元号が変わるから

番長プロデューサーの世直しコラム Vol.147
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木 光

もうすぐ平成が終わります。
これを書いている時点でまだ新しい年号は分かっていません。
平成が終わるから、に呼応するように、今まであって当たり前だった
建物、物、お店、人がなくなったり辞めたり引退したりしているような気がします。

平成が終わる時は、昭和が終わる時のように喪に服す必要がないですね。
ただただ新しい時代の幕開けを喜べばいいんです。
平成が終わるという事が一昨年決まって準備期間ができた。
これで踏ん切りをつける人が沢山いて、建物の老朽化と人の高齢化で
昭和の後半からやってきた商売を引退しようという人が沢山いるような気がします。

新しいオリンピックのために古いオリンピックの時にできたものが建て替えられています。
歩道橋は街のバリアフリー化という考え方から否定されて全国で撤去され始めている。
恵比寿の名物カラオケスナックミッキーも閉店。名物の喫茶店や洋食屋さんなんかも
どんどん閉店していく。寂しい限りです。

僕は平成元年に東京に出てきました。20歳でした。
平成は、自分が実戦に突入した時期で、ボクの人生の丸ごとに当てはまります。
そして50歳になりました。昭和で過ごした20年より平成で過ごした30年は
色んな事がありました。番組などで色んな特集が組まれているのでいうまでもありません。

東京に出てきたあの時から世の中は随分変わりました。インターネットと外国人。
ベルリンの壁がなくなりソ連が崩壊したところから平成は始まりました。
あれからロシアも中国も中東もどんどん変わって世界情勢が変わりました。
日本のサッカーがW杯に出るのが当たり前になり、大リーグに沢山の日本人がいて
日本人がやったことのなかったことを次々に成し遂げていったのも平成でした。

そんな中、まだ日本人は頑なに変化を拒んでいるような気もします。
変わる必要がないと思っている人たちがいっぱいいるのも事実だと思うのです。
嘘ばっかりついている大人もいる。都合と建前がバレないとでも思っているかのようです。

実際は世の中の新陳代謝が急速に進んでいるような気がしませんか?
宮城県に女川という街があります。
東日本大震災で壊滅的な被害を受けて住宅の7割が流されてしまった街です。
そこで復興のテーマになったのは、「若者に託す」ということだったそうです。
『復興に約10年、まちづくりの成果が分かるのに、さらに10年かかる。だから、20年後に責任がとれる30代、40代にまちづくりをまかせて、還暦以上は口を出さない』と決めたそうです。 結果、色んな人やアイディアやお金が集まり、急ピッチで新しい考え方の素晴らしい街づくりが進んでいるそうです。

この感覚が大事なんだなと思いました。
女川は大人たちの判断で若者に復興を任せると決めたそうです。

20年後の未来を見て今を判断する。そういう考えかたはできているのでしょうか?
そろそろ、日本全体でも平成に生まれた人たちに任すべき事が多いいんじゃないか?と。
平成の終わりに引退を決意した人たちは、そこを思ってるんじゃないか?あとは任せたよ、と。
そういう意味ではこの年号が変わるタイミングは若い人たちにとっては
とても大きいチャンスなんじゃないかと思えるのです。

その反面、この10年の日本の社会的価値観は、「冷笑主義(シニシズム/Cynicism)」が高まっていると言われています。
「冷笑主義(シニシズム)」は、社会や権威には冷めた目線で接し、先のことを深く考えるよりも、今の状態を楽しもうとする価値観だそうです。 これは団塊ジュニア世代を中心に広がっている気分で、「積極的に社会に関与する」意識から「社会とは一定の距離を置く」意識の方向へ変わっていってるそうです。 実際、明るい未来が描きにくい、この10年の社会状況の変化。いよいよ実感が増してきた人口減少や少子高齢化社会、年金問題。震災や環境問題の深刻化に伴う社会不安が強烈にある。 つまり、一生懸命やってもいい事ないじゃん、って気分になってるってことか?
わからなくもないけどいいことでもない。

変わる必要がない、と思っているあと5年で逃げ切れる人たちの中に、20年後のことをおもんばかっている人がどれだけいるんでしょうか? 既得権益者がなかなかどかないから、どっちらけちゃって若者が逃げ出したくなってるんじゃ
ないんでしょうか?どこが民主主義だこれ?ってことも多いし。

今50歳の中途半端な僕の世代は、悪くなっていく世の中をなんとか変えてやろうと思っていてもできなかった不甲斐ない世代です。見て見ぬ振りしていた感が強い。その後悔はあります。 その結果、一億総中流社会だったのが、格差社会です。中間がいなくなった。
総じて貧乏になってきたのは、外国の人が物が安いと言って日本に来るようになったことでわかります。
「科学の力は、仕事を楽にして生活を豊かにしてくれる。にもかかわらず、私たちは幸せになっていない…。それは、私たちが科学の使い方を知らないからだ」とアインシュタインは言いましたが僕の世代はまさにそういう世代。若者ほどネットやパソコンに精通してないし、AIに仕事してもらうんじゃなくて仕事を奪われる心配をしている世代です。

だから、ある一定の準備期間をおいて、一気に矢面に立つ世代を若返らせた方が多くの人が幸せになるんじゃないかと思うのです。おっちゃんたちは、若者が困ってなんか聞きにきたときだけ口を開くというスタンスで。 おっちゃんたちも何もしなくてもいいと言うわけではありません。
若者に決定権を持ってもらう、というだけで、これまでの経験や知恵は、その若者たちの
判断に十分に役立てればいいんです。新しければなんでもいいというわけじゃないけど
老朽化したシステムは、元号が変わりオリンピックやろうっていうこの時期に大きく変わるチャンスだと思うのです。

そうなったら、俺どうしようかな?中途半端な年齢だな。
若者たちのためにもうチョコっと頑張るか。既に老害か?これを書きながら悩みます。
新しい年号は何になるんだろうなあ?「光」って字が入っていたら
頑張れるような気がします。あほくさ。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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