WEB・モバイル2010.01.06

アメリカだからこそ?の実験都市

Dig It! NYC Vol.15
Dig It! NYC 藤井さゆり

あけましておめでとうございます。

年末年始にかけてアリゾナに旅してきました。人と車とビルがひしめくNYから、大自然を味わうため飛行機で6時間。空港からレンタカーを借り、ものの10分も走ると、どこまでも続く壮大な山々と無数のサボテンの群れ。短い旅でしたが、心身ともにリフレッシュすることができ、改めて自然の偉大さに気付かされました。

そのアリゾナ州北部の中心都市であるフラッグスタッフから空港のあるフェニックスへと帰る途中、面白そうなコミュニティがあると聞き、「ARCOSANTI(アーコサンティ)」という所へ行くことにしました。

フラッグスタッフから車を走らせること約1時間半。砂漠の中に不思議な建物が突如現れたのです。そこでいったい何が行われているのか。あれがアーコサンティと呼ばれるものなのか。いぶかしがりながら行ってみると…。

アーコサンティ看板「アーコンサンティ」入り口看板

アーコサンティ看板「アーコンサンティ」入り口看板

"アーコサンティのロゴの下に、AN URBAN LABORATORY?(はてなマーク付いてます)と書かれています。都市研究所??意味がよくわかりませんが、どうやらこの建物自体がアーコサンティのようです。

確かに外観は未来的ラボラトリーのような雰囲気…。ちょうど入った10分後に施設紹介のツアーが始まるというので、それに参加してみることにしました。

アーコサンティ外観

アーコサンティ外観

なんとアーコサンティは、1970年にパオロ・ソレリというイタリア人建築家が提唱した実験都市なのです。そこには、アーキテクチャー(建築)とエコロジーから生まれた「アーコロジー」という理論が根底にあるそうです。 パオロが提唱したアーコロジー理論は、人口を1つの場所に密集させることで、車の移動といったエネルギーの無駄遣いをなくし、ソーラーや風力による自己発電で環境を保護しながらサスティナブルな生活を送るというもの。アーコサンティはアーコロジー理論を具現化したものであり、最終的にはそこで5000人が生活ができるような都市を理想としているそうです。がしかし、未だ計画の一部しか完成しておらず、今も建設中とのこと。

現在、ここでは約100名が生活しており、居住棟のほか、シアター、食堂、プール、イベント広場があり、ソーラーや風力発電の設備も見られました。1970年に建設が開始されたということもあるかもしれませんが、少しミッドセンチュリーな雰囲気を感じさせます。

完成後の模型(グレー部分が現在建設されているところ)完成後の模型(グレー部分が現在建設されているところ)

完成後の模型(グレー部分が現在建設されているところ

 カフェ

カフェ

ドアの両サイドのガラス部分が凝ったデザイン

ドアの両サイドのガラス部分が凝ったデザイン

居住棟

居住棟

 

アーコサンティでは、アーコロジー理論を中心としたワークショップやセミナー、インターンシップが実施されていて、ワークショップを終えた生徒達がアーコサンティの建設に携われるそうです。

ソレリ・ウィンドベル

ソレリ・ウィンドベル

収入源としては、施設ツアー、ワークショップの授業料、「ソレリ・ウィンドベル」の売り上げが主。「ソレリ・ウィンドベル」は元々、アーコサンティ建設前にソレリが奥さんと作り出したもので、現在は入居者が制作しています。銅やセラミックを原料とした独特な質感とデザイン。風鈴にも通ずる、涼しげな心地よい音がします。

環境的にも非常に有意義な試みのあるアーコサンティですが、行政からの支援はなく、ソレリの個人のプロジェクトとして開始されたものです。1970年当時に、すでに環境を考えたアーコロジー理論を生み出したことはかなり画期的ですし、40年に渡ってソレリの精神に賛同した多くの人々がアーコサンティの建設に携わっているということは素晴らしいことだと思います。

 
ユニークな形をしたベルの制作工房

ユニークな形をしたベルの制作工房

しかし実際に、入居者の手によって進められているアーコサンティの建設はかなりのスローペースであり、温室、アトリウム、ギャラリー、サイバースペースといった複合巨大施設の建設をはじめ壮大なソレリのプランが完成するのは遠い未来。また、ツアーでは、ベルの説明を詳しくしており、購入をすすめられているような気がして「資金繰りが厳しいのでは…」と要らぬ心配をしてしまいました。

とはいえ、そんな心配を抜きにすれば、施設内のデザインも個性的で面白いものでしたし、アーコサンティ自体はクリエイティブな試みであると言えます。広大な土地を持っているアメリカだからこそ、こんな実験的なことが可能なのでしょう。宿泊施設もあるようなので、次回はぜひ利用してみたいと思います。

■アーコサンティウェブサイト http://www.arcosanti.org/

Profile of 藤井さゆり

藤井さゆり

東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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