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CREATIVEクリエイティブ好奇心

会社にとって何よりも大切なのは人!ドロイズの働き方改革

Vol.163
株式会社DRAWIZ(ドロイズ) 代表取締役 杉本 健一 氏
経営企画部担当 兼 人事・総務部長 成田 博之 氏
昼夜を問わず、納品に追われるイメージがある映像業界に、「働き方改革」についての声明を発表した会社が現れました。株式会社ドロイズは、「当日依頼は21時までに終了する内容のみ」「土日祝日の完全休業」「ノー残業デーの導入」などを宣言。この宣言に至るには、どのような想いや背景があったのでしょうか?杉本 健一代表取締役と、成田 博之経営企画部担当 兼 人事・総務部長にお話を伺いました。

「働き方改革」を宣言し、業界を変えたい

まずは、ドロイズの概要を教えてください。

杉本さん:2008年7月に設立した、3DCGを中心とした映像制作会社です。社員数は約20人で、3分の2がデザイナー、3分の1がプロデューサーやPM(プロダクションマネージャー)を含めた管理部門、という構成ですね。設立当初はCMやプロモーションムービーなどの広告制作が7割以上を占めていましたが、今はTVアニメ、映画、ソーシャルゲームなど幅が広がっています。

映像制作業界は、とても忙しいイメージがありますよね。

杉本さん:確かにそうですね(笑)。私もこの業界に入って20年になりますが、連日の徹夜は当たり前、24時間誰かが会社にいる、という状態でした。

なぜこの業界は勤務時間が長いのでしょうか?

杉本さん:その理由は、大きく分けて2つあります。
まずは、映像編集は企画、構成、撮影が終わった後の工程なので、スケジュールのしわ寄せが最後に来ること。その前の工程でスケジュールがずれ込んで、当初の予定の半分しか作業日が取れなくても、最初に決まっていた納品日はずらせないことがほとんどです。その結果、間に合わせるために不眠不休で作業することになります。

また、内部的な要因なのですが、我々のスキルが足りないこと。このスキルにも2種類あって、ひとつは時間内に求められているクオリティに到達することができないという、単純な技術スキル不足です。これはもう、求められているクオリティになるまでやるしかありません。 もうひとつは、コミュニケーションのスキル不足。どちらかといえば、こちらのスキル不足で、本来なら避けられる長時間労働をしてしまうことが多いですね。クリエイティブの世界は主観なので、正解は明確ではありません。ですが、ここで発注側と密なコミュニケーションを取って、不明なところは事前につぶしておくことで、お互いが思う正解のすり合わせができます。ここを曖昧なまま見切り発車で制作をスタートすると、ああでもないこうでもないと試行錯誤して時間ばかりかかってしまうのです。

そんな状況の中、なぜ「働き方改革」についての声明を発表したのでしょうか?

杉本さん:会社にとって何よりも大切なのは「人」です。これまでのような徹夜をして当たり前のような働き方では、長く続けることはできません。ひとりひとりに負荷をかけることを当然とするような映像制作業界は、業界としての魅力がなく、人材が集まらなくなってしまいます。
基本的に、業界に入るのは映像やCGが好きで集まってきた人たちです。好きで真面目だからこそ、なんとか自分の責任でやろうとしてしまう。

映像やCG制作は好きだけど、長時間労働が原因で業界から離れる人はいるんでしょうか?

杉本さん:年齢を重ねると、体力的に厳しくなりますからね。また、家庭を持って、家族との生活を考えたとき、映像やCG制作は趣味として続けて、時間がもう少し自由になる仕事に変える人もいます。映像が大好きで入ってきたはずで、その好きという思いは変わっていないのに、やるせないですよね。

作業のゴールを共有することで、クライアントとともに集中して質の高いクリエイティブを目指す

「働き方改革」の声明を発表した際の、周囲の反応は?

杉本さん:実はですね、ドロイズは今まで昼夜の無い働き方をしていたんですよ。だから長い付き合いのクライアントからは「まさかドロイズがこんなことを言い出すなんて!」と突っ込まれました。もちろん、不愉快な反応ではなくて、好意的な受け止め方をしつつも、親しいからこそ突っ込まれた、という感じですけどね(笑)。 同じCG業界からは、「素晴らしい取り組みだ」「一緒に構造改革していこう」と声をかけてもらいました。社長仲間には「何かやらなければならないと思っていた。ドロイズが最初に声を上げてくれたからには、自分たちも何ができるか考える」と心強い言葉をもらいました。
クライアントと共にコミュニケーションを通して、具現化、ビジュアル化し一緒に作っていく事が求められてる。クオリティが価値という時代はとうに過ぎてて、コミュニケーションを通した、作業の進め方が一番大事!一緒に作りあげることが楽しいと思ってもらえるように意識してます。
要望は受け止め、対応しながらも、人としての生活を守れる働き方をする必要がある。映像やCG業界でも同じことなのです。

社内はどのように変わりましたか?

杉本さん:以前より「早く帰ろう」という意気込みは出てきましたね。なかなか長年染み付いた仕事のやり方を変えるのは難しいのですが、会社として働き方を決めたからには、一緒に同じ方向を向いて実現しようとしています。

それでもやはり「どうしても!」とクライアントから依頼があり、帰りにくいこともあるのでは?

杉本さん:もちろんオーダーに対して、「帰るからできません!」と完全に拒否することはできませんし、あってはいけないことです。ですが、急なオーダーに対しては、「今日はここだけを直します。それを確認していたただいて、明日もう一度修正ポイントを確認しましょう」という会話をすれば、その日のうちにオーダーのすべてに対応する必要がなくなる場合もあります。今回の「働き方改革」の宣言を言い訳にして、「会社としての方針があるので、こういう解決策ではどうでしょう?」と、コミュニケーションスキルをアップするキッカケにしてほしいんですよね。
よく「しゃべってないで手を動かせ」と言われますが、私は180度違うと思います。「ゴールがわからなければ、手を動かすな」と言いたいです。クライアントが何を求めているのか、しっかり理解して作業の終着点を決めてから、そこに向かって集中して作業すれば、クライアントも自分もお互いに「今日はここまで」と納得して帰れるわけです。

会社と社員が同じ方向を向くために、クリエイターの評価を“共有”

ドロイズにとっても、クライアントにとっても、少し考えを変えるだけで、お互いにメリットがあるんですね。ドロイズでは、他にも人事的なチャレンジがあり、映像業界では珍しい人事制度を取り入れていると伺いました。

成田さん:人事評価制度の「OKR(Objective and Key Results)」ですね。OKRはITの業界では多用されている制度なのですが、映像業界では珍しいかもしれません。

杉本さん:人事部長の成田が中心となって導入したのですが、ドロイズの規模の映像会社では人事部がないことも珍しくないですからね。

成田さん:それだけドロイズは人を大切にしている会社ということです。人を大切にするためには、人事の役割が必要ですから。

具体的にはどのような評価制度なのですか?

成田さん:映像業界に限らず、クリエイターの評価は数値化しにくくて難しいです。OKRは目標と結果を“共有”することで、全社員と組織の目標を一致させて進めていく手法です。社員は期初に1年間何ができるか、貢献できるかを考え、目標を書き出します。その目標に対する成果を人事評価にフィードバックしますが、OKRは目標の達成度がストレートに評価になるわけではありません。OKRでお互いの目標を“共有”して、コミュニケーションを取りながら進行していくことが大事なのです。もちろん組織としてのOKRも必要なので、社長も作ります。ひとりひとりの社員は、社長が掲げるObjective (目標)に対して、何ができるかを考えるのです。

杉本さん:OKRを導入してから、上司と部下のコミュニケーションが増えました。

成田さん:OKRは途中で修正することも大事なプロセスなので、3ヶ月に1回などとチェックポイントを決めて、上司と面談の場を設けます。逆に、上司の目標達成には、部下の力が必要です。OKRはあくまで仕組みなので、達成するためにお互いに何ができるのか、考えて話して、実践していくことに重きを置いています。

杉本さん:一番のメリットは、OKRを通して会社と社員、上司と部下が同じ方向を向くことが出来ることです。同じ方向を向いていれば、楽しく仕事ができますから。楽しく仕事をするという意味では、月に1回チーム内のコミュンケーションをするための予算を取っています。単純に思い浮かぶのは飲み会なのですが(笑)、みんなでボーリングをしても野球を見に行っても構いません。
仕事についてのコミュニケーションだけだと、どうしてもギスギスしがちなんですよね。仕事を離れた場でコミュニケーションを取ることも必要です。

社員が充実した生活をしながら、楽しく仕事ができるように配慮されていることがとても伝わってきました!楽しみながら仕事をしていると、良いクリエイティブにもつながりますね。今後はどのような“人”が集まる会社にしていきたいですか?

杉本さん:これだけ環境の変化が目まぐるしい時代だと、5年後、10年後には何が主流になっているかわかりません。5年前と比較しても、インフラ環境もデバイスも大きく変化し、CGソフトの性能も大幅に向上して、簡単な操作でそれなりのCGを作れるようになりました。
ですが、環境が変わっても、何を求められているのか話し合いながら理解して、モノを作り出すクリエイティブの根本は同じです。CGソフトは単なるツールのひとつでしかないので、そこを追いかけるだけではなく クリエイティブディレクションもできる会社にしていきたいですね。自分が手を動かさなくても、周囲の優秀なクリエイターと協業して、モノを生み出せる力をつけていきたいと考えています。

取材日:2019年2月20日 ライター:植松 織江

株式会社DRAWIZ(ドロイズ)/ drawiz,inc.

  • 代表者名:代表取締役 杉本 健一
  • 設立年月:2008年7月
  • 資本金:3,000万円
  • 事業内容:映像制作
  • 所在地:〒169-0075 東京都新宿区高田馬場三丁目23番1号 YSKビル3階
  • URL:https://www.drawiz.co.jp/
  • 電話:03-5348-7040
  • FAX:03-5330-8008
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