WEB・モバイル2010.03.01

テレビをインターネットにつなぐと、新境地が見えた。アクトビラという、新メディアの可能性。

Vol.59
株式会社アクトビラ マーケティング部 部長 田中信一郎さん
アクトビラ(acTVila)というネット配信サービスをご存じだろうか。もうすでに多くの対応機種が出回っている市販のデジタルテレビを、インターネットにLANケーブルをつなぐだけで(もちろん、ネット回線の契約が必要)、高画質の映像コンテンツが配信される最新のネットサービスだ。

基本的に、映画やドラマを自宅に居ながらにして入手できるサービスと理解していい。大きな特徴は、簡単なこと。国内大手の家電メーカーが共同出資して株式会社アクトビラ(以下、アクトビラ)を設立。対応機種には、必要なデバイス、ソフトウェアがすべてビルトインされている。ユーザーはLANケーブルをつなぎ、リモコンのアクトビラボタンを押すだけでかんたんにアクセスできるのである。
映像コンテンツの供給スタイルが変わる、だけではなさそうだ。なにしろ、それは、初めて本格的にお茶の間に進出したネットサービスなのだから。
アクトビラのマーケティング部長/田中信一郎さんが、インタビューに応えてくださった

ハイビジョン映像をストリーミング配信

アクトビラのネットサービスを解説した冊子には、「新しいテレビを買ったら、アクトビラを始めよう」「すぐに楽しめる次世代テレビ生活」といったフレーズがある。対応機種を購入し、LANケーブルをつなげばすぐに見えてくる、“次世代テレビ生活”とは、いったいどんなものなのだろう。

<田中さんのお話>
テレビをインターネットにつなぐだけで、レンタルビデオ屋さんが向こうからやってくると理解していただくのがわかりやすいですね。
本当につなぐだけです。特別な設定は不要ですし、マウスもキーボードも使わず、テレビのリモコンひとつでネットからさまざまな映像コンテンツを観ることができる。鑑賞は基本ストリーミングですが、一部作品はHDDにダウンロードもできます。

2010年初頭、接続端末数約180万台
今後も、さらに増えていくのは確実

昨年、デジタル対応テレビはエコポイントの追い風もあり、飛躍的に売り上げ台数を伸ばした。そのうち、約60%がアクトビラ対応機種で、今後も対応機種に参入する予定のメーカーは数多い。セットボックスなどの手間がまったく必要ない「対応機種」戦略が功を奏し、当初の予想を上回るスピードでアクトビラユーザーを増やしている。

<田中さんのお話> 入会金、年会費無料、コンテンツの購入料金だけという手軽さも受けたようで、2010年初頭で接続端末数は累計で約180万台、映像配信を楽しめるアクトビラビデオの接続端末数が110万台に達しています。 利用してみると、画質の高さには満足していただけるはずです。アクトビラの画像は、DVDのSD画質とはくらべものにならないくらい鮮明なハイビジョン画質。この画質で配信するために、圧縮方式にはMPEG4-AVCという規格を採用しています。もちろん接続回線が遅くては利用できませんが、12Mbps程度、つまり通常の光回線が確保できていればなんの問題もありません。

家電業界初、オールジャパンの取り組みによって
驚くべき速さで普及している

2007年9月にサービスが立ち上がり、文字通り「あっという間」に普及した感のあるアクトビラ。それもそのはず、同社と同サービスは、パナソニック、ソニー、シャープ、日立、東芝といった日本の主要家電メーカーにプラス、ソネットが加わり設立されたオールジャパンの企業体であり、事業計画なのである。デジタル時代に対応したテレビを入手した人は、自動的に潜在ユーザーとなるのだから。

<田中さんのお話>
テレビを中心に据えたネット文化を日本発で発信しようとの理念のもとに、大手メーカーが力を合わせたプロジェクトは、まさにこれまでになかった動きです。すばらしいことと思います。デジタルテレビ向けブラウザや動画の仕様などのデジタルテレビの通信機能は「デジタルテレビ情報化研究会」という家電メーカーを中心とした団体で策定されました。これほどしっかりとしたオールジャパンの体制があったからこそ、対応機種のリリースも進みましたし、現在では株主ではないメーカー様からも対応機種の発売が相次いでいます。
ちなみに、アクトビラでは、お茶の間でお楽しみいただくというサービス形態を真摯に受け止め、放送倫理規定に準拠したアクトビラ倫理規定を自主規制として策定しています。未成年へのペアレンタルロック(視聴制限)設定機能も装備しています。

これまでにない、メディアとしての可能性
それはつまり、新しいクリエイティブ案件の可能性

<取材対象者> 株式会社アクトビラ マーケティング部 部長 田中 信一郎さん アクトビラ公式情報サイト http://actvila.jp/

<取材対象者>
株式会社アクトビラ
マーケティング部 部長
田中 信一郎さん
アクトビラ公式情報サイト
http://actvila.jp/

自宅に居ながらにして映画などの映像コンテンツを楽しめる。それが基本性能としたら、接続端末が増え、メディアとしての到達力、伝播力を膨らませて行った先にあるのが無限の可能性。アクトビラは、そういう意味で、これまでにないまったく新しいタイプのマスメディアとなるはずだ。
新しいメディアには、新しいクリエイティブ案件。そんな期待が、かなり膨らむのである。

<田中さんのお話>
たとえば東京の単館系の映画館でしか上映していない映画を上映期間中に地方のファンに向けてアクトビラで配信し、かなりの成果をあげています。このケースなどは、お客様にとっても映画配給会社様にとってもメリットがあるモデルになります。これまでテレビにも、インターネットにもできなかったこと。ネットを通じて、高画質映像を大画面で観られるからこそのプロジェクトです。
広告メディアとしては、すでに、アクトビラ独特の到達力を評価して出稿を増やすスポンサーさんが生まれ始めています。テレビCMと同じ映像を配信するだけでも、明らかに視聴者認知の高い結果が出ていますし、ネットのインタラクティブ性を加味した内容のコマーシャルメッセージが送れる点が大きな可能性と認められているようです。視聴者の属性なども、しっかりとモニターできますしね。
アクトビラ配信を前提としたコマーシャル映像は、今後、専門知識とノウハウを持ったクリエイターに多くの仕事を発生させるはずです。さらに言えば、アクトビラ配信のための静止画、つまりグラフィックデザインも、大画面という条件をしっかりと消化したものが必要。そのような事情に精通したデザイナーが少ない今は、この分野に進出する良いチャンスだと思います。

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