映像2019.12.04

TikTokとアメリカ大統領選挙

Vol. 7
FIND IT. LOVE IT.
Sayuri Fujii
藤井さゆり

短尺動画の編集・共有アプリ、TikTok(ティックトック)のアプリダウンロード数が15億回を達成したとのこと。InstagramやFacebookの大きな脅威となるだろうと言われています。

TikTok hit 1.5 billion downloads, and is still outperforming – Business Insider

 

日本でも若者に大ヒットしていますが、アメリカでも同様。ダウンロード数からもわかる通り、世界的に見ても今、大人気のソーシャルアプリとなっています。元々TikTokは、中国のBytedance(バイトダンス)というスタートアップ企業が立ち上げ、Musicallyというリップシンクアプリを買収し今の形態になったもの。短い動画を手軽にシェアできるためバイラルになりやすいのも特徴です。

 

アメリカでは、10代を中心に若い世代が夢中になっていること、中国生まれのアプリであること、ここ数年で急成長しているということで、検閲や安全性の部分でも懸念されている声もあるようです。しかし実際のところは、様々な企業がTikTokを使ってキャンペーンをやっており、マーケティングツールとして効果的に利用されていますし、個人が自分を表現する手段として利用して楽しんでいる人たちもたくさんいることは事実です。

 

また、日本のTikTokの使われ方と、アメリカでの使われ方の違いの一つとして挙げられること、それは、若い人でもたくさんの人が政治的な意見を投稿するために使っているということです。それは、来年の2020年にアメリカで大統領選挙があるということが大きな理由としてあると思います。※TikTokは、政治広告を掲載することは禁止していますが、候補者がプロフィールを持つこと、政治コンテンツを投稿することは許可されています。

 

大統領選挙に関するTikTok動画を見ていると、TikTok動画の特徴である「ミーム」とBGMが効果的に使われていて、それが良くも悪くもメッセージとして入ってきやすいんですよね。例えば、以下はトランプ大統領の支援者による、トランプ大統領への投票を促すための動画なのですが、

こういった動画がかなりの数で投稿されています。主にトランプ支持者によるTikTok動画は真実ではないものも多いですし、ひどい内容のものも多いので、若い世代が利用していると思うと危険性を感じます。

 

他の政治ネタとしては、民主党からの候補者の一人、インディアナ州サウスベンド市の市長、ピート・ブティジェッジ氏の選挙チームが始めた「High Hopes Dance」が、ノリの良いポップソングと誰もが覚えやすいダンスということもあり、TikTokでミームとなっています。

 

以下は「High Hopes Dance」を踊りつつも、テロップでブティジェッジ氏の政策を批判している動画。ニューヨークに住む学生によるものだそうです。

 

元ネタはこちら↓

 

TikTokユーザーによる大統領選挙や政治に関する投稿がかなり多くあるにも関わらず、TikTokを選挙運動に積極的に活用している候補者は、現時点ではまだ見られません。(候補者のチームがアカウントを持っていて、選挙運動のために投稿している事例は見られます)TikTokのメインユーザーが10代ということもあり、まだ投票権を持っていない人が多いということもあるのでしょう。実際にアメリカでは、もう少し上の世代が利用するInstagramやFacebook、Twitterといったソーシャルメディアを使わないで選挙運動をしている候補者はまずいません。アメリカでは選挙運動をする上で、ソーシャルメディア・ソーシャルアプリは欠かせないものとなっています。

 

前述の通り、TikTokを積極的に活用している候補者は見られないのですが、ワシントン・ポストのTikTokは、最近、候補者を出演させて面白い動画を投稿しています。

上記の動画は、民主党候補の一人、コーリー・ブッカー上院議員が出演。空港で18時発のアイオワへのフライトに間に合うよう全速力で駆け抜けてくると(現在17:59)、ワシントン・ポストの記者にぶつかる、というもの。

 

上記は同じく民主党候補の一人、テキサス州アントニオ市の元市長、フリアン・カストロ氏が出演。双子の兄弟である、ホアキン・カストロ下院議員と共演、BGMに合わせてコミカルな演技をしています。

 

上記はこちらも民主党候補である、実業家のアンドリュー・ヤン氏が登場。インタビューやミーティング後でやっとリラックスしているヤン氏のはっちゃけた演技にご注目。

 

候補者が出演しているワシントン・ポストのTikTok動画は、他の動画と比べてかなりのいいねとシェアを獲得していますし、候補者にとってはいい宣伝となっています。大統領候補者として選挙運動をしている人たちが、宣伝のためとは言え、こんな風にTikTokに出演してしまうのは、アメリカの面白いところです。しかも、ほとんどの候補者は政治家なんですけれどもね。

 

2008年当時、オバマ大統領がSNS「マイバラクオバマドットコム」で資金を集めたことにより当選し、2012年の再選もオバマ大統領が巧みに利用したFacebookやTwitterといったソーシャルメディアが大統領選を左右することが大衆に深く周知されました。2016年のトランプ大統領当選は、トランプ大統領がTwitterで自ら発言をすることでメディアに取り上げてもらうこと、Facebookなどのソーシャルメディアへ政治広告を積極的に掲載したことで勝利したことがわかっています。2020年の大統領選も同様の形が続くとは思いますが、Twitterが政治広告の掲載を禁止したことによりトランプ陣営は反発、また、トランプ大統領が弾劾されるという話もあり、今後どうなるのかわからない、といった状態。近い将来、この新しいソーシャルメディアであるTikTokが大統領選を左右する鍵となっているかも?!

 

(参考)

What’s going on with TikTok? – Business Insider

How the Washington Post’s TikTok became an unofficial 2020 campaign stop – Vox

TikTok: the most exciting, and controversial, social media app on the planet – Vox

Even if they can’t vote, teens are roasting Pete Buttigieg on TikTok – MIT Technology Review

プロフィール
FIND IT. LOVE IT.
藤井さゆり
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。

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