
『フォーカストーク』は、視覚障害者などがパソコンを利用する際に音声でサポートする画面読み上げソフトウェア。ITのバリアフリー、特にアクセシビリティにおいて大きな意義を持つアプリケーションだ。その『フォーカストーク』を開発・販売しているのが、株式会社スカイフィッシュ。2005年9月に栃木県宇都宮市で旗揚げしたベンチャー企業である。技術分野、経営戦略、開発方針のどれをとっても、とてもユニーク。“ベンチャー”という言葉をそのまま体現するかのような同社のこれまでと今後について、代表取締役の大塚雅永さんがお話ししてくれた。
なぜ宇都宮市で?なぜアクセシビリティで?という質問から始めましょう。
そうですね。私は地元の高校を卒業後、東京のコンピュータ開発会社に就職し、後に宇都宮に戻りました。1994年からは国や県が出資する第3セクター「システムソリューションセンターとちぎ」(SSCT)で働き、事業部長を任されるまでになりましたが、2005年に独立し、株式会社スカイフィッシュを設立。今日に至っています。
アクセシビリティというテーマには、SSCTで出会い、その結果独立することにもなりました。画面読み上げソフトという技術にもっと賭けてみたいという私とSSCTの経営判断が合致しなかったため、夢を実現するために会社設立することとなったのです。
フォーカストークデモ画面
デモを見せていただくと『フォーカストーク』の読み上げ機能の素晴らしさが十分にわかります。SSCTはなぜ、この技術に賭けてみようと思わなかったのでしょうね。
私がSSCTの経営者でも、同じ判断をしたと思います(笑)。現在、日本全国で障害者手帳を持っている視覚障害者は約31万人と言われます。ですが、そのうち就労可能な方は約3分の1以下といわれています。つまり、マーケットとしては数万人で、さらにその中のパソコンを使いたいと思っている方がターゲットですから、市場規模は決して大きいとは言えません。独自技術を持つからといえども投資を集中させると判断するのは、リスクが大きすぎると考えるのは間違ってはいないでしょう。
でも、大塚さんは賭けてみようと思った。
視覚障害者のお役に立てるという意義は、捨てがたかった。もちろんそれだけでは経営ビジョンが厳しいのはわかっていますから、『フォーカストーク』の技術を汎用ソフトに展開するという目標を持って会社設立に至りました。
フォーカストークデモ画面『フォーカストークVer2.0』の開発にあたっては、マイクロソフト社の全面協力も得ていますね。
マイクロソフト社は、WindowsやWindows上で動作するマイクロソフト社のアプリケーションが、高齢者や障害者を含めたすべての人たちが利用できるための活動を積極的に行っています。そのためアクセシビリティへの意識は高いし、バリアフリーの開発に取り組むサードパーティへの理解も深い。とはいえ、その姿勢の真摯さには、正直私も驚かされたというところです。『フォーカストークVer2.0』をウィンドウズVista発売と同時にリリースしたいと申し出たら、日米のマイクロソフト社がまさに全面協力してくださいました。同社のOS開発チームからは、「ベンチャー企業にここまで情報開示するのは異例ですよ」というメッセージをいただきました(笑)。
『JukeDoX』『フォーカストーク』の技術を使った汎用ソフトとは、『JukeDoX(ジュークドックス)』のことですね?
『フォーカストーク』の画面読み上げ技術を応用して開発した、文書読み上げ・録音ソフトウェアです。たとえば複数の文書ファイルを音声再生リストとして一覧、再生できます。使っていただければわかりますが、これがかなり便利。従来のアイコンに頼った視覚での文書管理に比べて視認性も高く、音声による見出し確認はユーザーの負担がとても軽い。英語の読み上げにも対応していて、Office2007(Open XML)フォーマットであれば、見出しやプロパティの編集もメモ感覚で行えます。これらは、マイクロソフト社の最新技術であるOpen XML テクノロジーを利用したからこそ実現できた機能で、同分野でのユニークな製品化事例になると思います。販売価格は18,900円で、11月30日に一般ユーザー向けにリリースされます。2008年2月には法人向けパッケージもリリース予定です。
設立2年目にして、かなり順調な歩みですね。
当初の想定内ではありますが、まだまだこれからです。『フォーカストーク』の他にはスカイプ簡単操作ソフト『Sky Helper』開発や京セラ様のユニバーサル携帯への技術提供など、地道ながら私たちにしかできない実績を積み重ねることができていると思います。今は、『JukeDoX』の売り上げがどこまで伸びるかに期待を寄せているところですね。
スタッフ構成は?
私も含めて社員は全6名。営業担当の私以外は、全員開発専門の技術者です。ちなみに全6名のうち私を含めた5名が株主で、私の実家の2階にある6畳2間をヘッドオフィスとして活動しています。
まさに、ベンチャー。しかも、今まさに創成期の伝説を作っているという時期ですね。栃木県を拠点とした活動は、今後も続く?人材確保などに不利な点はない?
栃木県でもITビジネスに参画できることを証明するために始めた会社ですから、今後もその方針に変わりはありません。業務のクライアントやパートナーはほぼ東京にありますが、今や新幹線を使えば50分で来られる距離ですからね。まったく問題は感じていません。今日も、このインタビューの前に2件の打ち合わせを済ませてここ(恵比寿)に来ています。人材に関しても、入社後に育成することを前提とすれば、地元の大学や専門学校からのリクルーティングで十分に賄えると考えています。
代表の大塚雅永さん(右)と開発部の渡辺歩さん(左)開発系企業が郊外に拠点を置くメリットもありますね。
大いにあります。毎日1時間も2時間も満員電車に揺られる就労環境は、開発者にとって決して理想的とは言えません。私自身、みずからの経験からそう思いますし、それが地元に戻った理由ですから。通勤ラッシュがなく、仕事を離れればゆったりとした生活環境がある。私の場合、それは大好きなテニスを思う存分楽しめる(笑)ということを意味します。これは、ひとつの理想的環境と言っていいと思います。
最後に、今後の経営ビジョンについて。
今後はアクセシビリティ関連技術を基盤に、テスティング(検証・評価サービス)、WEB/インターネットサービス(システム設計、開発・運用サポート、コンテンツデザイン)を大きな柱として事業展開しようと考えています。誰にとっても使いやすいITインフラ、ITサービスを提供していくことが、私たちの使命。社名が、空中を浮遊する未確認飛行物体「skyfish」に由来するように、既成概念を打ち破り、不可能を可能とするような取り組みを続けていこうと考えています。
| 株式会社スカイフィッシュ | |
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代表取締役/大塚 雅永 |
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