第120回 なんの根拠もありませんが

番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光

なんとなく最近思うことがあって、なんの根拠もありませんが書いてみようと思います。

いつになってもどこに行っても「不安」は消えないんです。
でもその不安の原因を突き詰めていくと、多分、老後に破産してしまうんじゃないか?
仕事やめなきゃいけなくなってから食っていけるだろうか?
という不安が圧倒的に大きいような気がします。

僕は奥さんも子供もいませんからまだ無責任にこんな事言ってられるんでしょうけど。
子供がまだ小さかったり、いっぱいいたりする同僚は大変だなあと思うのです。
そういう人たちに言うと怒られちゃうかもしれないですが。

僕はよく物を買います。

身体壊しちゃうくらいお酒を飲んだり、ギャンブルしたり、キャバクラにハマったり、は一切しないですし、まずいご飯は嫌いだけど、グルメでもない。
車の運転は下手だし緊張するので車も持っていないし。
前に書いたようにお一人様だから自由になるお金は多分同世代の平均より多いです。

だから、かっこ悪いけど買い物大好きです。

買い物で一番楽しいのは買うか買わないか悩んでる時と、買うものを決めて探している時だと思うんです。
インターネットは、いまやそのためにはものすごく有能なツールです。
何か必要になって、欲しくなって、その物について調べている時にいろんな情報に出会います。それも楽しい。
世界中から送ってもらう事ができるし、いらない知識ばかり増えていきます。

よく買うのはスニーカーで、僕がお店で靴を買う様を見て、「ティッシュを抜くように靴を買う」と表現した人がいて、上手いこと言うなあーと感心した事があります。
そう言う時も、実はすでに徹底的に調べています。
欲しいと思う靴と出会ったとこだけ見たら、確かにティッシュを抜いているように見えるかもしれませんが、そうでもありません。

自分の中にある、その物を買うか買わないかの基準は、それを買ったら「気分が上がるか、上がらないか」です。
買いたい物のことを調べて、いいんじゃないかと思ったら、それでどれだけ楽しくなるかを考えます。想像するっていうか妄想するんですね。本当に欲しいものはどんどん欲しくなるしいらないものは欲しくなくなっていきます。

欲しいと思ったものが何日かたつと欲しくなくなる感覚は、寂しさを伴った安心のような気持ちなんですが、
実はその気分があまり好きではない。

欲しいと思ってそれを欲してる状態がやっぱり気持ちいいからです。
何も欲しくない時は、元気がない時やそれどころじゃない時が多いからかも知れません。
まあ、ものだけじゃなくて旅行やコンサートや映画を見るのもそうなんですけど。

日本に住んでるからこんな事言ってられるんだろうなあ。
平和でバカみたいですね。
幸せなバカですが。本当に平和な場所で暮らしてるなあ。

そして最近思うのは、お金は使うと戻ってくるということ。
根拠はありませんが。

家を買って、大きい借金をした時は大きい仕事が増えたりします。
頑張らなきゃなあ、と本気で思うからなんだと思います。
気合いが電波となって人に伝わる。
ちなみに2回買ったマンションは、2回とも買った時より高く売れました。
使わないと当たらないラッキーもあります。

Facebookに、買ったものを自慢に見えないように苦労して、アップしたりすると、その物に関連した仕事が舞い込んできたりします。
不思議だなあ、と。
よく考えると、買った物について楽しそうに語っていると、「ああ、君、そう言うのにも詳しいの?」と思う人がいて、たまたま担当してたりすると声をかけてくれるのでしょう。
そう言う意味でCM作る商売はいい商売ですね。趣味の情報が、仕事に活きる知識になる時がある。
いらないと思いがちな知識もあながち無駄じゃない。

田舎の母親は、たまに会うと、
「貯金ばせんばいかんばい」といつも言います。
「少しはあるんだよ」
「ハワイに行きたくていつも500円玉貯金してるし。
2年で30万円貯まったんだよ」と。
「そげんことじゃなかばい」

僕が2年浪人した時、父親から、
「お前が浪人しなかったらベンツが買えた」と怒られましたから、本当は自分の物買ってないでお金を返さなきゃいけないんですね。早いうちに返さないといなくなっちゃうし。

そう思いながら、こんな風に自分の物欲を正当化することを気楽に書いていますが、生活が楽しくなって元気が出るなら、お金は使った方がいいなあとも思うのです。
「なんかあったら」とその「なんか」を特定できないのに漠然とお金を貯めるよりは全然いい、と僕は思います。

冒頭に書いた「不安」、つまり老後の生活のため、病気の心配などは本当に拭い去れないんだけど、楽しくなることを我慢して、老後の病気に備えたりしてたら何が楽しくて健康に生きてるのかがわからなくなるという不安を産むんじゃないかと不安になります。

そんなの、人それぞれですからなんとも言えませんけどね。
貯金が趣味の人もいらっしゃいますから。
好きなことやってればいいだけですな。

自分は、なんかにお金を使う事で「快適に暮らしたい」の他に、「新しい何かに出会いたい」と思ってるんだと思います。
本を買うときとか旅行に行く時のそういう気分。
自分で稼いだ金で、元気なうちに新しい何かに出会って自分の可能性がもっと広がったような気分になる。
日々の寂しさや漠然とした老後の不安に勝つ、自分の手法なんじゃないか?
それが自分にとっての散財の快楽なんじゃないか、と消費の欲求を正当化してしまうんです。

それどころじゃない人もたくさんいる中で呑気な話ですが。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。