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ミモザの咲く季節に考えること? @Mimosa House

Vol.81
London Art Trail 笠原 みゆき 氏

Mimosa House 入り口

この原稿を書いている今日3月8日は国際女性デー。ここ、英国でも女性の政治的自由と平等を訴える様々な催しが各地で行われて、アートも例外ではありません。今回はそんなフェミニズムアートをテーマにした展示を行っているギャラリー、Mimosa House から。現在展示されているのはグループ展、”Do you keep thinking there must be another way” (他に方法があるに違いないってずっと考え続けているの?) 。ギャラリーは地下鉄オックスフォードサーカス駅から徒歩3分。

“21st Century Sleepwalk(2018)” ©Emma Talbot

“21st Century Sleepwalk(2018)” ©Emma Talbot

リージェントストリートに面するアップルストアの裏手の静かな通りにあるMimosa House。 階段を登っていくとまず目に入るのは幅10メートルのミューラル(壁画)のように壁一杯に描かれた絹の絵画。気がかりが多くて眠れない女の子、考え続けているうちに夢の中の迷宮に迷い込んで…。ファンタジー漫画のようにコミカルに描かれた作品ですが、吹き出しに書かれた言葉は痛烈な社会批判。ロンドンの再開発事業に対し、”この街(ロンドン)は何を一体そんなに忙しく建て続けているの?恐怖のプロジェクト?空っぽの棺桶?“、家庭薬を手軽に入手できるドラッグとして大量摂取する人が増えていることから、”家庭薬は人生をもっと楽しくするの?それとも嫌なことを忘れさせてくれる?“などなど。作品は Emma Talbotの “21st Century Sleepwalk(2018)”。

The whore’s Rhetorick (2018) ©Georgia Horgan

最初の部屋に入ると英国市民革命時代の女性の衣装を着た二つのマネキンが向かい合っています。それぞれの衣装には言葉や地図などが刺繍されています。作品は Georgia Horganのインスタレーション、The whore’s Rhetorick (2018)。マネキンのモデルは17世紀に人気を博したポルノ小説、The whore’s Rhetorick (1683) に出てくる二人の女性。売春婦のオーナーで悪名高い共和党員 Mrs Cresswellと若い貴族の娘 Dorothea。 Mrs Cresswell は実在の人物がモデルで、Dorothea は架空の人物。衣裳に縫い込まれているのはそれぞれのキャラクターの社会的地位からその生地を生産している織物産業の歴史までに及びます。ホーガンはまた Mimosa House の委託でオリジナルの小説をもとに舞台の台本も書き上げています。台本は、マネキンの隣にタブレットで二つ用意されていて、来場者がその場でキャラクターを演じることも!

“MADRE POR UN DIA en el programa de television Nuestro Mundo, 1987” ©Polvo de Gallina Negra

メキシコの主流テレビニュース番組のNuestro Mundo (Our world)。1987年に放映されたこのニュース番組の中で、200万人の視聴者の見守る中、アンカーキャスターの男性はBlack Hen Powder(黒い雌鳥の粉)という怪しい名のついた二人組に妊婦を疑似体験する衣装を着せられます。実はこの二人はアートコレクティブ(美術家二人のグループ)。戸惑うキャスターに追い討ちをかけるように、“おめでとうございます!あなたは世界で初めて母を体験する男性です!”と女王の王冠を被せて…。このパフォーマンスは1983年に結成されたメキシコ初のフェミニストのアートコレクティブ Polvo de Gallina Negra (Black Hen Powder)のMaris BustamanteとMonica Mayerによるもの。作品は “MADRE POR UN DIA en el programa de television Nuestro Mundo, 1987”。

Under/Valued Energetic Economy(2017 – ongoing) ©Raju Rage

Under/Valued Energetic Economy(2017 – ongoing) ©Raju Rage

上の階へ進みます。
壁にはエプロンや、雑誌、テーブルには地図の書かれたテーブルクロスがかけられ、ipodに繋がれたヘッドフォンが二つ置かれています。地図の真ん中にはUnder/Valued Energetic Economy(過少もしくは評価される経済の活性化)と書かれ、脳につながる神経のように美しく、”arts”,”activism, “academia’, spaces, conversation などの言葉が繋がっています。作品は、Raju Rageの “Under/Valued Energetic Economy(2017 – ongoing)(表題はAlexis Pauline Gumbs の理論から)。ヘッドフォンの一つからは複数の作家へのインタビュー、もう一つからは音声をコラージュした作品が聴けるようになっています。テーブルの周りにディスプレイされたエプロンや雑誌や服は実はインタビューに参加した作家を含む他の作家達の作品。多くのコラボレーションを通じて美術家の経済、社会に置ける価値を探り続けている作品です。

戦後間もない1946年のイタリアで、女性を社会の核として復興を目指そうという案がUDI(イタリア婦人組合)で提唱されました。そこで、象徴となる花を決めようということになり、投票により黄色のミモザの花が選ばれたといいます。以来、国際女性デーが近づくこの季節、イタリアでは女性が互いにミモザの花を贈る習慣が生まれ、街中に金色のミモザの花が溢れるようになりました。そんなミモザの花から名をとったミモザハウス(Mimosa House)、今後も注目していきたいと思います。

Profile of 笠原みゆき(アーチスト)

笠原みゆき

©Jenny Matthews

2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。

ウェブサイト:www.miyukikasahara.com

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