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COLUMNコラム・ザ・ちゃんこ

CMを放送中止に追いやる心

番長プロデューサーの世直しコラムVol.86
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光

最近、立て続けにCMが放送中止になるという事件がおきました。

カエルのキャラクターが登場する缶チューハイのCMに、“ アルコール問題を扱う団体”から「キャラクターを使った表現方法が未成年の関心を誘い、飲酒を誘発しかねない」との指摘を受けたため、このテレビCMの放送を中止。

航空会社のCMでは、出演しているタレントが<金髪のかつらと付け鼻>という<日本人が思いつく外国人>の格好で出てきた事に、“外国人視聴者を中心に”「人種差別だ」という抗議が入ったため、このCMの放送を中止し、別バージョンの放送を開始。

最近のコマーシャルは、制作段階でものすごい精度の商品管理を強いられています。企画の時点で、やばそうな表現はいくら面白くても顔をしかめられて却下になるし、ギリギリの表現は広告代理店の中にある法務部の審査を仰ぐことになる。 そうやって出来上がった企画を、今度はテレビ局の局考査に持ち込み、この表現はオンエアできるとかできないとか、それはもう、「そんなことまで?」ってくらい、いろんな事を言われて企画が戻ってくる事があります。

薬事法や金融商品取引法、著作権法、食品衛生法、旅行業法などなど。ありとあらゆる法律や自主規制がCM表現に立ちはだかり、本当にがんじがらめの状態で、なにか面白い物を作ろうとしている―――。 日本の広告代理店の企画者たちはマジで大変なのです。 だから家に帰るのが遅くなる。

もう、本当にいろんな事を心配して心配してそのコマーシャルの企画は出来上がります。それを企業にプレゼンすると「もう少しインパクトが欲しい」的な事を言われて、また頭を抱えて会議室でみんなでうなる。みたいな事を繰り返すわけです。 そうやって作られているコマーシャルには、違法性は一切ありません。 出来上がったコマーシャルは、何重ものチェックを受け、ちゃんと法律家の判断をあおいで作られているからです。

それでも前途のような苦情はよせられ、「万人に嫌われたくない」というコマーシャルの性質上、企業はあっさりとオンエアを中止する。という判断をせざるを得ないのです。

法律上問題が無い事に対しての苦情は、ただの好き嫌いです。 見ている側のごく一部の、ただの好き嫌いに対処するために、数千万円の制作費と数億円の媒体費がどぶに捨てられるかと思うと、なんともいたたまれない気持ちになります。

加えて、そのコマーシャルの制作をプロデューサーとして直接担当していたとしたら、その苦情を行ってきた人と直接お会いしたい気持ちになるでしょう。 「ちょっと今からいきますから~。」 企画から撮影、仕上げまでにどれだけの人数とお金がかかっているか、心配事と怒りともめ事の調整とでどれだけ頭を下げて回るか。出来上がったコマーシャルフィルムは一本一本がもう実の子みたいな気分ですから。

宮崎駿さんの映画「風立ちぬ」に対して、日本禁煙学会が、喫煙シーンが多すぎる。という理由で難癖をつけた事がありました。うるせえってんだよ。としか思いませんでした。暇な奴らだなあ。と。ジブリの対応もなんとなく丁寧にでもそんな感じで終わった様な気がします。

コマーシャルはそうは行かない物です。こういう苦情への対応は昔からあった様な気がするし、聞き流される事も多かったようですが、最近は特に企業が敏感に反応します。SNSの普及で企業に対してクレームをつけやすくなったし、視聴者がちょいと一言つぶやいた事が簡単に世間に拡大して行くので、その影響力は、本人たちが思う以上に大きい。炎上したりする。 映画と違って、コマーシャルは企業のイメージ戦略なのですから、視聴者の反応には企業はすごくナーバスですね。

だけど、そういうことを考えて行くと、とっても簡単にコマーシャルをつぶす事ができるという事がわかってきちゃいます。同業他社のコマーシャルをぶっつぶそうと思ったら簡単なのです。ルールはありませんから。どんな汚い手を使ってもやられた方が泣き寝入りするだけ。というような状況になっています。 そこを、なんとかしておかなきゃいけないと思うのです。

カエルのキャラにクレームをつけた団体は公表されるべきだし、団体自らこれこれこういう理由でクレームつけてオンエアを中止に追い込んだ。というプレスリリースを発表すべきだと思うのです。それでフェア。 カツラと付け鼻のどこが人種差別なのか、どこの民か知らんけどお前出てきて説明してくれ。ちゃんと聞くから。と思う。

SNSで苦情をばらまいた人もちゃんと氏名を明かされる。何県在住のなにがしさんから貴重なご意見を頂いたので、それを真摯に受け止めコマーシャルを中止する事にしました。損害額は何億何千万円です。と。 そうしないと、僕がその会社の株主だったら納得行かない様な気もするんですけど。

顔を隠せば何でも言えるぜ。という風潮は気に入らないのです。

また、苦情から即放送中止という流れではなく、この件についての第三社委員会を作って、苦情を審議するというようなシステムを早急に作らないとほんとうにやられ放題の様な気がしてきます。対企業テロですよ。 苦情を言った方に義が無いという裁定が下ったとき、その結果起きた事での 損害賠償をさせる責任はあると思うのです。

そんな理屈をこねながら、本当は思う事がある。 いちいち人のやってる事にケチつけてんじゃねえぞ。お前らの好き嫌いなんか知るか。これが駄目なら代案の企画もってこい。コピーも書けよ。面白くないと明日までに100案書かすからな。それより、そんな暇あるなら自分の人生のことをちっとはまともに考えろ、ばかたれ。

これが僕の本音ですけどね。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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