突然ですが親になりました

Vol.164
CMプロデューサー
番長プロデューサーの世直しコラム
櫻木 光

 

僕、今年52歳になりましたが、ついに第一子を授かりました。

7月末に女の子が元気に生まれてきてくれました。

 

この子が成人する時は僕は72歳です。

それを考えた時にずいぶん悩みました。

ちゃんと育てていけるのか?この先どんな社会になっているのか?

気候変動はだいじょうぶなのか?年金ってちゃんともらえるのか?

コロナは収束するんだろうか?

色々考えてしまいますが、とりあえず元気に出てきてくれてよかったです。

 

仕事柄、人のしないような経験をいっぱいしてきたような気持ちになって暮らしていましたが、

こんな歳になってまだ、こんな基本的な経験をしていなかったかと思ったら愕然としました。

みんなこれやってんだよなあ。と。

とにかく出産と赤ん坊の世話は何より大変です。お母さんは尚更大変。

こんなことも知らなかったのか?というようなよく分かってない事の連続で、泣く赤ちゃんの対処に夜中もおろおろします。

 

この子が寝ている姿をじっとみていると、いろんなパーツが自分に似ていて可愛いんですが、

なんか、諸手を挙げて喜びいっぱいになれるほど無神経でもありません。何かが怖くなります。

 

本当に怖いのは、最近の気候や世の中の動き。

この子が大きくなった時に、この国や地球が健全でいられるのかどうかと言うことです。

 

50歳を迎えたくらいの最近までは、世の中の現象が気になって文句ばかり言ってきたけど、

自分自身、はっきり言うと、俺なんか、もう先はあまり長くないだろうからどうでもいいや。と思っていました。

どうでもいいや、というか、何言っても変わらないから仕方ないと思っていることの方が大きいかもしれません。諦めです。

 

実際、自然をコントロールできるわけでもないし、この国で起きている政治の問題は誰が見てもおかしいトンチンカンなことばかりです。

トンチンカンすぎてもうどうでもいいや。だめだこりゃ。と思ってたフシもあります。そこにきてコロナです。

 

ただ、ある日、自分に似た小さい存在が出現したことによって、急にそうも言ってられなくなりました。

 

ある調査会社の予想によると、2020年日本人女性の過半数が50歳以上、18歳の人口は減少。からの国立大学は倒産の危機。

2025年、団塊の世代が75歳以上になると、社会保障費が急激に増加する。で、年金受給年齢をさらに上げるような社会になる。

同じ年、日本の人口は900万人減。

2027年、地方自治体で機能不全に陥るところが出始める。

2033年、鉄道・道路・水道・ガス・電気のインフラが老朽化により支障をきたし出す。それに対するメンテナンスの資金が不足し始める。

空き家率は30%を超え、農林水産業従事者の極端な高齢化による引退、国内産農産物の高騰……

もうやめろ、聞きたくねえ。というような悲観論でした。

今のまま体裁を取り繕うばかりで何の手も打たなければ当然やってくる現実だ。と書いてありました。

 

子供が生まれたことで考える様になった子供のための未来。

今を犠牲にしてでも未来のために手を打つ。これをみんなで考えなければいけないところに来ました。

いや、ずいぶん前から来ていたんでしょう。お待たせしすぎたのかもしれません。

まずは、これから考えられるマイナスな部分を「見ない、考えない、何もしない。」が一番悪いことだと思うのです。

 

もうやめろ、聞きたくねえ。という調査会社の予想は、ビックデータを解析して出した未来予測なのであながち嘘ではないと思うのです。

たんに悲観論だと片付けずに国レベルで検証する必要がありますね。当然やっているでしょうけど。

 

今は、まだ、大半の人間がいい暮らしをできている。

それに慣れちゃって、現在も含めた未来を見ることはしない。

 

政治家や役人はこの悲観的な未来予想なんかとっくに気づいているはずなのに、この現状を維持するためだけに、経済的な利益を伴わない赤字国債を発行しながら、どんどん金は出している。

今だけ、金だけ、自分だけ。

ただしこれは未来の借金です。あと五年で逃げ切れるような、今、力のある人間はわざわざ二十年後のことなんか考えたくもないはずです。

 

そうやっているうちに、日本の研究、先端技術、企業の先進度はいまや世界のそれらからふた回りほど遅れてしまったと言われています。

まあ、遅れてたっていいんだけど、自分たちが先端にいる様な勘違いはしない方がいい。

世界の水準から見てお金持ちな国でもなくなりました。先進国になり損ねたと言うのが今の日本でしょう。悔しいけれど。

 

東京の20代はなんかもう諦めた様な態度。いまはただ我慢してお金を貯めてます。

お金が貯まったら海外に移住しようとおもいます。って若者が結構います。

「だって、日本にいても先はないですよ」っていう子もいます。

海外で暮らしたことのある経験から言うと、海外で暮らすと日本が恋しくなります。

いい国だなあと思う。だけどあきらかに衰退していく日本に若者は耐えられないものがあるのも分かります。

 

とかなんとか、文句ばっかり言ってないで、未来へ向かう正しい道ってなんなんでしょうか?

 

本当に、集団で、なり行きで、誰も責任を取らないでいい形を巧妙に作って来たのが今の社会です。それはそれで機能していた頃もありました。

「赤信号、みんなで渡れば、怖くない」って大笑いしてる時期があったんですから。

 

世界で唯一の被爆国なのに、核兵器廃絶の立場にNOを言ってる変な国です。

終戦の日や原爆の日だけ、スピーチでは「二度とこういうことはあってはならない」とか毎年言うくせに。です。

なんかそういう変なことに対して、みんな「変だよ」と言うところからはじめないといけませんね。

ものすごいへんてこりんな建前はやめませんかもう。子供に説明を求められてもちゃんと答えられないですよ。

 

人口の減少や高齢化、経済の縮小や異常気象。

そう言うことを念頭に置いた物事の進め方を全員で推し進めるってのが理想なんですけどね。

まあそう簡単にはいかないでしょう。ダメでも何でも嫌なことは見ませんからね、人間は。

 

それでも、人間の基本は「食う」「住む」「移動する」ことなんでしょうから、ここから新しい形の産業を生み出す。ことが大切だと思うのです。

それをみんなでそろそろ真面目に考えませんか?

そうしないと2300年には日本人の人口は1000人だそうです。

どこかに日本人居留地を作られてる様な状況でしょうか?そのころには国境なんか無いかもしれませんけどね。

 

とにかく、今のことではなくて未来の事に思いを馳せる。

問題の解決に想像力を働かせて思いつくまで考えるクセをつける。

そういう集団になっていかないといけないと思います。

 

うちの子が成人する2040年。どんな社会になっているのでしょうか?何かが劇的に変わっていい社会になっていることを望みます。

同時に、自分で何ができるのかも考えます。そして具体的に行動に移さなければならなくなりました。

そうしないと娘に対して無責任すぎるからです。

 

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。

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