WEB・モバイル2016.02.10

誰でもサンリオキャラクターになれる!?「ちゃんりおメーカー」こだわりのクリエイティブ

Vol.126
株式会社サンリオエンターテイメント宣伝部 株式会社博報堂アクティベーション企画局 真鍋和弘さん、大久保重伸さん
パソコン、スマートフォンから、誰でも簡単にサンリオキャラクターが作れるサンリオ公式のサービス「ちゃんりおメーカー」。2015年7月の公開から利用者が約2,000万人に達する大ブレイクを果たし、2015年度の「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード」企業の部グランプリを受賞しました。そこで今回は、「ちゃんりおメーカー」の生みの親である株式会社サンリオエンターテイメント宣伝部の真鍋和弘課長代理と、企画開発に携わった株式会社 博報堂 アクティベーション企画局の大久保重伸部長を直撃!開発秘話や、クリエイティブ面での工夫、そして今後の展開など、興味深いお話をたっぷりとお聞きしました。
 

ピューロランド25周年のプロモーション施策「ちゃんりおメーカー」 スマホ世代の若い女性をターゲットに、100%デジタルのPR企画。

「ちゃんりおメーカー」スマフォ画面

「ちゃんりおメーカー」スマフォ画面

真鍋さん、大久保さんの業務内容、「ちゃんりおメーカー」での役割について教えてください。

真鍋さん:サンリオエンターテイメントの宣伝部で、中長期的な視点でピューロランドやハーモニーランドの存在感を高める仕事をしています。2015年に25周年を迎えたピューロランドは、小さい女の子連れのファミリー層がメインのお客さま層です。20〜30代の若い女性はサンリオの店舗にはご来店されますが、ピューロランドにはいらっしゃらないことが課題でした。その課題を解決すべく、25周年施策として博報堂さんからご提案いただいた企画が、「ちゃんりおメーカー」です。

大久保さん:私は博報堂でPRの仕事を長くやってきましたが、広告の仕事も変わってきて、ここ最近、どのツールや媒体を使ってどんな情報を発信するか、リアルでどんな体験をしてもらうか、さまざまなことを統合しながらプランニングすることを求められるようになってきました。私が所属している「アクティベーション企画局」は「行動」をどのように作っていくかを考える部署です。ピューロランドの25周年施策の競合プレゼンに参加して「ちゃんりおメーカー」をご提案したのですが、広告出稿も含めて100%デジタルで完結する企画としてご提案しました。

真鍋さん:2014年度はテレビCMなどのマス広告も打ちましたが、2015年度は企画も出稿先も決まったものはなく、イチから考えていただきたいとお願いしました。博報堂さんの提案が、我々の要望に一番ピッタリとハマった企画でした。

若い女性をターゲットとした集客施策だったのですね。

大久保さん:はい。ピューロランドは子どもだけではなく、若い女性を中心に大人も楽しめるテーマパークです。ピューロランドに行けば、そこにはカワイイものに囲まれる世界があり、とても楽しくてワクワクする1日が過ごせることを思い起こしていただくための施策として考えました。 若い女性がターゲットとなると、スマートフォンで楽しめる企画が一番良いだろうということで、自分の分身を作るという「実体験」をしながら、「自分事」化する企画として、自分自身がサンリオのキャラクターになれるツールがあったら面白いのではないかということで考えた企画です。

真鍋さん:従来の紙媒体に替わるものとして、Webやスマホを検討していましたし、将来を見据えて何か驚くようなことを仕掛けてみたいという気持ちもあったので、まさに「ハマった」企画でしたね。

大久保さん:デジタルの中だけで完結するのではなく、ピューロランドに行って楽しむための導線まで考えています。テーマパークに、普通は1人では行かないですよね。そこで、友だちを誘う口実となるツールがあると良いと考え、「ちゃんりお」を友達と共有して、「限定パーツがダウンロードできるからピューロランドに行こうよ」と誘うことができるように設計しました。もちろん、SNSでの拡散も視野に入れました。

サンリオチェックがないままサンリオ公認キャラが大量発生!? どのパーツを組み合わせても“サンリオっぽい"クリエイティブに。

作ってみました。(クリステ編集担当)

作ってみました。(クリステ編集担当)

開発にあたって苦労したことは?

真鍋さん:ジェネレーターを作ることはサンリオとして初めてのことでしたので、法務的なハードルがありました。

大久保さん:サンリオさんの“キャラクターみたいなもの"が、サンリオさんのチェックがないままにサンリオ公認として世に出ていくことになりますからね。

真鍋さん:サンリオとして守らなくてはならないところは守りながらも、使ってくださるユーザーが楽しめる要素をしっかりと入れなくてはならないと思いました。そのせめぎあいに苦労しました。

「サンリオらしさ」を残したクリエイティブとは?

真鍋さん:キティちゃんなど個々のキャラクターには、クリエイティブの細かい規定があるのですが、サンリオ全体としての規定というものが、特別にあるわけではないのです。各キャラクターのパーツは、もちろん各々チェックしましたが、一般的なパーツはお任せしました。

大久保さん:パーツは全部で2,000ほどありますが、担当デザイナーはサンリオキャラクターをとことん研究して、どんな組み合わせでもサンリオぽくなるパーツを作りました。例えば、面長のサンリオキャラクターはいないんですよ。だから、輪郭は丸っこい形ばかりで、面長の輪郭はありません。

想定外の広がりで広告出稿がストップ 若い女性とSNSのパワー、スピードを実感!

昨年(2015年)、7月10日に公開してから、あっという間に広がりましたね。

真鍋さん:サンリオの公式サイトとピューロランドのサイトにリンクを貼っただけで、2日間で想定外のアクセス数に到達しました。

大久保さん:公開後、iメディア(インターネットメディア)への出稿も予定していましたが、これ以上アクセスが増えるとサーバーがもたないと、慌ててストップしました。

真鍋さん:あまりの急速な広がりに、瞬時の判断が必要となりました。広告費をサーバーの増強費に回して、走りながら対応していきました。広告をストップできたのも、iメディアへの出稿だったから出来たことで、従来のテレビCMや雑誌であったなら止められませんでした。

どのように広まっていったのですか?

大久保さん:最初にサンリオファンが飛びついて、その後、キャラクター好き、アニメ好きといった層に広がっていったようです。アニメファンについては、最初から、ターゲットとして視野に入れており、アニメファンに響きそうなアイテムをとり入れていました。そのうちに女性タレントが自分自身の「ちゃんりお」や、グループのメンバーの「ちゃんりお」を作ってツイートし始めて、その後、爆発的にアクセスが増えていきました。

真鍋さん:そして、そこからはコントロール不可能な広がり方をしました。若い女性がこちらの想定外の使い方をして、それが面白がられてまた広がって……。というように、SNSのスピードとパワーを思い知りました。

想定外の使い方とは?

大久保さん:こちらの想像を超えるような工夫で遊ぶ人たちが現れました。好きなタレントやアニメキャラクターの写真を撮って「ちゃんりお」を作ることは想定していたのですが、ペットなど動物や、野菜の写真から作るというのは、とても考えられなかったですね(笑)

真鍋さん:私も担当として初期の頃からTwitterやInstagramをチェックしていますが、特に若い世代はハッシュタグをうまく使って、SNSから情報収集していることを実感しました。

大久保さん:リアルな世界で「そのキャラカワイイ!」と褒め合うのと同じようにSNS上で「いいね」をやり取りしたり、友だちや家族の「ちゃんりお」を作ってプレゼントする、「ちゃんりお」を介した新たなコミュニケーションが生まれたのです。それはまさにサンリオさんが大切にしてきた「コミュニケーション」なのです。サンリオさんの商品は、ずっと昔からギフトとして人にあげたり、人から貰ったり、また、持っているサンリオ商品を褒め合ったりする世界観の中で愛されてきましたから。

真鍋さん:サンリオが大切に作りあげてきた世界観の中に、「ちゃんりおメーカー」はあるんです。

2Dの世界が3Dで楽しめるのがピューロランドの魅力。 バーチャルパレードには15,000人が参加。

(左)株式会社サンリオエンターテイメント宣伝部、真鍋和弘さん(右)博報堂アクティベーション企画局、大久保重伸さん

(左)株式会社サンリオエンターテイメント宣伝部、真鍋和弘さん(右)博報堂アクティベーション企画局、大久保重伸さん

現在、約2,000万もの「ちゃんりお」が作られていますが、この驚異的なデジタルキャンペーンの結果は、リアルなピューロランドの集客にどの程度つながりましたか?

真鍋さん:今回の施策を数に直結させて効果を測定するの難しいのですが、ピューロランドの入場者数は増えています。若い女性の割合も増えているので、効果はあったと思っています。ただ、正確な数字を取っているわけではありませんので。今後は、「ちゃんりお」経由の来場者数を見える化する仕組みを考えていきたいと思っています。

大久保さん:自分が作った「ちゃんりお」をピューロランド内のバーチャルパレードに参加させることができる来場促進の仕掛けがありますが、すでに15,000人が利用しました。サンリオのキャラクターの世界は2Dですが、それを3Dで楽しめるのがピューロランドの魅力です。自分で作った「ちゃんりお」が動くバーチャルパレードは、とても人気があります。

大久保さんは、デジタルコミュニケーションを軸とした企画の経験が豊富だと思いますが、「ちゃんりおメーカー」を手がけたことで、新たな発見はありましたか?

大久保さん:これだけのパワーを持つ企画はなかなかありませんので、貴重な経験になりました(笑)。テレビ番組やWebニュースなど、メディアに取り上げられるたびにアクセス数が増えていきましたが、テレビ番組は、瞬間風速はすごいのですが、その後すぐに、アクセスがガクンと落ちます。一方、Webニュースは、瞬間風速はテレビほどではありませんが、アクセスはなかなか減りません。Webニュースがきっかけとなって、デジタル経由でじわじわ拡散しているのではないかと、推測しています。

「ちゃんりおメーカー」は資産としてマネタイズする局面に。 今後も、若い女性をターゲットに尖った企画を!

大人気の「ちゃんりおメーカー」ですが、本来であれば2015年8月末で終了の予定でしたが、今なお、サービスを提供されていらしゃいますね。今後は、どのような展開をお考えですか。

真鍋さん:ピューロランドのPRとしての使命は、すでに終了しました。今後は、ビジネスとして、マネタイズする局面に入っています。海外展開の第1弾として12月には韓国でサービスを立ち上げましたし、他社とのコラボレーションの企画もあります。

では、今後のピューロランドのPRについては?

真鍋さん:現在は、まだ検討中です。直接的なPRは、刺さる人には刺さるので明確な集客につながりますが、サンリオファンではない人には見向きもされません。「ちゃんりおメーカー」のような間接的ではありますが、分母の広いところから始められるPRも並行していかなくてはなりません。ただ、ソーシャルメディアで人気の出ないものは20〜30代の若い女性には見向きもされませんね。 サンリオとして守らなくてはならないところは守りつつも、尖っているものを世に出していくことが自分の仕事だと思っています。今後の展開にも期待してください。

取材日:2016年1月21日 ライター:植松織江

ちゃんりおメーカー

1602_chanrio_03 “ちゃんりお”はサンリオ好きのみんなのためのピューロランドオリジナルキャラクターです。あなたも“ちゃんりお”に変身して、サンリオキャラクターたちの「おともだち」になってみませんか?

 

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