学生メディアセンター/なないろチャンネル~コンテンルと人材を生み出していくフレームづくり~

Vol.67
ななチャン(団体) 代表 副代表 冠那菜奈さん、石幡愛さん
まず、興味を持った方は学生であろうが社会人であろうが、気軽にアクセスしてみるべき。学生メディアセンターと銘打っているけれど、なないろチャンネル(以下、ななチャン)に特別な参加資格はありません。いろんな人が、いろんな“色”を持ち寄って、いろいろに混ぜ合わせることで何が生まれるか。そんな意欲的な実験(あえて、そう言わせてもらいます)をしているのが、ななチャンという団体です。参加する場合、ななチャンという団体に加わるというより、ななチャンという「場」に飛び込み、そこで何ができるかをみんなと一緒に楽しむと考えるのが正しいでしょう。 はい、不思議です。とても不思議な団体だし、活動です。不思議を少しでも解決すべく、代表の冠那菜奈さんと副代表の石幡愛さんにお話をうかがいました。ななチャンが運営事務局を置く秋葉原のアートセンター3331 Arts Chiyodaにお邪魔しました。

ななチャンの活動は、コンテンツを生むことと同時に
そのコンテンツのためのフレームもつくろうというもの

ななチャンは3つの柱を中心に活動しています。それは、取材(Report)、交流(Communication)、企画(Event)。興味を持ったことを取材し、出会う人々との交流を通して、企画を産んでいくというスキームを活動としています。そしてそのすべての過程を外に向けて発信し、見せていく。
さまざまなアイデア、表現がクロスオーバーされ、リアルタイムに発信される中で、何が生まれるか? 誰も予想がつかない。だから面白い。
そんな活動形態に興味を持ち、参加したいと感じた人は、まずメールで(info@nanachan.tv)連絡するところから始めよう!

【冠さんのお話】
常時募集しているメンバーには、運営メンバー、コンテンツメンバー、取材メンバーという区分けがありますが、ほぼ便宜上のものと言っていいです(笑)。
ななチャンの運営事務局には現在、私と石幡を含めて7人の運営メンバーがいますが、皆、最初は取材や企画に参加した結果、運営にも携わることになった経緯を持っています。ななチャンの活動は、コンテンツを生むことと同時にそのコンテンツのためのフレームを構築していこうというものなので、運営管理と企画立案が一体となるのはとても自然な形なのです。

とにかく出会いたい、交流したい、そして何かを生み出したい
そういう渇望を持つ同世代に向けて

【冠さんのお話】
一言で言うと、東京でアートやクリエイティブを志しても、それに必要な発表の場や集まる場所が、あるようで実は少ないように思ったのです。自分自身が美大にいることもあって、閉塞感を感じていました。だから、まずは場所を設け、活動したい人たちの交流をサポートしようというのがななチャンの始まりでした。2009年10月にプログラムとしてのななチャンが動き出し、私は翌年1月に参加。当面の目標として3月の3331 Arts Chiyodaプレオープン時の1ヵ月間の展示イベントに向けた取り組みを行いました。
年度が変った4月以降は、運営管理・企画立案をアーティスト主導で実践している団体、一般社団法人非営利芸術活動団体コマンドN(以下、コマンドN)に移行し、通年の活動を開始しました。もともとこのコマンドNというのは、コンテンポラリーアートに関わるアーティスト達が集まり企画・運営するアートプロジェクトを中心に活動する団体として1997年から活動しています。地域再生、横断的かつ有機的ネットワークの構築などを独自のアートプロジェクトによって実践し、発信する側と受信する側の双方に成り立つコミュニケーションの在り方を様々な地域で提案してきました。このななチャンもコマンドNの独自プロジェクトとして、学生がメディアを自分たちでつくり発信し、文化形成を現場で実践していく場なのです。

ななチャンの存在意義については、私の立場からは世代論として語れます。私にとってコマンドN中村政人さん達を中心とした世代の方々の背中を見ていると、様々な機会を通して出会った仲間と試行錯誤を楽しみながら企画を生み出していて、「つながり」というのを強く意識させられます。ネット環境が整った私達の世代は、その頃にくらべて交流しやすく、仲間をつくりやすいように思われていますが、実感値としてはむしろ、出会う場や交流する場が乏しい様に感じます。とにかく出会いたい、交流したい、そして何かを生み出したい。そういう渇望を持つ同世代に向けて、「ななチャンがあるよ」と言えるような存在にしていきたいと思っています。

参加者がしっかりした報酬を得られるシステム
フレームをより成熟させていく

ななチャンのコンセプトに呼応して、大きなモチベーションを見つけ出した例が、まさに冠さんであり、石幡さんです。冠さんは以前から自分の中にあったクリエイティブビジネスのおぼろげなイメージを具現化する場として、石幡さんは大学院の研究テーマの地域教育のフィールドワークの場として、ななチャンの大きなポテンシャルに心躍らせているようです。

【冠さんのお話】
ななチャンはコンテンツを生み出すシステムとしての可能性、コンテンツを生むクリエイター、アーティストを育てる場としての可能性の両方を持ち合わせたプロジェクトだと思うのです。たった今も、自分で見つけたテーマを地道に追いかけている人がたくさんいるはず。そんな人たちがここで出会い、コラボレーションして何が生まれるか。そしてそんな経験を通して、彼らがどんな方向に力を伸ばすか。とてもわくわくしますし、これまでつくってきた繋がりからも色んな可能性を確信しています。
環境として約束はされていませんが、私の個人的な構想として、この活動は少なくともあと5年は続けたい。その中でいくつかの成果を見せながら、たとえば参加者がしっかりとした報酬を得られるシステムなど、フレームの部分をより成熟させていくのが私の役割だと考えています。フレームの成熟に成功すれば、その、フレームづくりのノウハウが利益を生んでいくかもしれませんし。

【石幡さんのお話】
地域教育とアートなどの文化活動に共通しているのは、「続けるのが難しいこと」です。私がななチャンに興味を持った点は、そこにあります。私が中心になって行っているワークショップ活動に「みつばちプロジェクト」があります。このプロジェクトは取材を申し込む際のマナーやメディア戦略のコツをみんなで一緒に考えるものですが、そのような取り組みから「続けること」のヒントを見つけていっています。もちろん、それらの一連のフィールドワークは、ちゃんと博士課程の研究にもなっています(笑)。私自身は地域教育に関する研究を継続しながら、今後もななチャンにも関わっていきたいと考えています。

「メディアは自分でつくる!」
若者の情熱が、面白いカタチになりつつある

UstreamやTwitterを駆使して情報発信する姿だけをとらえると、まったくもって今様な軽快な遊び感覚のメディアと思えてしまう。でも、その成り立ち、運営者の思いを知ると、ちょっとこれは、これまでにない、かなり潜在能力の高いチャレンジだとわかってきます。あっ、誤解のないよう付け加えると、参加希望者は本当に気軽にアクセスしてみるべきと思いますよ。
クリエイティブビジネスや人材育成のシステムの可能性を追っている冠さん、地域教育の研究の一環として取り組んでいる石幡さん。ユニークな背景を持った若者たちが運営者としてコンテンツメーカーとして情熱を傾けている「ななチャン」なるプロジェクトに、注目していたい。

取材:2010年10月

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