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CREATIVEクリエイティブ好奇心

色――デジタル時代の発色を考える(印刷)

vol.34
軽く、近代史の問題です。当然ですが、今、私たちの生きている社会は、いろんな「アフター~」です。アフター第2次世界大戦――正解。アフターバブル経済――その通り。アフター9.11.(同時多発テロね)――そうです。では、視野をちょっと、グラフィックデザイン分野に絞って見たとき、どんな風に言えるのか?アフターグーテンベルグ(印刷技術の父)?ちょっと古すぎますねえ。まあ、正解なんてないんだけど、「アフターDTP」(DTP/DesktopPublishingあるいはDesktopPrepress)という意見には、そんなに多くの反論はないのではないでしょうか。 1980年代後半にグラフィックデザイナーの間にマッキントッシュを使う動きが生まれ、90年代に一気に加速。印刷工程も巻き込んで、瞬く間にデジタル制作環境が広がっていった。いろんなことが変わったけど、激変と言えるのは、デザイナーがモニターで作業するようになったことでしょうね。今はもう当たり前の風景だけど、アイデア作りから納品までモニターの前でマウス&キーボードを操ってデザインができるなんて、80年代のデザイナーたちは想像もしていなかった。 そんなアフターDTPのデジタル化は、今も現在進行形。つまりは、いろいろ過渡期です。今回は、そんな過渡期の真っ只中にある「色」。DTP環境下の印刷の色彩についてレポートしてみます。東洋インキ製造株式会社(以下、東洋インキ)さんが、取材に応じてくださいました。

取材対象者 東洋インキ製造株式会社 印刷・情報事業本部カラーマネージメントセンター www.toyoink.co.jp

モニター上で素晴らしい仕上がりの デザインが、くすんだ色でしか刷り上がらない。

カラー印刷は、ご存知の通り色の3原色(色料の3原色とも言う)マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)にブラック(K)を加えた4色でさまざまな色を再現する(いわゆるYMCK)。一方、カラーモニターは光の3原色であるレッド、グリーン、ブルーで再現(いわゆるRGB)。前者はもとの光を遮る減法混色という理論で、後者は3つの光を合成する加法混色という理論で、それぞれ色を作る。ちなみに前者でマゼンタ、シアン、イエローを同量かけあわせると黒が、後者でレッド、グリーン、ブルーをかけあわせると白ができる。 カラー印刷もカラーモニターも、対象が持つ本来の色(写真原稿本来の発色も含め)をいかに忠実に発色させるかという課題を持つことは一緒。どちらもそれぞれに技術的な限界を抱えながら、関係者が少しでも100%の再現を目指して日々努力しているわけだ。 そういう背景を持つDTPデザインの現場に、たった今起こっている深刻な問題、それはカラー印刷とカラーモニターの発色の違いだ。一昔前まで、発色の違いとはつまり、モニターの発色が悪いことだった。ところが今は、特に液晶モニターのクオリティが上がった結果、印刷の発色の悪さがデザイナーやアートディレクターの頭を悩ませているのだ。「モニター上で素晴らしい仕上がりを見せたデザインが、くすんだ色でしか刷り上らない」という声が、あちこちであがっている。

【東洋インキさん】 Adobe社によって定義されたAdobeRGBという色域の広い色空間が定着するにしたがって、モニターの色再現性は飛躍的に良くなりました。それ以前には、モニター発色に印刷発色が劣るという問題など起こっていませんでした。つまり、そこで印刷がモニターに追い越されたと言ってもいいでしょう(笑)。気づけば印刷の世界では、ここ何十年もプロセス印刷用インキの*顔料は基本的に変わっていない。モニターの進化に追いつくには、原料の再検討から始めるべきだという機運が生まれました。

4色の印刷――プロセス印刷は、 RGBの色再現性にはかなわないのか?

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話が前後するが、今回話題としているカラー印刷は、あくまでプロセス印刷。つまり、4色印刷をさす。低コストにさまざまな色を再現する手法のひとつとして4つの色をかけあわせる技術領域の中の事実として、モニターに遅れをとりつつある。それが前提。 もしコスト無視でやるなら、印刷業界が本気で勝負をかければ、出したい色をすべて専用のインキで作る「特色」という方法で、ほぼ、どんな色でも再現できる。 4色プロセス印刷に一味加えた方策もある。それは、5番目、6番目の色を加えて目指す発色を追う方法。それはそのまま5色印刷、6色印刷と呼ばれる。ただ、これもやはりコストが高い。 で、今回はプロセス印刷でという前提でだが、印刷がモニターの発色に及ばなくなりつつある。という事実を示す資料が図1だ。色空間を示すガモット図上で、AdobeRGBで再現可能な色域がブルーのラインの3角形。内側で、5角形を作っているレインボーカラーの帯域が従来のインキで再現できた印刷の色域。この色域は、過去数十年にもわたって日本の印刷業界が築き上げた印刷発色のスタンダード「ジャパンカラー」を示すものでもある。印刷業界関係者の血と汗で築き上げた基準が、デジタル規格にかなわなくなっているという悲しい事実を表す図だとも言える。

顔料から見直した、まったく新しい プロセス印刷用インキ、『kaleido』(カレイド)。

予算のある仕事なら特色を使えばいい。5色、6色という技もある。だが、4色予算のある仕事なら特色を使えばいい。5色、6色という技もある。だが、5色以上は無理だよ!という事情なら、どうすればいい? そんな悩めるグラフィックデザイナーに福音をもたらすのが、東洋インキが開発した新しいプロセス印刷用インキ『Kaleido』(以下、カレイド)なのである。カレイドは、問題の根底に横たわっていた顔料の見直しから取り組んだ意欲的戦略製品。前出のガモット図の赤線の5角形が、カレイドの再現色域である。ジャパンカラーの小さな5角形を超えて、限りなくAdobeRGBの色域に迫っているのがわかる。 図やデータだけではよくわからないという方は、東洋インキHPのカレイドコーナーから印刷サンプルを取り寄せて、確認してみることをお勧めする (http://www.toyoink.co.jp/prod_ga/offset/kaleido/kaleido_order.html

【東洋インキさん】 ガモット図をご覧いただけばわかる通り、カレイドは全色域においてジャパンカラーを凌駕し、部分的にはAdobeRGBを超えているところさえあります。これまでは5色、6色でなくては再現できなかった色もカレイドならば4色で再現できる。そう考えていただいてけっこうです。私どもの耳にもよくデザイナーさんの「印刷の色はくすんでいる」という声が届いたものですが、カレイドを使われたデザイナーさんからは「カレイドは一度使ったらやめられなくなる」と、嬉しい評価が届くようになってきました(笑)。

具体的な方策は、印刷会社選びになる。

という見逃せない事実を知り、さっそくカレイドを使ってみようと考えてみたあなた。気持ちはわかりますが、デザイナーがインキを購入して、印刷機を回すわけにはいきませんね。できるのは、印刷工程を受け持つ人(つまり印刷会社さん)に、「カレイドを使いたいのだけど」と申し出ることでしょう。 やってみる価値はある。でも、現実は、「うちはまだ扱っていない」という返事になるかもしれない。機材として印刷システムを考えた場合、インキを替えるのは、そんなに簡単なことではないから。カレイドは新しい素材なので、少々高くつくかもしれない(これは、印刷会社さんのやりくり次第なんだけどね)。 どうしても鮮やかな発色の印刷が必要。カレイドの素晴らしさを確かめたい。そう確認できたら、取り引きのある印刷会社さんとよく相談してみよう。カレイドの使える印刷会社を探して見るのも手ですね。カレイド印刷が実施できる印刷会社は東洋インキさんのWebでも紹介しています。 (http://www.toyoink.co.jp/prod_ga/offset/kaleido/index.html)それくらいの労力を裂いても、決して無駄にはならないはずです。 最後に、取材の中で、東洋インキさんが教えてくれた、印刷業界との上手な付き合い方情報を紹介しておきます。

【東洋インキさん】 RGBプロセスがスタンダードになったデザイン界と、それをYMCKに置き換えるのを仕事とする印刷業界の間では、今でも発色の問題、データ交換などの問題が多く残っています。もちろん原因はいくつもありますが、たとえば印刷工程への理解が足りないデザイナーさんが増えているのもそのひとつ。「印刷のことを勉強して出直して来い」などと言っては元も子もないわけで(笑)、印刷業界がかなりの努力を重ねています。 その象徴とも言えるのが、プリンティングディレクターの存在でしょう。プリンティングディレクターとは、入稿から印刷工務へというフェーズでデザイナーさんの要望を聞き、印刷スタッフと技術的な問題解決をはかるプロフェッショナルです。もし新しく印刷会社さんを探そうとしているデザイナーさんがいるなら、その会社にどんなプリンティングディレクターがいて、どんな相談に乗ってくれるかを確かめて決めるのも手でしょうね。

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