ついに4K専門チャンネルの試験放送がスタート!次世代放送推進フォーラムに聞く「次世代テレビ」

Vol.108
一般社団法人 次世代放送推進フォーラム 馬場俊明さん
次世代テレビとして話題の「4Kテレビ」。メーカー各社から次々と4Kテレビが発売されていますが、ものすごく画質が良くなっているとは聞くものの、何がどのように今までのテレビと違うのか、どこまで普及が進んでいるのか、「本当のところ」はわからない人が多いのではないでしょうか。そこで今回は、6月より4K試験放送を開始した「次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)」への取材を敢行!担当の馬場俊明さんに、興味深いお話をたっぷり伺いました!

画素数、色域、1秒間の枚数が違う! より現実に近い映像が表現できる「4K」

「4Kテレビ」が話題ですが、そもそも「4K」ってなんですか?

「4K」とは、テレビなどのディスプレイ機器の解像度を示した言葉です。現在主流のフルハイビジョンテレビの画素数は、水平画素数が1920なので、約2000。1000は1K (キロ)という単位で表されるので、2Kテレビです。4Kテレビは、水平画素数3840で約4000であることから、4Kと呼ばれています。2012年から4K対応テレビが発売され始め、今では量販店のテレビ売り場では中央に4Kテレビが陣取るようになっています。

具体的に、どこが今までのテレビと違うのでしょうか。

大きな違いは3つあります。まず、先ほどお話した画素数が違います。ハイビジョンテレビは1920×1080画素なのに対し、4Kテレビは3840×2160画素と、約4倍の画素数があります。次に、色域が広いことです。自分の目で見た景色が、テレビカメラを通すとちょっと違う、ということがよくありますが、これはハイビジョンでは表現できる色に制約があるからです。4Kは微妙な色合いが表現できるので、より現実に近い画質になっています。最後に、1秒間の絵の枚数が多くなります。ハイビジョンが30枚(フレーム)だとすると、日本の4Kでは60枚と倍なので、スポーツなど動きが速い映像を、よりリアルに見ることができます。

映像の美しさ、鮮明さ、リアルさが違うということですね。

ハイビジョンと4Kを比べると、その違いは明らかに分かります。 4K対応のゲームが出てきたり、インターネット上に4K動画がアップされたり、さらに家庭用の4Kビデオカメラが発売され、子どもの運動会の映像などを美しい映像で残すことができるようになりました。ただ、放送は6月に試験放送がようやく始まったばかりです。

「4Kならではの表現」が楽しめる 4K専門チャンネルの試験放送スタート!

試験放送とは、4K用の番組が配信されている、ということでしょうか?

これまでは4Kテレビで2K用に作られた番組を見ている状態でしたが、試験放送では4Kカメラで撮影し、4Kテレビに流すことを想定した「リアル4K番組」を制作して放送しています。あらゆる面で進化した4Kでは従来よりも表現の幅が広がっているので、撮影のやり方も、番組の作り方も変わってくるんですよ。試験放送で配信する番組は、様々な4Kならではの表現にチャレンジしています。

「4Kならではの表現」とは?

バレエの舞台の中継番組を例にすると、これまでは主役に寄って撮影しないと、バレリーナの顔の表情、筋肉や指先の動きがわからなかったのですが、4Kならば引いた映像でも表情や細かい動きが伝わります。ですから、まるで観客席から舞台を見ているような、舞台全体が見渡せる映像を配信することができるのです。舞台全体が見渡せれば、これまでは不可能だった相手役や脇役の情報が伝わるので、見る側の選択肢が広がります。また、映像を作る側にとっても、自由度が広がってきます。

今までの舞台中継では、引きのカメラワークだと誰が誰だかわからなかったのですが、それがわかるようになるんですね!

顔の表情も、今までよりも細かい変化を捉えることができます。例えば「泣いている」ことは、これまでは涙をこぼさないと分からなかったのですが、4Kならばうっすらと目が赤くなるだけで「泣いている」ことがわかるようになります。俳優の感情表現の演じ方も変わってくるのではないでしょうか。 また、試験放送では、日本を代表する能楽師「観世清河寿」が、夜の暗闇の中、薪(たきぎ)の炎の明かりで演じた「薪能」の番組を制作しました。暗いので、踊る背景は「黒」なんですが、厳密にはその黒にも様々な色があります。今までは表現できなかった様々な「黒」を表現し、色域が広くなったことを活かした作りになっています。

スポーツ中継も違いがありますか?

先日のワールドカップの4K番組も放送しますが、舞台中継と同様にボールを持った選手をアップにしなくても、動きや表情がわかります。引きの映像で選手の背番号がわかるので、フォーメーションなど戦術全体が見渡せます。実はサッカー中継で4K番組を作るのはコンフェデレーションカップに続いて2度目なんです。FIFAの同じスタッフが制作しているので、4Kならではの撮り方や表現にも慣れていますから、2K用の映像との違いを感じてもらえると思います。

映画では4K化の流れが先行! 大画面の時代に合わせ、放送も進化する

クリエイターにとっては、4Kならではの撮り方がある、というのは興味深いですね!

明らかに4Kの方がキレイに撮れるので、今後の普及を見越して「残しておくべき映像は、4Kで撮影しておこう」という気運が現場で高まっていることは確かです。クリエイターならば、美しい映像を残しておきたい、と思うのは当然のことですよね。撮影現場では4Kのビデオカメラが増え、編集機器も4K対応が増えていますが、編集にはまだ時間的にも人的にもコストがかかります。画質が良い分、データも重く大容量となり、量産しなくてはならないテレビ番組を一気に4K化するのは難しいですが、映画やCMでは4K化がすでに進んでいるんですよ。

映画はフィルムのイメージが強いので、4K化が進んでいるのは意外です。

実は4Kの映画用機材が普及していて、4Kカメラでデジタル撮影し、4Kで編集をして、4Kで投影する映画館が増えているんですよ。映画はディスプレイが大きいですから、これまでの粗いデジタル画質を映画館で流すのは不可能でしたが、4Kが登場して可能になりました。フィルムの質感とは違うので好みはありますが、画質としては十分に鮮明です。

映像としてのクオリティにそこまで違いがあるなら、テレビ放送も4K化されるのは時間の問題でしょうか。

テレビ放送が4K化するには、コストの問題をはじめ多くの課題があります。しかし、技術は日進月歩で進化していきますし、この「次世代放送推進フォーラム」も業界全体で課題を洗い出して解決していくために作られた組織で、4K化に向けての動きは活発になっています。「ついこないだハイビジョンが出てきたばかりなのに…」という声も多く聞きますが、小さいテレビで映すならばハイビジョンでも十分でした。しかし、50インチの大画面テレビが普通となった今では、ハイビジョンの画質では厳しいものがあります。テレビの大きさが変わってきた時代に合わせ、放送も進化していかなくてはなりません。

8Kの可能性も模索中 2020年東京オリンピックは4Kの鮮明な映像で!

4Kだけでなく、「8K」も騒がれていますね。

8Kは、4Kよりもさらに画質が良く、音声も22チャンネルとなります。家庭用テレビとしての需要があるかどうかは、まだ検討が始まったばかりですが、パブリックビューイングや映画館ならば8Kの画質・音質を活かした臨場感のある映像を楽しめます。また、医療用や教育用として活用する検討も始まっています。

2020年には東京オリンピックがあります。せっかくのオリンピック、4Kの美しい映像で中継を見たいですね。

2020年には4K放送がポピュラーになることを目指しています。スポーツ中継では、スローにしても画質が良いので、これまでの映像とはまったく違うことがよくわかると思います。スポーツをはじめ、音楽や舞台のライブ中継番組は、今年中に4K試験放送で流す予定です。現在、試験放送はスカパー!プレミアムサービスと同じ124/128度CSデジタル放送のチャンネル番号502で視聴することができます。4Kテレビをご購入されている方はもちろん、量販店のテレビ売り場で見ることができる機会も増えてくると思いますので、ぜひ違いを実感してください。

取材日:2014年7月23日 ライター:植松

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