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CREATIVEクリエイティブ好奇心

CGクリエイターがステージ演出!?レーザーを主軸に活動する空間演出チーム

Vol.154
Venus Laser株式会社 奥平賢浩氏、柴田有里氏
CDをはじめとする音楽ソフトの売上は長らく減少傾向にありますが、その一方でライブやコンサートのステージ市場は急成長を遂げています。観客を惹きつけるステージ演出の開発と提供が求められており、特にLEDとレーザーによる演出は、昨今のステージ演出を語る上では欠かせない要素でしょう。そこで今回は、レーザーを主軸とした空間演出を手掛けるVenus Laser株式会社の奥平賢浩さん(写真右)、柴田有里さん(写真左)のお二人にお話を伺いました。

中国で見たステージ演出に衝撃を受けて

素敵な場所ですね。ここ、アーツ千代田 3331にオフィスを構えた理由は?

奥平さん:Venus Laser株式会社は2年前に登記しましたが、それ以前からレーザーの仕事を行なっていたので拠点と機材を置けるスペースを探していたところ、ここを訪れた際にシェアオフィスの存在を知って入居しました。レーザーの光を調整するには長い空間を必要とするため、場所の確保が難しいのですが、元は学校だったこの場所なら長い廊下を使って調整ができます。また、ここはアート関係者には知られた場所でイメージも良く、周りから刺激を受ける事もありますし、入居者は施設を24時間自由に使えるという点も決め手でした。

レーザーを使ったステージ演出をはじめた経緯を教えてください

奥平さん:音楽系の大学に通っていたので照明やステージ演出を学んだ訳ではなく、卒業後は楽器の流通や音楽機材の輸入販売の仕事をしていました。2009年にカリフォルニアで行われる世界最大の楽器見本市であるNAMM Showを視察した際、クラブに関する展示だけを集めたスペースがあって、そこに展示されていた照明やレーザーに興味を持ち、そこで中国最大のレーザーメーカーと連絡先を交換しました。

当時のレーザーは軽自動車が買えるくらい高価で、個人で簡単に買える物ではありませんでしたが、2010年になってレーザーの購入を決断し、その旨をメーカーに相談すると「中国へ来たらどうだ?」と誘いを受け、現地の照明機材の展示会へ出向いた事が転機になりました。

当時の私は、日本のステージ演出が、アジア諸国では最も優れていると信じていましたが、中国の展示会で見たステージ演出は日本よりも凄かった。機材の性能はさほど高くはないのですが、中国特有のド派手なステージ演出に惹かれ、いつか日本で同じような演出を行いたいと思うようになりました。そしてレーザーを購入し、クラブでレーザー演出をはじめたのがキャリアのスタートです。

ゼロからスタートしたキャリア

中国の提携工場で製造している、オリジナルレーザー

では、レーザーによる演出は独学で学ばれたのですか?

奥平さん:独学です。当時、国内でレーザーをやりたいなと思っても、情報も無ければ教えてくれる人もいませんでした。ただ、レーザーメーカーと付き合いがあったのでレーザーの使い方、安全性、性能などについてメーカーから聞き出して学びました。

クラブでのキャリアをスタートさせた頃の話を訊かせてください。

奥平さん:当時はレーザーをやらせてくれる場所はまったく無く、個人がレーザーを扱う事に対しての安全性を危惧する方が多く、どこからも断られる状況が続きましたが、ある時に渋谷のクラブWOMB(ウーム)にて、イベントをしているオーガナイザーから「うちでやってみたら?」と声を掛けてもらい、ボランティアではありましたが、隔月でレーザーをやらせて貰えるようになりました。

ボランティアからビジネスに切り替わったタイミングは?

奥平さん:1年後位ですね。WOMBに通っていたイベント関係者から「個人でレーザーをやっている人がいる」と口コミで広がり、レーザーを頼みたいけど何処に頼んだら良いのか分からない、あるいは予算の都合で大手には頼めないイベント関係者から声が掛かるようになり、更に1〜2年後には、レーザーをはじめた時に目標にしていた新木場の国内最大級のクラブageHa(アゲハ)で行えるまでになりました。

まったく何も無いところからキャリアをスタートされた訳ですね。

奥平さん:そうですね。レーザーを1台購入し、ほぼ独学でキャリアをスタートさせて、そこから徐々に規模を広げて現在に至った感じですね。

照明による演出とレーザーによる演出は何が違うのですか?

奥平さん:照明もレーザーも同じ光ですが特性が異なります。家庭にあるLEDや電球などは光が広がりますが、レーザーはレーザービームと称されるように光は線で、どこまで行っても光は広がらず、距離があっても光が届きます。これらの特性を活かした「光の線」による演出がレーザーの特徴です。

時代が派手さを求めている

イベント業界で話題の”ドローンレーザー”

なるほど。最近ではクラブ以外にもコンサートや音楽フェスでもレーザーによる演出を目にしますが、レーザーがエンタメの現場で求められている理由は?

奥平さん:ステージ演出にもトレンドの波があって、実はレーザーも12〜3年前にエンターテインメント業界で流行った時代もありましたが、当時のレーザー機材はとても高価なうえに運用面で様々な制約があって簡単に扱える代物ではありませんでした。そんな中、プロジェクターを使った映像演出がエンターテインメントの主流となり、レーザーよりも映像演出に注目が集まる状況が続きました。その間にレーザー機材は発展を遂げて価格も下がり、パソコンとも繋げられるようになり、レーザーを導入する障壁がぐっと下がりました。

コンサートを例に言えば、音響と照明は必須で、それにステージ上のアーティストを映すカメラやVJなどの映像演出があります。さらに特効(特殊効果の意味)と呼ばれる煙や火花などの特殊演出があり、レーザーはその特効の一部です。今は音楽フェスが音楽シーンを支えていて、音楽フェスでは舞台装置と特効を存分に使った派手なステージ演出を求められる事が多く、映像演出だけでは空間に対して平坦な印象となってしまうので、観客にメッセージ性のある演出を届かせようとなると特効の出番であり、レーザーによる演出が求められている背景があります。

もう一方では、レーザー技術の発達があります。例えば、SNSに投稿されたメッセージをレーザーで文字として表示させることもできますし、レーザーによるマッピング演出も行うことが出来ます。これらの演出は大手のアトラクション施設でも使われ始めたため、一般の方がレーザーを目にする機会が増えた事も理由だと思います。

アジアでは中国がシーンを牽引

海外メーカーとのお付き合いが多いとのことですが、海外と日本では環境や演出に違いはありますか?

奥平さん:以前に比べてレーザーの導入コストが下がったので演出の幅と自由度が広がりましたが、日本には安全性に関する厳しい規制が存在し、なおかつ「レーザーは危ない」とのイメージが強く、他の国とレーザーに関するバックグランドが異なります。厳しい規制が存在しない他のアジアの国では使用するレーザーの台数から違っていて、演出もそれに比例してド派手で規模が大きくて、アジアでは中国がシーンを牽引しています。

規制の話がありましたが、国内ではレーザーに関する法整備は行われているのですか?

奥平さん:国内に業界団体は存在しますが、現状、レーザーを扱うのに必要な資格はありません。ただ、レーザーの特性を理解して扱わないと事故に繋がってしまうため、我々のお客様に対しては安全にレーザーを運用するための啓蒙活動を行なっています。

図面は引かずにCGでシミュレーション

プランニングやプレゼンで活用されるシミュレーションソフトRealizzer(リアライザー)の画面

レーザーの光を調整するには場所の確保が大変との事でしたが、リハーサルはどうされているのですか?

奥平さん:オペレーションは経験則に頼る部分が大きいのですが、プランニングやプレゼンではシミュレーションソフトを活用しています。私たちが輸入代理店を行うRealizzer(リアライザー)というソフトがあって、これはコンピューターの中でCGを使った仮想のステージを組み、その仮想ステージ内でレーザー、映像、照明などのシミュレーションが行えます。 シミュレーションソフトの需要は高まっていて、いまはステージ演出のプランニングをCGで行う事が一般的ですが、照明オペレーターの方でCGを扱える人は少なく、今後はCGクリエイターがステージ演出の仕事に参加して活躍するケースが増えるのではと思います。実際に弊社の柴田も照明の勉強をしていた訳ではなくて、専門学校でソフトウェアなどの勉強をしていたんです。

現場でのオペレーションに使用するPangolin(パンゴリン)の画面

現場でのオペレーションはどのように行なっているのですか?

奥平さん:これも私たちが輸入代理店を行うアメリカのPangolin(パンゴリン)と言うソフトを使います。

オペレーションはMIDI(電子楽器の演奏通信プロトコル)やDMX(照明や舞台効果制御プロトコル)のような汎用プロトコルで行うのですか?

奥平さん:レーザーで使える共通のプロトコルはそれほどなくて、Pangolin独自ですね。レーザーの制御については完成された部分と未完成の部分があって、まだ開発の途中だと言えます。

柴田さんはオペレーションを担当されているそうですが、柴田さんはどのような経緯でVenus Laserに参加されたのですか?

柴田さん:大学生の時にVenus LaserがWebや広告運用のアルバイトを募集していて、自分にはWebのスキルがあったので応募しましたが、イベント時の人手不足を補うために荷物の搬入や現場の設営を徐々に手伝うようになり、今では、オペレーションも行うようになりました。

では、元々はWebクリエイターだったのですか?

柴田さん:はい。オペレーションを行いつつ、現在もWEBサイトの更新を行なっています。

奥平さん:柴田は最近だとNHKの歌番組、携帯電話会社のTVCM、K-POPアーティストのワールドツアーや音楽系YouTuberなんかを担当しています。

クリエイティブ業界の方でもレーザーについては知らない方が大半だと思いますが、ディレクターや舞台監督からレーザーに対するディレクションはあるのですか?

奥平さん:ほぼないです。私たちは比較的音楽に特化した演出を多く手がけていたので、依頼も音楽に関する内容が多いのですが、楽曲や資料を参考にイメージに沿った空間演出を考えます。なので、プランニングから、ディレクション、オペレーションまで全てを対応する事が殆どです。

ツールとテクノロジーを活用し、クリエイター志向の高い演出を

ヴィーナスレーザー株式会社が扱うオーディオ&ビジュアルパフォーマンス用ソフトのResolume(レゾリューム)の画面

演出で心がけていることや、演出哲学みたいなものはありますか?

奥平さん:レーザーは特効の一種なので「盛り上げる場面で見せる」演出であり、ずっと見せ続ける事は難しいので、「わぁ!」と驚かしたり、「きれい!」と感じさせたり、瞬間的な感動を如何に持続させるのか。そして、私たちの考え方では光は水などと違って質量が存在しないので、光をゆっくりと動かす事で重さを感じさせたり、光が作り出す世界観を感じて貰えるように心がけています。光は実際には無いモノなので、無いモノを有るかのように見せるのは、ひとつの考え方になっています。

演出用データは誰がどのようにして作るのですか?

柴田さん:基本的には担当するオペレーターがデータを作成します。レーザーはいくつかのパターンがあり、例えばビームのような「線」、海のような「面」と言った特徴あるパターンを組み合わせて、そこに光を動かす速度、光の色と言った要素を掛け合わせて演出データを作ります。

演出のために勉強や努力をしていることはありますか?

柴田さん:コンサート、クラブ、企業の式典、大学の入学式など、様々なレーザーの現場がありますが、その中で最も自由度が高い現場がクラブです。クラブの現場では事前に音源が貰えないので、DJがかける音源に合わせてその場で演出を行わなければなりません。その際に凝った演出を試すなど、レベルアップができる場として臨んでいます。

クラブでは即興で演出を行なっていると?

素手で触れる事ができる最新鋭の火花。

奥平さん:そうです。クラブでの長年の経験があるので、他の現場で突然の演出変更や演出の手直しがあっても臨機応変に対応ができる事は私たちの強みです。

演出に関する新たな取り組みはありますか?今後の展望は?

奥平さん:例えばドローンです。レーザーを付けたドローンを飛ばして空中から演出を行なっています。私たちはレーザーがキッカケでスタートした会社ではありますが、レーザー以外にもVJやプロジェクションマッピングの現場で使用するオーディオ&ビジュアルパフォーマンス用ソフトのResolume(レゾリューム)の輸入代理店も行なっています。また、今年からは素手で触れる事ができ、室内でも使える最新鋭の火花を使った特効の取り扱いもはじめました。

日本にはレーザーを扱う会社が結構ありますが、それらは照明会社が提供するサービスの1つである事が大半です。私たちのようなレーザーを主軸にした独立系の会社は稀なので、他との差別化を図るためにクリエイター志向の高い演出を目指し、様々なツールとテクノロジーを使った最大限「魅せる」演出を行いたいと思っています。

取材日:2018年5月7日 ライター:小林孝稔

  • 企業名:ヴィーナスレーザー株式会社(VenusLaser Inc.)
  • 代表者名:奥平賢浩
  • 設立年月:2016年11月
  • 事業内容:
    レーザーショーのプログラム制作&オペレーション業務
    レーザー機器や周辺機器の販売
    レーザーショーなどのコンテンツ開発
    ステージレーザーやインスタレーションにおけるコンサルティング業務
  • 所在地:〒101-0021 東京都千代田区外神田 6-11-14 ArtsChiyoda 312C
  • TEL:03-5826-4561
  • URL:http://venuslaser.jp/
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