WEB・モバイル2011.04.06

What’sソーシャルメディア? ~TwitterやFacebookが世の中を変え始めている~

Vol.71
(株)ループス・コミュニケーションズ 代表取締役社長 斉藤徹さん
ソーシャルメディアをまだ知らないなら、あのTwitterやFacebook、そしてSNSや通販サイトのカスタマーレビューなどがそれにあたるという説明でどうだろう。

インターネットを前提とした技術を用いて、個人と個人、個人と組織、組織と組織の間の情報発信が、ウェブサービスを経由し、それ自体が意味を持つコミュニティとなり、実社会に広く拡散し、メディアとして影響力を持ち始めている。諸説はあるが、チュニジアやエジプト、リビアの政変はFacebookなどのソーシャルメディアを民衆が活用したことによって情報・共感の伝播が一気に加速して起こったのだとまで言われている。
なんともすごいポテンシャルを持っていることだけは確かなようだ。
今回は、企業向けSNS構築やソーシャルメディアに関するコンサルティング事業を幅広く展開している(株)ループス・コミュニケーションズの斉藤徹さんが取材に応じてくださった。

「信頼」と「同好」で結びついた人間関係が、
ネット上で最適情報を得る原動力となる。

個人と個人、個人と組織、組織と組織の間の情報発信が、ウェブサービスを経由し、それ自体が意味を持つコミュニティとなる。なるほどとは思いますが、瞬時に全貌を理解できているとも思えない(笑)。そこで、斉藤さんにかみ砕いていただきましょう。

【斉藤さんのお話】

ソーシャルメディアで交友関係が広がる

ソーシャルメディアを使うと何が実現するかと言えば、これまで、猛烈な行動力で日々何人もの人に会っているセールスマンでもなければ不可能であったような、交友関係が広がります。つまり、多くの人と知り合えるのです。ものすごくニッチな趣味を共有する友人だって、すぐに見つかります。それを仕事に生かすか否かは個々の価値観次第ですが、参考までに、私の場合は現在取り組んでいる仕事の7割以上はソーシャルメディアを通した交流から生まれたものです。

情報過多を解決するのは「信頼」

ネットの世界には、情報があふれています。情報過多が、問題になっている。黎明期にそれを解決したに見えたのがグーグルに代表される検索エンジンですが、ユーザーは足りないものがあると気づき始めていました。必要なのは、「信頼」でした。エンジンが検索し、示してくれる情報は所詮キーワードによるピックアップでしかない。求める人に最適の情報を届けてくれるとは言えません。信頼できる人が選び推薦してくれるような情報がほしい。そこを解決するのが、ソーシャルメディアと言えるでしょう。

「信頼」と「同好」で最適情報を探す

信頼できる友人は僕に対して嘘をつかない、僕の嗜好などをよく知ってくれていて、僕にふさわしいアドバイスをしてくれる。それこそが、求めていた最適情報です。
ネット上にデジタルデータがたくさんあるというだけでは届かなかった最適情報が、人を介すことによって届くようになるわけです。ソーシャルメディアにおいては今後、「信頼」で結びついた人間関係と同時に、「同好」による結びつきもますます強くなっていくでしょう。

双方向のコミュニケーションが必要なソーシャルメディアに
おいては、ただのファンページを作るだけではだめです。

「信頼」と「同好」のコミュニティが、メディアになる。となれば、クリエイター諸氏の活躍の場にも少なからず変化が訪れるはず。ループス・コミュニケーションズのサイトからブログにアップされている記事を紐解けば、昨夏の「ハイボール・ブーム」がソーシャルメディアの活用で仕掛けられたことなどもわかります。
新しいメディアの誕生によって、何がどう変わり、どんなことが求められるようになっているのか。解説していただきました。

【斉藤さんのお話】

マスメディアからソーシャルメディアへの予算シフト

ソーシャルメディアの普及により、企業のマーケティング予算が変化します。今までマスメディア中心だった予算のうち、一定の割合がソーシャルメディアにシフトしていくからです。それにより、「ソーシャルメディアを使うクライアント企業」と、「そのクライアント企業から委託される周辺業務」において、クリエイティブニーズが増えると予想されます。

Web制作、運用担当者のニーズが増える

従来は、一般ユーザーが自社サイトに流入するルートは、バナーやSEO、リスティング広告などがメイン。しかし足元で、そのルートが大きく変化し始めており、現在は検索エンジンからに近いぐらい、ソーシャルメディアからユーザーが流入しています。この流れを受けて、企業においてはソーシャルメディアに精通したWeb制作担当者、システム開発担当者のニーズが増えるでしょう。また、ソーシャルメディアに関する「企業内の運用担当者」のニーズも増えるでしょう。 双方向のコミュニケーションが必要なソーシャルメディアにおいては、ただファンページを作るだけではダメで、ユーザーときちんと交流し続ける必要があるからです。
企業側のニーズを受けて、ソーシャルメディアの特性を理解してトータルな戦略を練ることができるコンサルタントのニーズも高まるでしょう。従来のマスメディアを使ってアテンション、インタレストを行い、ソーシャルメディアで口コミに乗せて評判を広めていく…などといった「マスメディア」と「ソーシャルメディア」を融合したトータルなコミュニケーションデザインを設計できるクリエイターは、高く評価されます。一方で、「企業と媒体を仲介して利ざやを取る」という、従来型の広告代理店業務は衰退を余儀なくされるでしょう。企業のソーシャルメディアへのシフトにより、リスティング広告やバナー、SEO周りのニーズも、相対的に減ると見られます。

<インタビュー対象者> 斉藤 徹さん (株)ループス・コミュニケーションズ/代表取締役社長 ループス・コミュニケーションズ公式サイト http://www.looops.net

<インタビュー対象者>
斉藤 徹さん
(株)ループス・コミュニケーションズ/代表取締役社長
ループス・コミュニケーションズ公式サイト
http://www.looops.net

「デジタルネイティブ」世代に脚光が当たる

そんな中、最も強みを発揮できるチャンスがあるのは、「デジタルネイティブ世代の若手」。現在20代前半のクリエイターのみなさんは、物心ついたときから周りに携帯やネット環境があったはず。ソーシャルメディアリテラシーが高く、ネットワーク上でどのようにコミュニケーションを取れば円滑に進むのかを、感覚的に理解しているでしょう。ソーシャルメディアの分野でいえば、そういった若手クリエイターたちに明らかなアドバンテージがあります。だからこそ、若手はもっと積極的にソーシャルメディアを活用して、会社に対して自分の強みを最大限にアピールしてほしいですね。
このように、近い将来に影響が出てくるのは以上に挙げた仕事になりますが、中期的にはその限りではありません。企業とソーシャルメディアは切っても切れない関係になる…という時代がすぐにやってきます。どんな業種・職種の人であっても、ソーシャルメディアに慣れ親しみ、その特性を知っておくことが、クリエイターとしての必須条件になってくるでしょう。

取材/2011年3月22日

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