せっかちな若者

Vol.161
CMプロデューサー
番長プロデューサーの世直しコラム
櫻木 光

 

今年に入って、このコラムの編集者が交代になった。

今まで担当してもらっていた担当者はほぼ同世代だったので

何を書くかの相談でも、書いた後のチェックでも、あまり意見の違いはなかった。

書いたコラムもほぼテニオハを直すくらいで済んでいた。

 

新しい担当者は20代で女子。子供のような年齢。

これは苦労するなあと思った。

ただ、おっさんが独りよがりな言い分を一方的に書いて悦にいるより、

企画会議の段階で色々意見を聞いてみるのは面白いんじゃないか?とも思いました。

会社の僕のチーム員の若い奴らとも同世代。理解する必要があるかもしれない。

 

で、若者から見た若者の変なところってなんですか?

と質問してみました。

 

そこで若い編集者がくれた若者の情報が面白かったのです。

 

 

 

○最近の若者は会社をすぐにやめてしまう。その退職の手続きを代行する業者があって

辞表や有給の消化、その他もろもろの手続きを代行してくれるらしい。

キャッチフレーズは

「退職代行を利用して今すぐ辞める!早ければ早いほどいい!」

と書いてある。

 

○若者は映画館で映画を見たがらない。ということが新聞の記事になっていました。

「映画を見ない若者の理由」として、「リアルタイムのテレビや映画館で見る映画は

スキップできないので苦痛ですし、映画館では『この俳優さん、誰だっけ?』

と気になっても、すぐに調べられないので情報量が足りなく感じます」と23歳の女性。

で、スマホで映画やドラマを見ているんですが、倍速で見ていたりするらしいです。

 

○「苦手な人だけ省いたグループを作り、そこでSNS上で会話をする」

若者はLINEのトークグループ数が平均的に30個ぐらいあるそうです。

一回の発信で複数の友人にパッと自分の伝えたいことが広まって便利。

そして「苦手な人と関わるのは時間の無駄」と考えているらしい。

 

○スマホでダウンロードして聞いている音楽でさえ変化がある。

なんと音楽もバンバンスキップして聴きたいところだけ聞いているらしい。

昭和の音楽と今の音楽の1番の違いは昭和の音楽には豪華な前奏がある。だそうです。

は?前奏あるだろ、今の音楽にも。と聞いたら、

米津玄師にはありません。前奏なんかみんな飛ばしちゃうから無くていいんです。と。

 

 

 

こういう若者ばかりだってわけじゃない。ただそういう傾向にあるのは事実。

その傾向を馬鹿にして笑うのは簡単だけど、どういう理由があってそうなのか?

考えておく必要があります。若者向けの制作物も変えなきゃいけないからです。

 

編集者の考察によると、要は今の若者はせっかちで無いといけない。らしい。

 

「せっかちな理由として、さまざまな情報量を多く収集するうちにせっかちになっていったのではないでしょうか。

昔と違って今はNetflixやAmazonプライム・ビデオなどのネット配信サービスや、ドラマやバラエティなどのテレビ番組。

YouTubeTwitterInstagramTiktokなどのSNS

スマホのアプリやゲーム、など友人との会話の中で話題になるテーマがとても多いように感じます。

 

何故、情報量をふやさないといけないのか。

情報量を増やさないと友人の会話に入っていけないからだと私は思います。

話が通じないと仲間外れになってしまうんです。

そのためには、一つのものを深くというよりかは、

さまざまな分野を幅広く知ることが今の若者の風潮な気がしました。

 

ただ、今までと同じ時間でたくさんの情報を吸収しなければなりません。

だから深く掘らないでさらっと始まりと終わりのストーリーだけ見て

満足する若者が多いのではないでしょうか」

 

と言っています。

 

 

テレビとラジオと雑誌と新聞しかなかった僕の若い頃からすると

こりゃまた随分情報ソースが増えて、キャッチアップするのが大変な世の中です。

若者は忙しい。

 

でも、これだけ情報のソースが沢山あってそれを貪欲に仕入れようとすると、時間はいくらあっても足りません。

だからながらスマホになっちゃうのか?

ラーメン屋に行くとラーメンすすりながらスマホいじっている人がいっぱいいます。

通勤の電車の中はまさに情報収集の場なんでしょうね。スマホ見てない人の方が珍しい。

 

でも、よく考えなくても、こういうことは自分でもやるし理解できないわけじゃ無い。

見ているものが違うのかもしれないが、おじさんたちがそうじゃ無いかというとそうでもない。

おじさんもおばさんも若いのもコンピュータ、タブレット、スマホを活用する世の中です。

便利だから当たり前になった。

 

ただ、なんか違和感がある。世代間のギャップということでもなさそうだ。

と、数日考えていた。

 

このせっかちな傾向は悪いことなのか?時代性じゃないのか?

自分ではどうするか?

 

会社を辞めるときは、その会社が嫌いでも、自分自身で常識的な手順を踏んで会社を辞める手続きをとるだろう。

人はまたどこかで巡り合うということも体験したことがあるし、辞め方が悪いと個人の信用を失うのも知っている。

 

映画を見るときは字幕の一字一句漏らしたら嫌だってくらい集中して観るし、一旦始まった映画を止めたりするのは嫌な行為だ。

できれば映画館で見たい。

 

ラインはグループで話すのは苦手。自分に関係ないメッセージが多くなりすぎるからだ。

 

音楽は頭から終わりまで聴きたい。カラオケで歌が終わったら消す奴がいるが、イラッとくる。

前奏も間奏も含めて一つの作品だと思っているからだ。

 

とか、色々考えていてもやっぱり若者の風潮が不思議ではあるのだけど、

頭から否定する気にはなれない。

 

自分が若い頃に、大人達に理解不明と言われることをいっぱいしたからだ。

 

多分、若い彼らは進化の途中で、いろんなものを取り入れたいんだろうし、

映画や音楽を純粋に楽しんでるのではなくて、

友達とのコミュニケーションツールの一つに使っていて、その使い方がとっても大事なんじゃなかろうか?

 

作っている制作者や作品そのものに対するリスペクトがないわけでもないだろうな。

流してみて、心に引っ掛かったら、もう一度じっくりみたりもしているだろうし。

実は自分の本当に好きなことは何か、物凄い勢いで模索しているところかもしれない。

 

沢山あるものの中で、色んなものを触ってみて、本当に自分の好きなものを選び取る。

そこから深く掘り下げてみる。ということが「洗練される」という意味だ。

 

悪い見方をすると、見つけられなかったらペラペラな人間になってしまうだろう。

いい見方をすると物凄く洗練された世代になれるのかもしれない。

本当に自分に大事で好きなものと、友達用の話題のネタで分けているかもしれないし。

 

 

 

新型コロナウィルスのことで社会がストップするような非常事態になっている。

毎日、テレビから流れてくるニュースを見ていると、

大人って馬鹿なんじゃねえの?

って若者たちは思うんじゃないかというくらいトンチンカンなことが起きている。

 

政治家は都合のいいことと嘘ばっかりだし、ジャーナリストもそいつら相手に変な質問して

お茶を濁されるだけでなかなか核心に近づかないまま、文句ばかりを垂れ流す。

ワイドショーは芸能ネタ以外扱うとバカがバレるからやめとけ。ってくらいの体たらく。

こんな非常事態じゃない時も、変な問題ばっかりだったけど、

万人の命に関わるような危機の時にまだそのトンチンカンぶりを発揮するのか?と耳を疑う。

こんなにアンポンタンだったのか、この国大丈夫か?

と身の危険を感じるのは大人も若者も同じだろう。

 

首相や都知事の記者会見も、的を得ない腑に落ちない緊急会見を繰り返しているけど、

これじゃあ若者に早送りでも見てもらえないよな。と思った。

 

大人がダメなんだ。若者は今ダメでも後で気づくことができる。

 

違和感はそこにあった。若者が見た若者の変なところ、じゃなくて、

大人も変だから若者も変に見えるってことか。

 

退職するのに代行業者?常識がないんじゃないの?って思う前に、

若者はこんなトンチンカンな大人たちと絡むのが嫌なんだ。

無神経で心のないことを言われて傷つくのは嫌なんだな。

 

ま、我慢とか責任とかはこれから知ればいいさ。痛い目にも合うだろう。

逃げてばかりじゃ生きられないんだから。これからいっぱい知ってくれ。指名で仕事が来るようになるとわかるよ。

 

大人は若者が、自分の常識に合わないとイラッとくる前に、ちゃんと教えてあげなきゃいけないし、

てめえのやってることは時代の中で大丈夫なのかよく考える時が来たのかもしれない。

 

今回調べてみて、この社会を動かしているような大人の建前まみれのノロマで身勝手な行動と、

若者の今ある欲望に一直線なせっかちさのギャップと温度差に結構驚いてしまいました。

コロナクソ野郎がそれを暴いてくれたなら、それはそれでアリだな。

 

コロナ後の新しい社会というのなら、今政治家やってる奴らはみんな辞めてもらって、

新しい感覚のせっかちな若者たちに任せてみたらどうだろう?

そしたらすごい勢いで若者たちが本質を、また、哲学めいたことも見つけ出すかもしれない。

とすら思う。それぐらい今いる大人はもう時代にあってはいない。

 

 

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。

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