WEB・モバイル2005.10.01

クリエイターが企業家になるチャンスを広げた携帯コンテンツ

vol.6
コンテンツ開発・運営責任者
さて、今回の話題は携帯コンテンツです。モバイルコンテンツなどとも呼ばれますね。これが、まあ、今、大変なことになっている。一説には、産業規模は4000億円を突破しているとか。携帯電話ではなく、携帯コンテンツだけでですよ。 携帯コンテンツって何?という素朴な疑問を持つ人に解説しておくと、有名なところでは「着うた」「着メロ」のダウンロードサイト。あるいはお買い物サイトや、ゲームサイトなど。Iモードやez-Webを通じて、自分の携帯を楽しく、自分の携帯で便利に暮らそうという人が増えていて、そんな人たちが携帯サイトからの情報料にお金を払っている。携帯電話の普及でゲームが売れなくなったということが、とてもよく理解できる現象だと思います。 クリエイターが自分の手で、コンテンツ開発し、一攫千金(なんか下世話だな、起業家への道と言ったほうがいいかな)を手にする可能性を感じませんか? そんな携帯コンテンツの世界で、コンテンツを供給する業者をIP(インフォメーション・プロバイダー)と呼びます。今回は、NTTドコモで着メロ、着うたの配信サイトを運営するA社のコンテンツ開発・運営責任者X氏が取材に応じてくださいました。

下世話だけど、けっこう「おいしい」携帯コンテンツ

たとえば、月額300円支払ってくれるお得意さんが1万人いるとする。ということは、月額300万円の売上が確保できて、年間にすると……。しかも、料金の徴収はドコモやauが携帯通話料(使用料)の徴収とパッケージで行ってくれる!売上回収リスクなしで、1万人単位の顧客を得ることができるビジネスは、世の中を見渡してもそうそうないでしょう!

<X氏の証言> 当社も、そこにメリットを感じて携帯コンテンツに進出したわけです。厳密に言うと、ユーザーに課金できる月額の上限がFOMAで500円、MOVAで300円。ドコモさんは、そこから9%の料金徴収手数料をとっていますが、安いものですよね。明らかに、ここで儲けようとは思っていない手数料設定でしょう。携帯電話のシェアを確保するために、もっと言えば文化としての携帯電話を育てるために必要な投資と思っているんでしょうね。ユーザーに受け入れられるコンテンツ企画さえあれば、10万人、20万人だって掴むことは可能ですから、携帯コンテンツドリームは確実に存在します。

アイデアとサーバがあれば始められる

IPになるために必要なものは、アイデア(優れたコンテンツ)。そして、サーバ。誤解のないよう指摘しておくと、サイトは立ち上げるだけでなく、その後の運用・運営にもちゃんと責任を持たなければならない。

<X氏の証言> 初期投資にはサーバと専用回線は必須ですね。ただし今は、レンタルサーバもあるし、運用を、ノウハウのある会社にお願いするというやり方だってある。実際、たった3人でやっている有限会社がヒットコンテンツを運営している例もあります。そういう小さな会社が、たとえばインデックスさん、サイバードさん、バンダイさんのように10以上のコンテンツを運営している大IPと肩を並べてビジネスできている。携帯コンテンツの世界は、コンテンツで勝負しようと思う人には夢のようなフィールドなんだと思います。

コンテンツのジャンルは、まさに多種多様

携帯コンテンツは、ジャンルを大別すると実用系とエンタテインメント系に分けられる。実用系は天気予報や買い物サイト。エンタテインメント系は着メロやゲームの配信。買い物サイトのなかには、1日数千万円の売上を誇るものもあるが、この分野はビジネスモデルと販売商品のファクターが大きいのですぐに着手できるものではない。クリエイターがIPを目指すなら、やはりエンタテインメント系ということになるだろう。

<X氏の証言> 当社の進出している着うた、着メロは、爆発的なユーザー獲得をしたという意味で、携帯コンテンツの典型のようなジャンルですよね。ただ、ジャンルがメジャーになると競争も激しい。競合サイトが多いですから、コンテンツの開発や料金設定でユーザーを確保する努力は怠れません。ちなみに、このジャンルはJASRACへの著作権支払いもあるので、ビジネスのリスクはそれなりにあります。違うジャンルでも、それぞれ事情があるはずですから、参入する前には、その辺のリサーチはすべきでしょうね。当社でもそれなりに頭打ち感を感じているので、違う分野への進出を真剣に考えています。企業秘密ですが、ちょっとだけ披露すると、最近ユーザーを伸ばしている「男のデコメール」に着目しています。

毎月20~30増えている携帯サイト

ドコモの公式携帯サイトは現在約3500サイト。月に20から30の新規サイトがオープンしているという。これは、やはり、ハードルは決して高くないと解釈できる。

<X氏の証言> ドコモさんの場合、地域会社レベルで検討して、それを月に一度全国会議にはかって新規サイトを承認しているようです。当社も東日本のコンテンツ開発部署の担当者と折衝しています。当社とドコモさんの接点は、その担当者さん。既存サイトの運営の相談も、新しい企画の持ち込みも、すべてその方が相談に乗ってくださいます。新規企画に関しては、完全に却下されるということはないです。アダルトとギャンブルはご法度ですが、それ以外はOK。むしろ、「こうしないと通用しないですよ」「こうしたほうがもっと良くなるのでは?」というアドバイスをいただけます。たとえば、指摘されるポイントとしてポピュラーなのは初期ボリューム。壁紙を5000以上用意している既存サイトが競っているところに、「とりあえず200から」なんていう新規サイトが参入しても、まず最初から勝負にならないわけです。そういう初歩的なところを、ちゃんと指摘して、リードしてくれる。ほんとにありがたいです。サイトの数に環境的な限界はないし、ドコモさんは「ユーザーさんが喜んでいただけるなら、どんなものでも」というのが基本姿勢なんですね。要は、「頑張って成功してください」と応援してくれているわけです。コンテンツ開発の担当者さんは、明らかに私たちの味方で、持ち込んだ企画書を楽しそうに読んでくださいます。

新規参入はどうやって?意外な裏技も

で、コンテンツのアイデアがあるとして、新規参入するにはどうしたらいいのか?X氏に相談してみた。

<X氏の証言> たとえば、近くにIPの関係者がいたら、ドコモの担当者さんを紹介してもらう。自分でドコモさんに問い合わせの電話をしてもいい。とにかく、コンテンツ開発の担当者さんとコンタクトすることが王道ですね。ただし、ちょっとした裏技もあります。それは、ドコモのHPからのエントリー。「ドコモトップページ」→「iモード」→「作ろうiモードコンテンツ」と入っていってみてください(※欄外参照)。ここには、企画書を提出するエントリーフォームも用意されています。すごいでしょ。実は、これは、一般の人も気軽にコンテンツ提供ができるためのもの。有料の公式サイトだけがiモードを楽しくするんじゃない!という考え方なんですね。もし、アイデアはあるけど初期投資のお金は一銭もない!という人がいたら、ここで「勝手サイト」を立ち上げるところから始めるという方法もあると思います。

実は、既存コンテンツが強い。 でも、そんなフィールドに風穴を開けることができたら、 こんなに気持ちの良いことはないはず。

最後に、ちょっと厳しい実情も紹介しておこう。これを知って、チャレンジする気がなえてしまうか否かは読む人次第。興味が薄れないなら、ぜひ携帯コンテンツの世界を研究して、参入の機会を伺ってみてほしいと思います。

<X氏の証言> サイトの成功の目安となる「ユーザー1万人」を達成しているサイトは、全サイトの半分もありません。それ以外は悪戦苦闘しているし、毎月静かに閉鎖されるサイトが確実にある。ドコモさんは「閉鎖しろ」なんて言いませんが、立ち行かなくなって泣く泣く撤退していくわけです。私たちの分野では、競争が激化して、今は音質の競争。端末のメーカーが違えばスピーカーなどの環境が違うので、それぞれの環境ごとにベストの音が出せるようチューニングしなければならない。このコストがばかになりません。利益率を確保するのに苦労しているのが実情です。また、たとえばゲームなどの分野ではヒットサイトのほとんどは、既存のヒットコンテンツの移植版。その他のジャンルでも、すでにインターネットで実績のあるものの移植サイトがヒットの上位を占めていたりするのが実情です。まるっきりの新しいアイデア、新しいコンテンツで成功するのは、そう簡単なことではないんですね。

【欄外記事】 NTTドコモHPから企画書を提出するためのフォーム(仮登録フォーム)への手順 (1)「ドコモトップページ」 ↓ (2)「iモード」 ↓ (3)「作ろうiモードコンテンツ」 ↓ (4)「Iモードメニュー掲載基準」 ↓ (5)(掲載基準書面の下にあるボタン)「新規に情報提供をご希望の方へ」 ↓ (6)(Q&AのA6)「なお、詳細はこちらをご覧ください」 ↓ (7)<仮登録>画面

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