は結構時間がないなと切実に感じています。ただ、仕事をするようになって今まで知らなかった業界のことや専門的な知識を学べたのは大きなことでした。今は勉強しながら、自分の作品制作のための時間を作っていきたいです。

では最後に、今年のFFF-Sに応募しようと思っている学生に向けてメッセージをお願いします。

FFF-Sは、僕が学生だったらまた応募したいくらい魅力的なコンペです。チームでも参加できるので、いろいろな人に声をかけるのもありだし、僕みたいに個人で参加するのもありだし、自由に考えてみてください。
FFF-Sのようなコンペに応募して、自分の可能性を広げるというのは大変有意義なことだと思います。やりたいことを全力でできるのが学生の特権です。迷っているのであればぜひ参加してほしいと思います。

取材日:2021年5月25日 ライター:坂本 彩

学生のための短編映画祭 第5回フェローズフィルムフェスティバル学生部門
作品募集
応募期間:2022年8月1日(月)~10月31日(月)

学生のための短編映画祭 第4回フェローズフィルムフェスティバル学生部門

プロフィール
第4回フェローズフィルムフェスティバル学生部門 最優秀賞
原 彰吾
広島市立大学出身。大学4年次に短編映画「WANDER」で第4回FFF-S最優秀賞を受賞。現在は株式会社アスラフィルムに所属。

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